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4月12日 オリエンテーリング3日目

今日は午前中ぶっ続けで部活紹介をやるということになっている。

俺たちは体育館で部活動紹介が始まるのを待っていた。

鳳仙学園は生徒数約1万名の学園で多くの部活動が乱立しているため、今日はその中でも大きい部活のみの紹介となっている。

ふと前を向いてみると星羅が珍しく部活動に興味を示しているようだった。

「昨日のレクリエーションで結構すごかったし、バスケ部にでも入るんかな」

そう考えているとどうやら準備ができたらしく、早速開催のあいさつがあり、部活動紹介へと移った。

最初は野球部、サッカー部などの定番な運動部の紹介であった。

やはりというか男子の多くは運動部に入るらしく、みな真剣に説明を聞いていた。

しかし意外なことにバスケ部の紹介になっても星羅は興味を示そうとせずどっかを向いていた。

…あいつバスケ部に入るんじゃないのか?

まぁ人がどの部活に入ろうと関係ないので俺はそのまま説明を聞き続けることにした。

「なんか入るにしても楽なのにしとかないとなぁ」

鳳仙学園は全員が何らかの部活動に入らなければならないため、俺は比較的楽な部活動を探すことにした。




先ほどからいろいろな部活動紹介を聞いているが、まるで興味をひくものがない。

「しかし全員部活動制とは面倒だ…」

できる限り他人と関わりたくない俺にとってこういうのはかなり困るのである。

さすがに全く他人と関わらなくていい部活動などなさそうなので、できる限り他人と関わらなくて済むような部活はないかと聞いていたが、やはり定番ものばかりとあってどれもこれも部員と多くのコミュニケーションを取らなければならないものばかりで困ったものである。

