4月11日 オリエンテーリング2日目
オリエンテーリング2日目の今日は午前中全部を使って校内を回り指定された場所のスタンプを押すというものであった。
ちなみに俺たちの班は俺、荒井、星羅、采女さん、西條さん、園山さんの6人だ。
…というかこんなところでも個々人の性格が現れるとは
現状を説明すると荒井が女性陣を口説こうとして大吉に沈められ、星羅はまるで関心がないかのように一人後ろからついてきて、采女さんが無駄に元気の有り余っているらしい西條さんに腕を引っ張られながら連れて行かれ、一見知的なクールビューティと見せかけてものすごいドジっ子の園山さんは何もないところですっ転びまくりながらも先の2人についていこうと頑張っていた。
なんと言うかみんなもっと強調性を持とうぜ。
俺は嘆息しながらも荒井を引きずって先の3人について行った。
そしてまずは最初のチェックポイントの第1音楽室についた。
ちなみに園山さんはここにたどり着くまでに20回は転んでいた。
「おー音楽室広ーい!」
西條さんは感激したように声をあげた。
「そういえば西條さんは吹奏楽部希望でしたっけ」
「うんそうだよー中学のころトランペットをやってたから」
そう言いながらも西條さんは采女さんと園山さんの手を引きながら音楽室の中をぐるぐる回っていた。
「おい、スタンプ押してきたぞ」
後ろから星羅が声をかけてきた。
「おう悪いな。おーい西條さんたちそろそろ行こうぜー」
俺は彼女たちにそう声をかけるといまだ気絶している荒井を背負って音楽室を出た。
そしてまだ見たりないといった感じの西條さんたちと合流し、第2のチェックポイントの行動へと向かった。
行動は入学式と昨日のオリエンテーリングで見ているため特に見回ることもなくスタンプを押して次のチェックポイントに向かった。
第3のチェックポイントは学生食堂なのだがこれがまたものすごく大きく、また豪華であった。
「うひゃーこれすっげーなー」
「うわーこれ何人入れるんだろ」
「えっと資料によると2000人収容可能だそうです。」
「すっすごいですね」
「さすが鳳仙と言ったところか」
いつの間にか復活した荒井、西條さん、園山さん、采女さん、俺の順で感嘆の声をあげた。
ちなみに星羅はいつの間にかスタンプを押しに行っていた。
と感嘆しているといつの間にか隣にひげ面のおっさんが立っていた。
「どうだすげーだろ。ここはでかいのもそうだが出てくる飯もうまく、それでいてリーズナブルなお値段でもある。」
「うわぁだっだれ!?」
「誰って先生じゃないですか?2年生か3年生の」
「いや俺はお前さんたちの1つ先輩なんだが…」
「えぇ!?こんなひげ面なのに!?」
西條さんがものすごく失礼なことを言ったが俺も同感だった。
「あのなぁ俺は2年の藤堂つーもんだ。お前さんがたはオリエンテーションの真っ最中だろ?」
およそ信じられないが確かに腕章は2年生であることを示す緑色だった。
するとスタンプを押し終わった星羅が戻ってくるなり驚愕の表情を浮かべた。
あっこいつもそんな表情できるんだな。
藤堂先輩が星羅に気づくなり、
「おうなんだ星羅、お前さんも同じ班だったのか」
と何やら親しげに話しかけていた。
というか知り合いだったのか。
俺が少し驚いていると、星羅は苦虫をかみつぶしたような顔になり、
「どうも。なんでここにいるんですか《れいなさん》」
「ちょお前名俺は《ひろなり》だっつってんだろうが!」
と言い合っていた。
すると疑問に思ったのか西條さんが
「れいなさん?」
とたずねた。
「あぁおれの名前は礼儀の礼に成功の成でひろなりなんだよ」
すると何を思ったか西條さんが
「なるほど!セーラちゃんとれーなちゃんですね!」
とのたまった。
いやいやいやそれ地雷だろ!西條さんってば何見え見えの地雷に自分からつっこんでんの!?
