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夏の思い出

作者: 安川

照り過ぎる太陽、生暖か過ぎる風、顔にぶつかり過ぎる虫、腹が立ち過ぎる人の表情、汗、汗、汗。

そう、夏だ!

夏といえばクワガタ!

クワガタといえば林!

「おい、林にいこーぜ!」

俺は小林に言った。

小林

「何言ってんだよ、そんなことする歳でもねーだろ」


確かにそんな気もしてきたが、負けた気がしたので押してみた

「だってお前、自分の先祖のこと考えてもみろよ、きっと林が好きだったんだとおもうぜ、それに小だぜ、謙虚じゃねーかよ、きっといい奴だったんだよ。な、小林、墓参り気分でいこーぜ」


小林

「・・・・いくか?」

(言ってみるものだ・・)チャラチャチャーン

小林が仲間になった!


二人はチャリンコで田舎道を行き、川まで来ると、チャリンコを下りて川沿いをチャリンコを押しながら歩いた。

小林

「クワガタなんて最近見ないけどいるのか?」


「確かに野生のクワガタは少なくなっているってうわさだ、見つかる可能性は極めて低い。ただな、だからこそ見つかったら時嬉しいんだ、ワクワクしてこないか?」


小林

「・・・・・・・。」

小林は下を向きなぜか照れている。

(言ってみるもんだ・・)小林も喜んでいる様子なので一段と楽しみになってきた。


林が見えてきた。

川では家族連れがキャンプをしていてワイワイやっている。

「キャンプもいいよな」

小林

「おう、釣りに泳ぎにバーベキューもあるしな」

「今度いくか」


小林

「そうだな、そりゃ最高だな」


「それまで生きてたらいいな・・・」


小林

「やめろよそういうの、死んじゃう人みたいじゃねーか」


小林は心配しているようだ(言ってみるもんだ・・)気を引かせる様で情けなくなってきたので林の方へ全速力で走った。

小林もなんとかついてきている。

「おい、アレなんだ!?」

小林

「・・・木だろ」


意味はない・・・。

俺は先を急いだ

小林はあきれた顔で見ている。

独りぼっちになりそうな雰囲気だったので小林のもとに戻った。林に独りは禁物だ。

なぜかクワガタはもうどうでもよくなってきたが、一応探してみた。

木を蹴る。ボフっ。ゴフっ。バンっ。人を見ると蹴りを入れたくなるのはきっとクワガタ捕りのくせのせいだろう。

小林

「いねーな」


「もっとさがせよ。木の穴とか木の下とかをよ」


小林

「ってゆうかよ、なんか違くねーか?木が」


恐れていた事態が起きた。

確かに違う。

クワガタはクヌギやナラの木にいるもんだ。

俺らが探していた木はどう見てもスギの木だ。

しかしもう遅い。小林は俺のことをクワガタ博士だと思っているに違いない。

博士が間違いましたでは済まな過ぎる。

「バ、バカヤロー、スギの木で探すからこそ男だよ。確かにクヌギの木がある場所なら捕れるぜ、簡単だぜ。だけどよスギの木で見つけられたらもっとうれしいだろ。ワクワクしてこねーか?」


小林

「・・・・・。」


小林は少しもワクワクしていない。

(言わない方が良かったみたいだ・・・)

小林

「俺帰るぜ」


「なんで?」


小林

「いや別に理由はねーけどよ、もういいだろ」


ああ、一時間前が懐かしいあんなに分かち合えていたのに、あんなに胸が躍っていたのに。

でももう遅い。もうあの時は戻ってこない終わりだよ、もう終わり。

「じゃあ、帰れよ。」


小林

「お前はどうすんの?」


「俺は残るよ、旅人だからさ、じゃあな」


小林

「いや、お前も帰ろうぜ」


「・・・お前と遊んで楽しかったぜ。一生忘れねーよ。じゃあな」


小林はそのまま動かず立っていたがしばらくすると帰った。

小林が視界から消えた。

もしかしたら林を抜けたところで待っていてくれているかと思い、走って追いかけたが小橋はチャリンコに乗って帰っていった。

このまま林で夜を明かしたい気分だった。

 その時、キャンプをしていた家族連れの方が騒がしくなった。

ムムム、どうやら川だ。川で何か起きている。

人だ!

人が流されている!

小橋を失った今、俺には他に失うものなどあるだろうか。(反語)

俺は走っていた。

耳に入る全ての音はシャットアウトされ、嗅覚、味覚、触覚、全て忘れた。

あるのは視覚のみ、もう目の前の人しか見えなかった。

視界に水しぶきが上がる、どうやら川に入ったようだ。

(絶対助ける。俺が絶対助けてやる、ああ、あと少しだもう少しだ)

「こぼぼぶべぼ」


(なんだ?水?こけたか?ちきしょー、まだだ、諦めてたまるか)

立ち上がりまた追いかけた。

(よし、もう少し、あと5メートル、3メートル、1メートル、うるああ!捕まえた。

)抱えたまま岸に上がろうとするが力が・・・・・・もうない。(ダメか・・・)

その時、何かが見えた。

(おいおいうそだろ?いやいやそんなはずはない、俺はどうかしている。)

小橋だった

確かに小橋だ

小橋が手を差し延べている俺は必死でその手を捕まえた。


「ゼエハア、ハァハァゴホっ、なんでおまえブハっ」

小橋

「帰ってもよかったんだけどな、なんとなく川を見てたんだよ。そしたらお前が・・・・流れて来た」

「そうか、そりゃ奇遇だ。桃太郎みてーだごほっ」


嬉しくないと言ったら嘘になる。

小橋はもしかしたら待っていてくれたのかもしれない。

なんだ?小橋が何か言っている。

へっもういいんだよ、俺も悪かった気がするぜ、えっ?服?服なんてどうだっていいんだよずぶ濡れになったて人の命には還られないんだぜ。

何?なんだよ。さっきから

「なんだよ?」




小橋

「さっきからなんでお前、服を抱いてんだよ」



俺は服を助けていた。

顔を上げるとさっきの家族連れが・・・。

家族連れ

「あ、ありがとうございます・・・」




おじいさんおばあさん、

僕は鬼退治に行ってきます



おわり


最後までお読み頂いてありがとうございました。感想、批評等ありましたら書いて貰えるととってもうれしい限りです。

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