7. 借金額に見合った能力?
自分の能力値については把握できた。が、できれば他の転生者と比較したいところだ。そうすれば、能力資質がいくつに設定されているか、ぼんやりとでも判断できると思うのだが。
とはいえ、露骨に探るのはマズいだろうな。俺が能力を確認するとき、ハルヨシさんは距離を取った。おそらく、人のステータスを探るような行動はマナー違反なのだ。その辺りはおいおいと探っていこう。
ひとまず、ステータスの確認はこのくらいで十分か。システムカードを元の形状に戻した俺は、ハルヨシさんの元へと向かった。
「お待たせしました」
「気にしなくて良いよ。能力のことで質問はあるかい?」
「そうですね……」
気になると言えば、借金を返し終えたというハルヨシさんのステータスだが。さすがに不躾な質問か。友好的に接してくれるとはいえ……いや、友好的に接してくれるからこそ、その関係性を損ねかねない行動は慎むべきだ。
まあ、彼個人ではなくて、一般的な話なら聞いても構わないか。
「レベルがあがると、能力が上がるという認識でいいですか? それと、平均的な能力値がどの程度なのか、知りたいのですが」
「それはね――……」
洞窟の出口に向かいながら、ハルヨシさんに話を聞く。
レベルに関しては、基本的にゲームと似たような認識で構わないようだ。俺たちは魔物を倒すと、それに応じて身体能力が強化される。レベルはその強化度合いを示す数字ということだ。
しかし、ゲームとは違い、レベルが上がった時点で能力が強化されるわけではないらしい。能力値は魔物を倒す度に、僅かに上昇していき、それがある一定量を超えたところでレベルという数値に反映されるのだとか。
そして、能力値について。
「戦闘職業や能力資質によって大きく変わるよ。成長傾向がCで能力資質が標準の5なら、転生したばかりの時点では20弱ってところかな。あまり人に明かすものじゃないから、正確なところはわからないけど」
やはり、ステータスは秘密にしておくものらしい。例外があるとするなら、行動を共にする仲間――いわゆるパーティーメンバーくらいか。そのせいで大雑把にしか分からなかったが、それでも基準となる数値を教えてもらえたのはありがたい。
俺の能力値はいずれも20を大きく上回っていた。成長傾向Cの体力が35だったことを考えると、能力資質は標準よりかなり高く設定されていることは間違いなさそうだ。借金額に見合うほどの利点かどうかはさておき、意味も無く借金だけが増えていたという最悪の結果ではなかった。それだけでも朗報だ。
あとは、能力値の高さで、スキルなしのマイナスを補えればいいのだが、それについては実際に魔物と戦ってみるしかないだろう。
幸いなことに、スキルがなければ武器は扱えない、というようなことはないらしい。さらには、訓練すれば後からスキルを身につけることも可能。初期から所持しているスキルの方が成長しやすいのではないかと言われているが、それほど顕著な差もないそうだ。
その後も、気になることを質問しながら歩き、10分ほどで洞窟の外に出た。周囲を見渡せば、どうやら山の麓だ。出口からは真っ直ぐに道が続いており、少し遠くには街らしきものが見える。
「さて、ここから見えるのがアースリルという街だ。道から外れなければ、魔物に出くわすこともないから心配しなくていいよ」
ハルヨシさんが案内してくれるのは、ここまでらしい。彼は、もうしばらく洞窟で転生者が現れないか待機するそうだ。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。大変だろうと思うけど頑張ってね。とにかく、信頼できる仲間を見つけることだよ」
そう言ってハルヨシさんは洞窟の中へと引き返していく。それを見送ってから、俺は大きなため息をついた。
「信頼できる仲間か。難しいかもしれないな」
もちろん、仲間の重要性は理解できる。
接近戦が苦手な魔法職は、近接戦闘が得意な戦闘職業の仲間がいないと実力が発揮できない。逆に、物理攻撃を無効化するような魔物を倒すには、魔法職が必須だろう。仲間がいることによって、それぞれの欠点をフォローすることができるのだ。
また、そうでなくても、単純に数は力だ。ゲームでも物語でも、一人では太刀打ちできない強敵を仲間と力を合わせて打ち倒すという場面はよくあるもの。そういう意味でも仲間を作るメリットは大きい。
そこまでわかっていながら、仲間を作ることに躊躇いを感じるのは、俺のキャラメイクが原因だ。
意図したことではないが、俺は本来の制限を超えたビルドになっている。未確認ではあるものの、借金額から判断すれば、俺の能力資質は全て最高の9に設定されているはず。ステータスを明かさなかったとしても、行動をともにしていれば不審に思われることはあるだろう。下手な相手に知られると、チートだの何だのと咎められて、厄介事に発展する可能性がある。
もちろん、本当に信頼できる相手にならば明かしても構わない。だが、信頼関係を築くにも、まずは行動を共にしなければ……となると、やはり難しい。
「まあ、まずは現状把握。自分に何が出来るか確認しておくか」
不審に思われないためには、他者との違いを把握しておく必要がある。そして、違いを知るためには、まず自分自身を知らねばならない。
御使い男のせいで、武器スキルは皆無なわけだが、代わりに職業固有のスキルがある。【盗む】と【幻惑】だ。どちらも、攻撃には不向きそうなスキル名だが……。
「【盗む】の方のアーツは攻撃に使えそうな気がするな」
一部のスキルでは、規定レベルごとに、アーツを習得することができる。例えば、【剣術】なら攻撃アーツの〈スラッシュ〉、【治癒法術】なら回復アーツの〈ヒール〉が使えるようになるのだとか。
どうやら【盗む】もアーツを取得できる系統のスキルだったようだ。初期アーツは〈エナジードレイン〉と〈マナドレイン〉。システムカードでアーツの説明を見ると、前者が対象の生命を、後者がマナを奪うアーツらしい。奪うという説明からの推測になるが、ダメージを与えるとともに自己回復もできそうだ。
アースリルの周辺に出現するのは低級の魔物だとハルヨシさんから聞いている。このアーツがあれば、武器がなくとも戦えそうだ。そう考えた俺は、街へと向かう前に試してみることにした。