「まぁ最悪どこかの部活に入って幽霊部員になればいいか…」

そう愚痴りながらより他人と関わらなくて済みそうな部活動を探した。




先ほど運動部の紹介が終わり、今は文化部の紹介が行われています。

運動がさほど得意ではない私は文化部に所属しようと思うのですが、どうにも興味をひくものがありません。

「料理にしろ、被服にしろ、わざわざ部活動に入らずとも家でできますし…」

こう考えている私はやはり対人能力が低いのでしょう。

事実私は過去のことから他者と関わるのが怖く、出来る限り多くの人と接することがないよう行動してきました。

中学生のころは部活動には入っていなかったことも原因の一つでしょう。

ですが高校生になった以上は私も変わらなければならないでしょう。

「私は皆さんのひとつお姉さんなのですし…」

何度言っても慣れることのないそのセリフに少々の胸の痛みを感じ、私は残りの紹介も聞いて行くのでした。




部活動紹介も終盤に差し掛かり、今は演劇部の紹介が行われている。

「演劇…か…」

おそらく私ならば演劇部に入ってもすぐにエースとなることができるだろう。

あの日から今まで私はずっと…

そこまで考えて私は深みに嵌り掛けた思考を追いやった。

目の前では芝居で演劇部の生徒扮する主人公が自分を偽って生きてきたヒロインに自分の好きなように生きてくれと叫んでいた。

「自分の好きなように生きろか…」

私に言われているわけでもないのにその言葉は私の胸に深く突き刺さった。

「いまさら自分の好きなように生きれるわけないのに…」

あの人はどうしてそんなことを言ったのか今になっても分からない。

そんなことを考えながら部活の説明を聞き流していた。




「やっばいどうしようどうしよう本当にどうしよう…」

部活動紹介ももう最後の部活に移っていた。

私はまだどの部活動にしようか決められず、それで戸惑っているのだ。

というか元引きこもりの私に大きなコミュ力の求められる部活動なんて入れるわけがなかった。

「なんで鳳仙は全員部活動に入らなければならないのよ…」

せめて帰宅部と言うのがあれば迷わずそこに入るのだが、当然そんな部活あるはずもなく私は否応なくどこかに所属しなければならないのだ。

「はぁーなんか部員と話すこともなく一人で活動するような部活動はないかな…」

まぁそんな部活なんてあるわけがないからこうして悩んでいるのだが。

「もう初音さんと同じでいいかな…」

コミュ力不足で他力本願な私はそう呟き、考えることを放棄した。




---1年1組---

「えーそれでは長々と部活動紹介があったわけだが、お前らなんか入りたい部活動はあったか?あぁ荒井は料理クラブ希望だったな」

「ちょ先生もうそのネタは勘弁してくださいよ!」

「やかましい、ただ滑ってお前が恥ずかしい思いをするだけならともかく教室中にテロ行為を働きおってからに」

伊久須先生はそうやって荒井をいじると何か用紙を配りだした。

「あーお前らもまだ部活どこ入るか決まってないだろうがとりあえず今日の部活動紹介でどこ入りたいかの希望をこれに書いてくれ。」

いきなりかよ、しかし今日の紹介を聞いただけではどの部活が楽なのか分からない。

俺は少し考えて帰宅部希望と書いた。

そんな部活はないが希望だしいいだろと考え用紙を提出した。




「あーお前らもまだ部活どこ入るか決まってないだろうがとりあえず今日の部活動紹介でどこ入りたいかの希望をこれに書いてくれ。」

と大吉は言った。

しかし今日の紹介だけではどの部活が一番他人と関わらなくて済むのか分からなかったため、俺はただ一言帰宅部とだけ書いて提出することにした。




「あーお前らもまだ部活どこ入るか決まってないだろうがとりあえず今日の部活動紹介でどこ入りたいかの希望をこれに書いてくれ。」

伊久須先生はそうおっしゃって部活希望の用紙を配られました。

「うーんどうしましょうか?」

ただの希望調査とは言え白紙で出すわけにもいきませんし。

しょうがないのでとりあえず帰宅部希望と書いて提出することにしました。

「どうするかはまた後日にきめるとしましょう。」

そう呟いて私は用紙を提出しました。




---1年2組---

「皆さんお疲れ様でした。本日の部活動紹介で入りたい部活を決めた人も、まだ決められていない人もいると思いますがとりあえず今日の部活動紹介で入りたいと思った部活動をこの用紙に書いてください。」

そいうと月村先生は部活動希望調査用紙を配った。

「さてとどうしようかな?特に入りたくなるような部活はなかったし…」

実際私はかなり悩んでいた。

さすがに時間を延長してまで何か部活をしたくはないのだが、全員部活動制である以上は何らかの部活動に所属しなければならない。

そして仮にも優等生を演じている以上、一度入った部活動をやめたりさぼったりするわけにはいかないので何か楽に活動できる部活動がいいのだが今日の説明を聞く限り、どこも結構大変そうだった。

少し考えた後、帰宅部希望と書き、その下に理由のようなものを書き提出した。




皆さんお疲れ様でした。本日の部活動紹介で入りたい部活を決めた人も、まだ決められていない人もいると思いますがとりあえず今日の部活動紹介で入りたいと思った部活動をこの用紙に書いてください。」

そいうと月村先生は部活動希望調査用紙を配った。

「うぁうぁうぁ…」

私は結局どうするか決めることができなかった。

というかどこに入ってもうまくやれる自信がなかった。

「もう何で全員部活に入らなければいけないのよ…」

もう何度もそんなことを愚痴りながら、これ以上現実逃避していてもしょうがないと思いなおし、とりあえず帰宅部でいいですと書いておいた。

というか部活になんて入りたくない…

そう思いながら私は月村先生に用紙を提出した。

そうしたら私と初音さん、それに1組の采女さんと月村君、星羅君がそろって職員室に呼び出されることとなってしまった。




---1年1組---

「なあなあ月村は何部にしたんだ?」

俺が教室から戻ってくるなり荒井が俺に尋ねてきた。

「別に。特に入りたい部活もなかったからとりあえず帰宅部にいたよ」

「なに奇遇だな俺も同じだ」

こいつも部活に興味を持てなかった側のやつか。というか

「お前料理クラブ希望じゃなかったっけ?」

「いやだからあれはネタだって!いい加減勘弁してくれよ!」

と泣きついてきたので殴って引きはがし代わりに聞いてやった。

「俺は家の事情があるから頑張れば例外も認められるかもしれないけどお前は無理だろ」

あの後俺と星羅、それに采女さんの3人は大吉に呼び出され2組の穂積さんに物部さんと一緒にどうしても部活に入れない事情がない限り部活動に加入しなければならないこと、そんなに既存の部活に入りたくないのであれば部員6人と顧問がいれば新しく部活を作ることもできるという説明を受けた。