俺たちが驚愕していると星羅と藤堂先輩がものすごい顔でその呼び方やめろと睨んできた。
「はぁで結局何でれいなさんはいるんです?」
星羅が疲れたように言うが何気に呼び方戻ってない。
「いや俺はオリエンテーリングの手伝いだよ。ほれ向こうのほうでジュース配ってる」
「ジュース!?」
と西條さんが顔を輝かせた。
「おうこっちだついてきな」
俺たちは藤堂先輩について行った。
「うぁー私なんて私なんてーーー」
そこには何やら咆哮しながらやけ酒ならぬやけジュースをしているちびっ子がいた。
背の高さはおそらく西條さんとどっこいであろう子が一体どこにそんなに入っているのか大量のジュースパックを空にしていた。
その近くには困惑した様子の一年男子3名におそらく手伝いの先輩となんとかなだめようとしている女子2人がいた。
するとそれを見ていた西條さんが
「ふははははーーなんだかよくわからないけど北中の未寅破れたりーー!」
と本当に分かってなさそうに笑いだした。
すると今までやけジュースしていた子が
「おっお前は西中の西條!まだだよまだ私は負けてない!」
といきなり闘志をむき出しにし始めた。
…いきなり何なんだこの子らは
こっちのほうもあちらのほうも分かってないのか彼女ら以外は皆呆然としていた。
ってあの子新入生代表の子じゃん!
よく見ると未寅さん(仮)をなだめていたのは一昨日の入学式で新入生代表挨拶をしていた子だった。
すると荒井も気がついたのか
「うぉーあっあなた様は新入生代表の穂積さん!このようなところでお会いするとは!おぉ神よこの出会いをあなたに感謝いたします!さあ穂積さんここで会ったも何かの縁!俺とめくるめくランデブーのたびに…」
荒井がいつもの病気を発作させながらいつもは信じていないであろう神に感謝し、穂積さんをナンパしていた。
「えっ?あのそのええっと?」
穂積さんはものすごい困惑しながら戸惑っていた。
すると今まで静観していたあちらの男子と後なぜか未寅さん(仮)が
「お前何俺たちの穂積さんに手ぇ出してんだ!」
「身の程をわきまえやがれ!」
「そうだぜこのブサ面野郎!」
「私の初ちゃんに手を出すなんて許さない!」
…どうやら未寅さんは百合のようだ。
「えっと私はミミちゃんたちのものじゃないですし、それから荒井さんでしたっけ?ごめんなさい私は今どなたかとお付き合いするつもりはありません」
とバッサリと切られていた。
まあ同情はしないが。
そんなこんなで俺たちはお互いに自己紹介をし、ともに第4のチェックポイントに向かうことにした。
ちなみに一緒にいた3人目の女子は物部さんと言うらしい。
そして俺たちは穂積さんたちと一緒に第4のチェックポイントの職員室についた。
…そこには俺の姉が座って待っていた。
「「あっいたいた。月村せんせー!スタンプください!」」
と西條さんと未寅さんが競うようにして空姉えにスタンプカードを差し出した。
ここに来る途中に聞いたがどうやら西條さんと未寅さんは中学のころ吹奏楽部でライバル同士だったらしい。
「ふふご苦労様。はいどうぞ」
空姉えは俺たちを見て微笑むとカードにスタンプを押して渡してきた。
「あれっ?せんせーその書類はー?」
西條さんが目ざとく空姉えの机の上に置いてあった書類を見つけていった。
「あぁこれは今度私のクラスに入る留学生の子のものよ」
そういや昨日そんなこと言ってたな。
なんでもフランスからわざわざ留学してくるとか。
書類には「ヨウイチ・Y・陽之坂」という名前とねこミミのような癖のある銀のショートヘアーに碧眼の貴公子然とした写真と何かいろいろ書かれていた。
「おぉーかっこいいー王子様みたい!」
西條さんと未寅さんがきゃいきゃいとはしゃぐ。
「けどなんだかヨウイチって日本人みたいですよね?」
「うん陽之坂なんて完全に日本人だし」
一緒に見ていた采女さんと物部さんが疑問を呈した。
他のやつらも疑問に思ったのか、先ほどトイレに行った穂積さんと興味なさそうにしている星羅を除いて皆一様に空姉えを見た。
「あぁ陽之坂君はフランス人と日本人のハーフでな、陽之坂というのも日本に来るに際して母方の姓を名乗っているらしい」
空姉えが昨日俺に言ったことをみんなにも説明した。
「そーなんですかーそれにしてもこの真ん中のYって何なんでしょう?」
「あれ未寅ってばそんなことも知らないの?それはミドルネームっていうんだよ?」
