34. アーマニアも精霊の一種
『あ……。ジンヤ! コルネリアが戻ってくるよ』
「おっと、どうするか」
ルゥルリィに子分の心得を語っていたペルフェだったが、コルネリアの接近に気づいて知らせてくれた。元所持者ということで何らかの繋がりが残っているのか、ペルフェはコルネリアの気配には敏感だ。ペルフェが言うのなら、ほぼ間違いはない。
おそらく、異変が収まったことを察して戻ってきたのだろう。となると、コルネリア一人ではあるまい。アイリとレイナもいるなら、対応を考えておかないと。とりあえず、仮面と外套は外しておこう。
集まった精霊たちは……まあ、俺にはどうにもできないので放っておく。ただ、ルゥルリィには引っ込んでもらった方がいいだろう。精霊と契約を結んだとなると、状況の説明が難しくなる。
「ルゥルリィは腕輪に戻っていてくれるか?」
俺の頼みに、彼女はこくりと頷く。現れたときと同じように、光球となった後、ドライアドの宿環へと戻っていった。
「ジンヤさん!」
「精霊さんだ! 精霊さんがたくさんいる!」
精霊の守護者の三人が戻ってきたのは、それからすぐのことだ。アイリは心配してくれていたようだが、レイナの眼中には精霊たちしか入っていないらしい。とはいえ、興味がそちらに移っているのなら都合がいい。
「……ということは、ファントムさんが狂える精霊を倒したってことですか?」
「直接名前を聞いたわけじゃないけどね」
「そんな格好の人はそうそういないと思いますよ~。ファントムさんで間違いないと思います~」
アイリとコルネリアには、簡単に事情を説明した。といっても、俺が即席で考えた適当な筋書きで、だが。ファントムらしき男が現れて狂える精霊を倒していったという内容だ。コルネリアも話を合わせてくれるが、“そんな格好”といった瞬間、からかうような笑顔を浮かべたことは忘れない。
ちなみに、レイナはこちらの説明はそっちのけで精霊たちに話し掛けている。彼女は【精霊語】のスキルも習得しているらしく、意思疎通ができるようだ。
「うんうん、なるほど。それはファントムさんだと思います。悪い人じゃないみたいですね」
そのレイナの口から“ファントム”の名が出てきたので、ビクリとしてしまう。精霊と意思疎通できるということは、彼女たちから事情を聞けるということだ。特に口止めもしていないので、ファントムの素性がバレる恐れがある。
『大丈夫だよ。今のところ、バレてないから。それにレイナの【精霊語】じゃ、細かいところまでは伝わってないと思うよ』
戦々恐々としていると、ペルフェがこっそりと教えてくれた。精霊語のわからない俺からすれば、会話が成り立っているように見えるが、その実、レイナの認識には若干の齟齬があるらしい。精霊たちの言葉の中から“仮面”や“外套”という単語を拾って、ファントムのことだと誤認したようだ。
『まあ、後々はわからないから、今のうちに口止めしておいてあげるよ』
「……助かる」
『ふひひ、一番の相棒だからね! 当然のことだよ!』
子分ができたせいか、ペルフェはいやに張り切っている。だが、そのおかげで助かっているのは事実だ。
ついでにいえば、“狂える精霊”で仮面と外套を装備しておいて良かった。もし、そうでなければ、さすがにバレてしまっていたかもしれない。
まあ、すでにコルネリアにはバレてしまっているわけで、アイリたちになら隠す必要はないのかもしれないが……。まあ、神にチートアーツを知られるリスクは少ない方がいい。必要がない限りは、できるだけ隠す方がいいだろう。
その後、レイナは無事、精霊たちと友好関係を築いたようだ。ドライアドとシルフィ一人ずつと契約を結んだ。これで、彼女の戦力は今まで以上に強化されるだろう。それ自体は喜ばしいのだが――……
「なんか、ルゥルリィのときと違うんだが……」
『それはそうだよ。召喚契約と共生契約だもの』
レイナと契約した精霊たちは、契約したあとも消えたりはしなかった。ペルフェが言うには契約の種類が異なるらしい。ルゥルリィはドライアドの宿環に住まい、俺についてくる。一方で、レイナの契約精霊は【精霊術】で呼び出したときにのみ、姿を現し、力を貸してくれるのだという。こちらが一般的な契約であり、一部例外を除いて、精霊が共生契約を結ぶのは極めて珍しいのだとか。
「一部例外というのは?」
『そりゃあ、僕らみたいなのもいるわけだし』
なるほど。いや、ちょっと待て?
「もしかして、アーマニアも精霊なのか?」
『そうだよ! 何だと思ってたの!?』
そんなこと言われてもな。アーマニアはアーマニアだと思っていた。
「だが、ペルフェと契約を結んだ覚えはないが」
『アーマニアはちょっと他の精霊とは違うからね。所持者とは仮契約状態になるんだ』
「ということは、俺とペルフェはまだ正式に契約を結んだわけじゃないんだな」
『そ、それはそうだけど。それでも、一番の相棒は僕なんだからね! あと、僕と契約を結びたかったら、きちんと僕を強くすること! そのときはちゃんと契約してあげるから』
「いや、どうしても契約してほしいというわけではないんだが」
『なんでだよ!』
ともかく、『精霊の守護者』たちの戦力アップという目的は達成できた。俺自身も思わぬ形で精霊と契約することになったが、悪いことではないだろう。あとは、スキル結晶体もある。どんなスキルが取得できるのか。楽しみだな。




