アスタロテVSマヤ
だいぶ奥まで来たな、あの扉の先にボスがいるところか。マヤは雑魚を切り捨て
ながら先を目指す。扉を開けると、そこは広間であり部屋の中には一人の少女と
檻に入れられてるナギサがいた。
「ナギサか無事のようだな。」
「・・・まさか助けが来てくれるなんて。」
「ところでお前は誰だ。」
マヤは少女のほうを睨み付けた。
「私はご主人様のボディーガードを任されたアスタロテ。ここまで来るなんて
人間にしちゃ頑張ったけど死んでもらうわよ。」
「私を甘く見ないことだな。」
マヤは炎の剣を召喚し構える。
「ふう、対立属性とは不運ね。」
アスタロテは水を纏った剣を召喚する。視線を合わせる二人。ほぼ同時に
二人が動き出し間合いをつめる。ぶつかり合う剣と剣。
そのたびに水しぶきと火の粉が飛び交う。
マヤは炎の翼を広げ舞い上がり距離をとる。
アスタロテも水の翼を広げマヤに接近する。
「ただの人間じゃないみたいね。これは楽しめそうね。でも死んで。」
アスタロテの指先が光り激しい水流がマヤに襲い掛かる。
「なんの」
マヤは真っ赤な魔方陣を展開しこれを防ぐ。
「死ぬのは貴様だ。」
マヤは複数の火の玉を作り出しアスタロテに放つ。右に左にへと軽やかに避ける
アスタロテ。目標を見失った火炎弾は壁に当たり爆発する。
その様子を祈りながら見るナギサ。じりじりと距離をつめるアスタロテ。
さらに大量の火炎弾を撃ち込むマヤ。
「今度はこちらから行くよ、炎の使い手さん。」
アスタロテが手のひらを天に向ける。
「これは。くっ、寒い。」
マヤが身震いをする。
「こんなもんじゃないよお姉さん。」
今度は部屋中がキラキラと光りだす。
「まさかこれはダイヤモンドダスト。」
「さすがお姉さん、大正解。これからこの一つ一つがお姉さんに向かって
いきます。」
アスタロテが指をひょいと動かすと氷の結晶がマヤに猛スピードで向かう。
マヤは術式を編み出そうとするが寒さで手が震えてしまい
シールドが発動できない。
「きゃああああああ」
全方向からの氷弾を受け墜落するマヤ。
「こんなもんか、たわいもないわね。」
倒れているマヤに向かってアスタロテはゆっくりと向かう。
剣を支えにしてかろうじて立ち上がるマヤ。
「ふうん、まだ死んでなかったんだ。」
アスタロテはマヤの目の前に立つと剣を蹴り飛ばした。飛ばされた剣はナギサの
檻にぶつかった。アスタロテはマヤの首をぎりぎりと締め上げる。
「い・・・息が・・・」
苦悶の表情を浮かべるマヤ。
「苦しいですかあ、お姉さん。」
その表情を心底楽しむアスタロテ。そして突如、力を抜く。
「ゲホッ、ゲホッ。」
床にへたり込み咳き込むマヤ。
「まあ、すぐに殺しちゃ面白くないもんね。まあ、それだけ出血しちゃあ長くは
持たないだろうけど。」
そう言いアスタロテはマヤを蹴り飛ばす。ぼろ雑巾のように吹き飛ぶマヤ。
「・・・マヤさん。」
血まみれになって目の前に倒れているマヤを見るナギサ。恐怖で足の震えが
止まらない。一歩一歩近づくアスタロテ。止めを刺す気だわ。とナギサは思った。ナギサは一呼吸すると柵の間から手を伸ばしてマヤの剣をつかんだ。
「ナギサ、そんな剣を持ってどうするつもり。檻の中から振るうつもり。」
キャハハハと腹を抱えて笑うアスタロテ。
「そうよ。振るうつもりよ。」
「出られないのに、どうやって。ねえ、どうやって。教えてよナギサちゃん。」
からかうアスタロテ。うつむいてぷるぷると震えるナギサ。
「まあ、そこのお姉さん殺したら相手してあげるわ。」
倒れているマヤを屈んで様子を見るアスタロテ。
「ふうん、まだ息があるんだ。なかなかしぶといわね。」
感心するアスタロテ。ガキン。金属音が部屋中に響き渡る。続いてガシャンと
音がする。
「う、うそ。」
ナギサの一振りで檻はいとも簡単に破壊された。光を纏うナギサ。
倒れているマヤにナギサは手をかざす。ビデオを逆回しにしたみたいに流れ出た
血液がみるみるとマヤに吸い込まれていく。徐々に光が弱まっていく。
そこには虹色の三対六枚の翼を持つナギサが現れた。
「姉さん、私はあなたを許さない。」
ナギサは剣を向ける。
「姿が変わったところでろくに戦ったことないあなたが私に適うのかしら。」
じりじりとナギサに近づくアスタロテ。後ずさりするナギサ。
「どうしたのナギサ。先ほどの強気はどこにいったのかな。」
ナギサに向かってアスタロテは剣を振りかざす。
「きゃああ」
ナギサの持つ剣ははじかれ宙に舞い床に突き刺さった。ナギサはその場所に
へたりこみながらもアスタロテをじっと睨む。
「そんな怖い顔しないでよ、ナギサ。」
アスタロテはナギサの顔の前に剣を向け
「ねえ、どこ刺されたい?今ならリクエストに答えてあげるわ。」
「いや、来ないで。」
背中を見せて逃げ出した瞬間、首元をつかまれてしまった。
「ナギサ、敵前逃亡は駄目よ」
アスタロテは片腕でナギサを持ち上げそのまま壁に叩き付け、そのまま首を
締め上げた。
「なかなか素敵な表情よ。かわいい。」
ん、ここは。私は生きているのか。傷もいえている。あれはナギサ。あの女、
ナギサを殺す気だが、そうはいくか。マヤは左手に力をこめ、魔力を集中させる。そしてアスタロテにぶつける。
「ぎゃあああああ」
アスタロテは悲鳴をあげ、その場に倒れこむ。
「ナギサ、大丈夫か。」
「・・・なんとか。」
「そうか、なら安心した。そこで休んでろ」
「・・・うん。」
安心したのかナギサはその場で意識を失った。
「ありがとう、ナギサ。」
マヤはナギサにそっと話しかけると彼女から剣を取り出しアスタロテのほうに
向く。
「大魔法フレアの味はどうだ。」
「き、貴様が生きていることを忘れてたわ。」
剣を支えにして何とか立っているアスタロテ。
マヤはアスタロテの前に立ち、そのまま彼女の心臓を突き刺した。
「あの時、私を絞め殺していれば死なずにすんだものを。」
ここは制圧したな。では基地に戻るか。
マヤはナギサを抱え基地に帰還した。




