ベルゼブブVSジークフリード
「我々も奴らを叩きのめすのだ。」
天空城に進撃し調子づくグリセリド。
「そうね、神さま気取りのバカはさっさとぶちのめさなきゃね。」
ソフィアのテンションも上がる。
「そうはさせん。ここから先は俺ベルゼブブがじきじきに相手をしよう。」
「だれだ、この天才の邪魔をしようとするものは。」
グリセリドがあたりを見わたす。はるか眼下に男が一人立っていた。
「気をつけろ、グリセリド。あいつは只者ではない。」
マヤが忠告する。
「いくら強敵でも天才の敵ではない。マヤ、ここはこのジークフリードに任せて、君は先に進みたまえ。」
「そうか、では先を失礼する。」
マヤは翼を広げると同時に急加速。あっという間にベルゼブブを通り抜けていく。
「ねずみを一匹逃したところで影響はない。」
とベルゼブブは意に返さない。そしてどんどん巨大化しついにジークフリードと
ほぼ同じくらいになった。
「巨大化するぐらい、この天才には予想済み。ソフィア君、ロンギヌスの準備を。一気に勝負をつける。」
「了解、ロンギヌス射出。」
ジークフリードの右手から青白く光り輝く槍が射出される。そしてベルゼブブに
向かって貫く。が、手ごたえがない。
「何だ、確かに貫いたはずだぞ。」
グリセリドは首をひねる。
「どうしたガラクタ。ではハエの王の力を見せてやろう。」
ベルゼブブはそういうと体は無数のハエに変わる。そしてジークフリードを覆う。
「何も見えんぞソフィア君。」
「視界を赤外線モードに変更。あれ、おかしい。変更できない。」
ソフィアがうろたえる。
「きゃっ! ハエよハエ。どこから入ってきたのかしら。」
ソフィアが手を振り回すがハエは涼しい顔をしてこれを避ける。
「くそ、機体にハエが入り込んでどこか故障したのか。とりあえず振りほどくしかない。」
グリセリドはジークフリードをめちゃくちゃに操作しハエの群れを振りほどこうとする。だが一向に効果がない。
「車長、あのロボット救出しに行きましょうか。」
巨大ロボットが苦戦している様子を見た20式戦車の隊員の一人が上司に
進言する。
「そうだな、援護射撃をしよう。まずはサブウエポンでこちらにひきつけよう。
よし我々チームAで行うぞ。よし、1号車は敵の右へ2号車は左へ。
3、4号車は正面へ配置せよ。そしてサブウエポンで敵をひきつけろ。
その隙に我々は背後に回り敵を撃つ。」
「了解。」
各戦車が目的地に向かって前進を始める。その頃ジークフリードのコックピット
内は更なる悲劇が起こっていた。
「な、何よ。う、腕がああああ、ちぎれていく。やめてよ、お願いだから。
何、今度は足から。いや、来ないで。もうやめてよ。」
「ぐぎゃああああ。この俺様にまとわりつくな。いくらこの天才頭脳が欲しいからといって、頭をかじるのはやめるんだ。」
二人は完全に錯乱している。
「ハエを媒介した我が幻術。その威力、得と知れ。」
ベルゼブブは勝ち誇ったように笑う。
「いや、いや、いやああああ。やめてやめてやめて。」
「ぐおおおおおお。この天才が天才が天才が。がああああああ。」
「もっと苦しめ、もっと苦しめ。」
その時ベルゼブブの横を曳光弾が通り過ぎる。
「何だ、人間どものおもちゃか。奴らもハエの餌食にしてやるか。」
ベルゼブブはハエを戦車に向かわせる。
「車長、ハエが襲ってきます。」
「全車両、視界を赤外線モードにしろ。必ず弱点がどこかにある。」
ハエの群れが戦車をあっという間に包む。視界は完全に遮られている。
「どうだ、視界の方は。」
「問題ありません。有視界は完全に遮られていますが赤外線は生きています。」
「それはよかった。この戦車の機密性は潜水艦並みだ。虫一匹通さない。
よしふらふら走れ。」
「了解であります。」
一両の戦車がふらふらと走り出す。まるで前が見えていないように。
「盲目で走るとは気が狂ったか。いや狂わせたというべきか。」
再びベルゼブブはジークフリードに襲い掛かる。
「あは、あは、あはははははは。壊れちゃえ。もっと壊れちゃえ、私。
あははははは。」
ソフィアは完全に崩壊している。
「もう壊れたか。人間とは所詮こんなものか。」
ベルゼブブはつぶやく。
「ぐおおおおお、苦しい。だがいくら苦しくても我が頭脳は決して渡さん。
ぬおおおおお」
グリセリドは頭を抱え続けている。
「少しは粘るようだな。まあでも時間の問題だな。」
ベルゼブブは完全に勝ち誇っている。
「車長、先ほどから気になっているのですがこの赤い点はなんでしょうか。」
操縦手が車長に尋ねる。
「よし、偵察ヘリにこの位置の画像を提供してもらおう。」
車長が偵察ヘリに連絡すると、すぐその映像が送られてきた。
4000フィートからの光度からの偵察に敵は気づいていないようだ。
「赤い点は、敵の位置の一部と一致する。おそらくそこが弱点だ。よし一気に
敵の後方に走り急旋回し撃ち抜くぞ。」
「了解。」
ふらふら走っていた戦車が突然、加速しジークフリードとベルゼブブを
通り抜ける。
「なんだ、急に元気なったぞ。あれもついに壊れたか。」
暴走する戦車が突如、急旋回。激しい火花が履帯から発する。
「この一撃は人類の未来を決める一撃だ。くたばれ、化け物が。」
砲手がスイッチを押す。レーダーに導かれたレールガンが目標に撃ち抜く。
「な、なんだと。この俺の本体をみ、見破るとは。」
ベルゼブブの体は燃え上がる。戦車やジークフリードを覆っていたハエも次々と
燃え上がり姿を消していく。そしてついにすべてが燃え尽きた。
「あれ、私、何してたんだろう。」
我に返るソフィア。
「おお、やっと頭痛が治った。さてベルゼブブはどこだ。」
グリセリドも我に返る。そのとき通信が入ってきた。
「安心しろ、あの化け物は我々が倒した。その先は任せるぞ。」
一方的に通信は切れた。
「なんだか知らないが勝ちは勝ちだな。いくぞソフィア君。」
「おうよ。待っていなさいよ神さまもどき。」




