決戦前夜
四天王をすべて倒し残りは首謀者のみ。
「マヤ将軍、怪我はもういいのかい。」
「問題ありません、オットー元帥。回復プールのおかげで完治いたしました。」
「それはよかった。」
そう言ってオットーはその場を離れる。
「マヤさん。」
少女の声がマヤを引き止める。
「タナトスにセリアか。こんな所までどうした。」
「マヤさん。次の戦いも頑張ってくださいね。私、応援していますから。」
セリアが力強くマヤを激励する。
「あの、マヤさん。」
「なんだタナトス。言いたいことは、はっきり言いな」
「マヤさん。その、絶対帰ってきて下さいね。」
マヤはタナトスの頭を優しく撫でて
「当たり前だ。何をいまさら。」
「絶対ですよ。約束ですからね。」
タナトスが普段見せない強い語気で言う。
「ああ、約束だ。」
マヤはそう言って小指を出す。
「それは、一体 ?」
「指きりだ。この国の慣習で、約束事をするときにするそうだ。」
「そんな風習があるなんて知りませんでした」
マヤとタナトスは指を絡め合わせる。
「では、行ってくる。」
そう言ってマヤは出かけようとすると
「待ちな」
とまた呼び止める声がした。
「今度は何だ。」
マヤは少しイラついたように返事をする。
「この私を連れて行かないのかい。」
「レベッカ、一緒に来てくれるのか。」
「一緒に死線をくぐり抜けた仲じゃないか」
「そうだったな。では行くぞ、レベッカ。」
「おうよ」
そして二人は敵の本拠地に向かっていった。
その頃
「機体の整備は終了したわ。後は敵をぶちのめすだけね」
「助かるぜ、結衣。」
と坂井。
「ありがとうございます結衣先輩。」
すみれが長澤に深々と頭を下げる。
「それより、無事に帰ってきなさいよ。」
念を押す長澤。
「お前が整備してくれたんだ、負けるわけないだろう。」
坂井がそう言ってカムイに乗り込む。
「じゃ、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
坂井とすみれを乗せたカムイは敵の本拠地に向かっていった。その背中が
見えなくなるまで長澤はその場を動かなかった。
「ロキだかゴキだかしらんが、この改良型ジークフリードの敵ではあるまい。」
自信たっぷりのグリセリド。
「今度は虫が入り込むなんてことはないでしょうね。」
釘をさすソフィア。
「問題ない、この天才が寝ないで作り上げた最高傑作だ。最終決戦にもってこいの
代物だ。」
「さすがグリセリド様。宇宙一のテンサイ。」
オメガがはやし立てる。
「相変わらずやかましいロボットね。まあ私たちが帰ってくるまでおとなしく
しているのよ。」
ソフィアがオメガをにらめつける。
「オメガとしましてはグリセリド様だけが帰ってきて頂ければ問題アリマセン。
ソフィアのことはどうでもいいでアリマス。」
「うむ、帰ってきたらまず、こいつをバラそう。」
このやりとりを知ってか知らぬか
「ソフィア君、なにをもたもたしているのだ。行くぞ。」
とグリセリドがソフィアを急かす。
「分かったわ。今すぐ行く。」
そう言ってコックピットに乗り込むソフィア。
「よし、それでは出発」
ジークフリードも敵の本拠地に向かって出発した。がらんどうになった前線基地。
そこにはタナトス、セリア、長澤、オメガそしてナギサだけが残っていた。
「ナギサさん。聞こえますか。」
突然の出来事がナギサを襲う。それは声というより頭に直接響くという感じで
ある。
「ごめんなさい、テレパシーで伝えています。ラピステレスのものです。
今度の戦い、そうとう厳しいものになると思います。なのでぜひ協力して
いただきたいのですがよろしいでしょうか。」
首を縦に振るナギサ。
「よかった。セリアさんにしてもタナトスさんにしても繋がらなかったから、
どうしたらいいか困っていました。」
「・・・それで内容は。」
周囲に悟られないように小さな声で答えるナギサ。
「そ、そうでしたね。それでは説明いたします。」
ラピステレスの姉妹がナギサに何やら説明する。
「・・・分かった。伝えておく。」