西條さんがどこか小馬鹿にしたように未寅さんに言うと、未寅さんは小さい手をわたわたさせながら怒ったように、
「むかー!それじゃこのYが何なのか言ってみなよ」
「えぇ!?えーっとY、Yねぇ…ヨウイチじゃない?」
…いや名前と姓が同じってさすがにありえんだろう。
未寅さんもそう思ったようで
「性と名が同じなんてあり得ないんだよ!所詮西條はその程度のお積むしかないということなんだね」
「むきー!じゃあ未寅は何だと思うのさ!」
「うーんそうだねー王子様っぽい外見から察するに…ヨークシャテリアだ!」
いやさすがに小型犬はないだろ
「当然ながらどちらも不正解。正解はユーキュリアス君よ」
「なるほどそれならむむむ…ゆきちくんだ!」
まだ会ったこともないちびっ子に可笑しなあだ名が付けられるとは哀れな…
「じゃあ私はヨークシャテリアから取ってよー君と呼ぼっと」
いやヨウイチからとってよー君じゃないのか。
「何を話していらっしゃるのですか?」
どうやら穂積さんが戻ってきたみたいだ。
「えっとねーゆきちくんの話だよ初ちゃん」
「よー君の話だよ穂積さん」
いやゆきちくんだのよー君だのと言ってもわからんだろうと心の中で突っ込みながら穂積さんにも分かるよう説明した。
「今度穂積さんのクラスに入ってくる留学生の話だよ。ヨウイチ・Y・陽之坂っていう…」
「…なるほどクラスも一緒なのか…」
穂積さんが小声で何か言っているようだがよく聞こえなかった。
「まぁそういうわけだから穂積さんもよろしくしてあげてね?」
「分かりました。任せてください」
穂積さんは笑顔でそう言った。
そのあと荒井が空姉えに俺のことを聞こうとしてきたので沈めてやったりしながら次のチェックポイントである体育館へと向かった。
体育館ではレクリエーションもやっていてなぜか俺たち男子は3on3をやることになってしまった。
相手のモブ男(森田、仏陀、尾崎の最初の字をとって)たちはチームワークの抜群なのに対して、こちらはブレーキの壊れた暴走機関車こと荒井と、まるでやる気のない星羅という最悪なフォーメーションなのだ。
「…これなんて無理ゲー?」
と思わず漏らしてしまうと、それを耳聡く聞いていた荒井が
「大丈夫大丈夫!俺に任しとけって!」
と言ってきたがお前が一番問題なんだよ!
そう思っているうちに試合が始まってしまった。
すると何をトチ狂ったのか荒井が開始早々森田に向かって激しいタックルをかましやがった。
「おいお前何やってんだよ!?」
「安心しろ月村!やつら、モブ男からブ男にクラスチェンジさせてやったぜ!」
だからどうしたと言いたいがこれでタックルをくらって悶絶した森田と退場となった荒井が消え、2on2となってしまった。
「星羅が役に立ちそうにない以上俺がやるしかないか…」
と思いなおし、星羅からパスを受け取ろうとすると、その星羅が突如覚醒したようにブ男のディフェンスを難なくかわしシュートを決めた。
「うわすげえな星羅お前元バスケ部なのか?」
と聞くと星羅はいつもの不機嫌顔に戻って
「…昔少しストリートバスケをしていただけだ」
と言って体育館から出て行ってしまった。
やれやれと肩をすくめながら女子のほうを見てみるとなぜか西條さんと未寅さんが殴り合いの喧嘩をしていた。喧嘩と言っても二人とも小動物チックなので見ていて癒される構図だが。
俺は穂積さんたちとともに二人をなだめると星羅を追って最後のチェックポイントへと向かった。
最後のチェックポイントは校外からでも目立つ大きな桜の木で会った。
これはあれだよく恋愛ゲームとかで出てくるこの木の下で告白すると永遠に結ばれるとかいう逸話を持っていそうな奴だ。
そう思っていると園山さんが資料を見ながら
「えっとこの桜の木は告白スポットとしてよくつかわれているみたいです」
やはりそうだったかと感心していると未寅さんが急に顔を赤くして
「初ちゃん!李ちゃん!私と付き合ってください」
いきなり穂積さんと物部さんに告白し始めた。
「ごめんなさい」
「ごめんね」
が、一瞬にして二人に振られた。
振られて落ち込んでいる未寅さんを西條さんがからかいながら俺たちは教室場でたどり着き、そこで2組の連中と別れ、伊久須先生にスタンプカードを提出して帰路についた。
そういえば一緒に行動している間一度も物部さんと話さなかったな…
ちなみにこのオリエンテーリングで荒井は53人に告白して振られ、園山さんは132回も転んでいた。




