4月15日 身体検査
明けて月曜日の今日は全校一斉の身体検査の日で、体育館には全校生徒約1万名が集まっていた。
「いやーさすがに1万人もいると圧巻だなおい」
荒井が感嘆したように言った。
そうして俺たちが人数の多さに驚いているといかにもな体育教師が前に出てきて身体検査の説明をした。
それによると1つの検査に2クラスごとに臨み、他のクラスはどこかがあくまで待機するというもので、俺たちのクラスは2組と合同でやることになった。
荒井なんかはそれだったらそんなことするくらいなら学年ごとに分けりゃいいのにとか言っていたが。
まあそれはともかく人数も膨大だが、検査の場所もいくつかあり、スポーツテストも並行してやるのでそこまで待たされることもないだろう。
というわけで俺たちは3階の教室でまず身長の検査をすることとなったのだが…
「うをお!?セっセーラちゃんに負けただと!?」
「なんてこった俺セーラちゃんより5センチも小さいぞ!」
「いよっしゃー!セーラちゃんに勝ったぞ!」
「……………………」
1組、2組関係なく星羅のことをセーラちゃんと呼んで星羅との身長差で一喜一憂している現状があった。
あっ今星羅が無言であいつらがたまっているところに行った。
あいつら死んだな。
なぜこいつらが星羅のことをセーラちゃんと呼んでいるのかと言うと、ここまで来る途中でなんと穂積さんが星羅に親しげに話しかけたのだ。
「星羅君昨日はありがとうございました。」
「……?俺はないもやっていないが…」
「いえ話し相手になっていただけただけでも気が楽になりましたから。」
何やら星羅と穂積さんの間で何かあったようだがよく聞こえなかった。
<オイオイなんで穂積さんが星羅なんかとはなしてるんだよ>
<くそう星羅の野郎俺たちの穂積さんを…>
<殺す殺す殺す…>
<穂積さんだめよ星羅なんかとはなしちゃ>
<でも星羅君て黙ってるとかっこいいし案外お似合いかも…>
<くう私の初ちゃんに親しげに話しかけるなこの腐れ野郎…>
…最後のは未寅さんだな。
何やら険悪な空気になっているようなのでみんな和ませるために俺は一芝居打つことにした。
「いよう!星羅と穂積さんって知り合いだったんだ?」
「家昨日帰り道に偶然お会いして少し話をしたんです。」
「へぇー星羅って他人に興味なさそうなのに」
俺がそういうと星羅は少し眉根をひそめて
「…別に穂積が話しているのをただ聴いていただけだ」
「ふふっ」
星羅がそういうと穂積さんがおかしそうに微笑んだ。
…ここはあと一歩踏み込んでみるか
「なるほどなるほどつまりセーラちゃんは穂積さんの美しさにやられて話すことができなかったというわけか」
俺がそういうと星羅がものすごい勢いで言い返してきた。
「誰が!俺はそんな低俗なことに興味など無い!そもそもセーラちゃんと呼ぶな!」
星羅が叫ぶがもう遅い。
そうしている間にも周囲の連中が騒ぎだした。
<オイオイなんだよセーラちゃんって>
<もしかして星羅のことなのか?>
<セーラちゃん…なんか可愛いかも>
「何だお前ら!?」
星羅が戸惑ったように叫ぶと周りの連中は声をそろえて
「「「「「「セーラちゃん」」」」」」」
…少しやりすぎたな。
これでみんなも少しは星羅に親近感が持てたと思うが、果たして星羅自身はどう思うか。
「あいつは人嫌いみたいだしなぁ」
まぁこれで少しはその性格も直ればいいかと前向きに考えて検査に臨んだ。
そのあともみんなが星羅をいじりつつ検査は順調に進んでいった。
星羅も最初は反応していたがいい加減無駄だと悟ったのか無視を決め込んでいた。
「ふんぬ!あれ?これメーターが動いてないぞ?」
「どれどれっておい!これオーバーフローじゃん!」
「なにぃ!?そ須がの握力計も烏山の馬鹿力にはかなわなかったのか!?」
どうやら俺の友人の一人である烏山があまりの馬鹿力に握力計をぶっ壊してしまったようだ。
前にふざけてあいつがアイアンクローをかましてきた時は危うく死にかけたしな…
そう考えながら俺も検査に臨んだ。
結果は全国高校男子の平均値ジャストだったらしい。
次は反復横とびに来たのだが例によって荒井が妙なことを始めた。
「ふはは見よこの俺の美しい反復横とびをー」
「えぇ!?はっ速すぎて計測できない!?」
なぜか荒井はものすごいスピードで飛んでいた。
…白線を一度たりとも越えることなく
しかしパートナーの生徒の目はだませても教師の目はごまかせなかったようで、あいつの記録は真ん中に戻ってきた回数のみとなった。
そして俺の記録はまた全国平均ジャストだった。
そしてスポーツテストも順調に進んでいき、残すはシャトルランのみとなったのだが…
キコカコキコカコ…
という風にしか聞こえない未知のゾーンに到達したにもかかわらず、星羅と穂積さんはいまだに余力を残した様子で淡々と走っていた。
今は120回くらいか?
ちなみに俺は100回であきらめた。
しかし星羅のほうはなんとなくわかるとしても、女子の穂積さんまで残ってるのはすごいな。
しかも穂積さんはまだ疲れた様子を見せていない。
---130---キコカコキコカコ…
そのアナウンスがあった後穂積さんがこちらの白線を踏んでそのままこちらに戻ってきてしまった。
どうたら顔に出さなくともかなり疲れていたようで肩で息をしていた。
そして会場中が穂積さんを拍手で迎えた。
一方の星羅はまだ余裕があるようで会場では回数とキコカコキコカコ響いている中を無心で駆け抜けていた。
こうなってくるとみんなの関心は星羅が何回走れるかに関心があるようで、自然と体育館は静寂に包まれていた。
結果星羅は150回という記録をたたきだしてそのまま水道のほうまで走り去って行った。