…なんで荒井が呼ばれなかったかと言うとこいつの字があまりにも汚すぎて読めなかったのだそうだ。

…まぁ例外が認められなければいろいろ体験入部してより楽なのに入ればいいか、新しく作るにしても6人も集まるとは思えんし。

そう思いながら俺は荒井をからかいつつ帰路についた。




「…………」

俺は職員室に呼び出された後、そのままバイト先へと向かった。

正直どの部活にも入るつもりはないし、かといって新しく作るにしても6人も集められるわけがないので問題はひとまず棚上げにしてバイトをしにきた。

「そういえばここには藤堂もいたな…」

俺は同じ学校の一つ年上のひげ面の先輩のことを思い返していた。

あいつはいったいどこに入っているのだろうかと考えてみたが、そもそも学生服が似合っていないので高校に通っていること自体が想像しづらい。

俺が藤堂のことを考えていると、当の本人が更衣室に入ってきた。

「おぉなんだお前さんもう来てたのか」

「藤堂先輩が遅いだけだと思いますが?」

「まあいいじゃないかそんなことは、それよりも今日部活動紹介があったろ?お前さんはどこに入るんだ?」

藤堂は俺の指摘に声を詰まらせた後、話題を変えるようにそう尋ねた。

「いや今はまだ決めてませんが…そういえば藤堂先輩は何部」なんですか?」

「俺か?俺はバスケ部だ。中学ん頃からだな」

藤堂はバスケ部か…もともと入るつもりはなかったが、これでもっと入る理由がなくなった。

「まぁまだ高校生活は始まったばっかだ。あせらず決めればいい」

藤堂は俺の肩をたたきながらそう言った。

まぁ今はバイトに集中するとしよう。

意識を切り替え俺は厨房へと向かった。




家に帰ってきて自室に引っ込むと、月村先生のおっしゃっていたことが頭の中によみがえります。

『それか6人集めれば新しい部活も作れるが』

6人集めれば私の入りたい部活を作ることができる---

「問題はどうやって6人も集めるかなんですよね…それ以前にそもそも私は何をやりたいのかもわかりませんし」

私が通っていた中学はそれなりに由緒ある女子高で部活動のようなものはなく、全員が生徒会のようなものに所属することになっていました。

そのために私は高校で初めて部活というものに出会い、戸惑っているのだと思います。

「それに例え私のやりたいことが見つかって新しく部活動を作るとしても、6人も集まるとも思えない」

結局私はお母さまに呼ばれるまで悩み続けていました。

お母さまに呼ばれてリビングへ顔を出すと、お父さまが目ざとく私の表情を察し心配してきましたが、私は何も問題ないと言ってそのまま食事の席に着きました。

するとお母さまが「恋の悩みかしら」と言い、

それを聞いたお父さまが「おのれ月村殺す」とおっしゃっていたのが聞こえましたが、私は聞こえなかったふりをしてそのまま食事を続けました。

なんにせよまずは私がなにをやりたいか、ですよね。




「ただいまー」

私は家に帰りつくとお母さんの元へ急いだ。

今はとにかく誰かに相談したい気分なのだ。

「お母さん少し相談があるんだけど…」

「うんなにどうしたの?」

私は部活のことで悩んでいることを告げた。

「なるほどね…まぁこれは李の心の問題だから李が解決するしかないのだけど。そうねまずは友達を増やすように努力しなさい」

「うぅでもミミちゃんはあちらから話してきてくれたから仲良くなれたんだし、初音さんもミミちゃんのおかげで…」

「だったら今度は自分から話しかけるようにしなさい。高校生活が始まってからまだ3日しかたっていないんだからまだまだお友達を増やすこともできるでしょう」

お母さんはそんな風に言うが、そもそも私には自分から話しかけるという行為ができないのだ。

私の考えていることを察したのか、お母さんが

「いい?李。あなたはねやれないんじゃないの、やろうとする意志がないだけ。大丈夫よあなたにはやれるだけの力がある。あなたがそれに気づいていないだけ」

やれないんじゃなくてやろうとしないだけか…相変らすお母さんは私の痛いところを突いてくる。

「今すぐには無理かもしれない。でもね変わろうとすれば変われるものなのよ私のようにね」

お母さんはそう言って私の頭をなでてくれた。

…やっぱりかなわないなぁ

私はお母さんの偉大を改めて思い知らされながら談笑を続けた。




帰り道、思い出すのは1組の担任である伊久須先生の言葉だった。

「自分で新しく部活を作りたいなら6人集めろか…」

正直のところ、私は既存の部活に入るつもりはなかった。

私と言う異分子が入ることによって部内の空気が悪化してしまったら私はきっと耐えられないから。

「とはいってもそもそも私が一緒にいて落ち着ける人を探すほうが無理があるよね…」

学校では優等生を演じている私がいきなり地を出せば絶対に避けられるだろう。

それでは意味がない。

私はここにいてもいいんだと言ってもらわなければならない。

そのためには演技を続けるしかない。

「はあ本当にどうしようかな」

このまま欝屈とした思いを抱えていたら今日もあの夢を見ることになってしまうだろう。

私は気分転換に近くの喫茶店に入ることにした。

「らっしゃーせー」

喫茶店に入るなりやる気のない声が響いた。

私は奥のテーブル席に着くとメニュー表を見てオーダーを入れることにした。

すると奥から店員さんがやってきた。

「…ご注文はお決まりでしょうか」

なんか暗い感じの人だと思いつつオーダーのため顔をあげるとそこにいたのは

「えっと星羅君?」

そうオーダーを取りに来たのは今日一緒に職員室に呼ばれた1組の星羅君だった。

星羅君も私のことが誰だかわかったようで

「あんた2組の新入生代表か…」

「ええ、星羅君はここで働いているのかしら?」

「あぁそうだ。このことは黙っていてくれ…」

どうやら星羅君はバイトをしていることをばれたくないようだ。

まぁ私にも周囲にばらしたくないことがあるので黙っておくことにした。

「それよりもあんたも帰宅部志望とはな、てっきり何か優等生っぽいところに入ると思っていたが」

「優等生っぽいところといはれても…まだ始まったばかりですしいろいろと見学してからでも遅くないと思いますので」

「なるほどな。まあゆっくりしていくといい。で、ご注文は?」

「そうですね…それではダージリンティーを」

「かしこまりました。少々お待ちください。」

そう言って星羅君は奥へと引っ込んでいった。

間もなく出されたダージリンティーを飲みながら私は思索に耽った。

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