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29. 精霊を探して

 湖畔エリアで『精霊の守護者』の三人と再会した四日後、俺は彼女たちと行動を共にしていた。やってきたのはメースレイアの森という場所だ。湖畔エリアの北にあるこの場所は、白猿の森とはまた違った雰囲気があった。神秘的と言えばいいのか。どこか神聖な気配がするのだ。もっとも、事前に精霊が住まう場所だと聞いているので、そのせいでフィルターがかかっているだけかもしれないが。


「ここに精霊さんがいるんだ。うふふ……楽しみ!」

「レイナ。嬉しいのはわかるけど、油断はしちゃ駄目よ」

「わ、わかってるよ……」


 珍しくテンションの高いレイナを、アイリが苦笑いで注意している。レイナは妖精や精霊といったものに憧れを抱いているらしい。聞いてはいたが、想像以上のはしゃぎようだ。


 レイナはすっかりと浮かれているが、当然ながら観光目的というわけではない。俺たちが、この森を訪れたのは『精霊の守護者』の戦力アップのためだ。レイナの戦闘職業である『精霊術師』は精霊と契約し、その力を行使することで真価を発揮する。そのため、この森に住まう精霊との契約を試みようと考えたわけだ。


 この狩り場は、山岳地帯や湖畔エリアと比べると、やや魔物が強い。アイリとレイナのレベルでは少し厳しい狩り場になる。コルネリアがいても戦力が足りないので、しばらくは湖畔エリアで鍛えるつもりだったらしい。そこで、俺が協力を申し出たわけだ。


 まあ、そのせいでペルフェが少し不機嫌になっているが。へそを曲げられると面倒なので小声でフォローをいれておく。


『僕の強化はどうなるんだよ』

「……人間には付き合いというものがあるんだよ」

『僕、知ってるよ。ジンヤみたいなの、お人好しっていうんでしょ?』


 ……そうだろうか?


 そういえば、『疾風爪牙』とのやり取りの中で、パワーレベリングに協力する物好きはいないと考えていたが……俺自身が、その物好きになっているような気がしなくもない。だが、彼女たちの場合は、また別だろう。まだ学生であるし、これまでの関わりがある分、気になったとしても仕方がない……はず。


「まあ、この森なら使えそうなスキルがあるかもしれないからな」

『そうだね!』


 現金なもので、スキルのことをほのめかすと、ペルフェは途端にやる気になった。というのも、スキルドレインは便利なアーツだが、対象が魔物だと、なかなか有益なスキルが奪えないのだ。特に湖畔エリアは微妙だった。獣系の魔物が多いせいか、人間にもアーマニアにも使えそうなスキルが奪えなかったのだ。


 そういう意味では、この森には期待できる。人型魔物が出るらしいので、それなりに有用なスキルが得られることだろう。まあ、『精霊の守護者』と行動中にスキルを奪うのは難しいだろうから、今日のところは様子見になるだろうが。


「ここで出会えるのはドライアドとシルフィだったかな?」

「基本的にドライアドですね~。ときどきシルフィと会えることもあるそうですけど」


 尋ねると、コルネリアから答えがあった。彼女は俺たちよりも探索者歴が長いだけあって、詳しい。こういうときは非常に助けになる。


「じゃあ、早速探索しましょう! 早く、精霊さんを見つけましょう!」

「ああ、うん。ホント、ちょっとは落ち着いてね、レイナ」

「うん!」

「大丈夫かしらね……?」


 アイリの言葉を聞いているのか、いないのか。後衛職だというのに、レイナはぐんぐんと進んでいく。俺たちは顔を見合わせたあと、慌てて彼女を追いかけた。




「ん? 何かいるぞ?」


 森に入ってしばらく経った頃、前方に人影を見つけた。生憎と気配察知の類は持っていないので、どうしても発見は遅れる。木々に遮られて視界が悪いのもあって、かなり近づくまで気付くことができなかった。


「精霊さん?」

「いや、どう見ても違うでしょ」


 期待のせいで何でも精霊に見えてしまうレイナに、アイリが冷静に突っ込む。アイリの言う通り、ひょっこりと姿を現したソイツは、とても精霊には見えない。簡単に表現するなら、二足歩行するマッシブな兎だ。熊のような体格なのだが、長い耳の生えた頭部は間違いなく兎だった。杵のような巨大な木槌を両手で抱えている。


「マッスラビですね~。どうやら、もう一体いるみたいです」


 コルネリアの言葉の直後、少し離れた木の影から、別の筋肉兎が現れた。コイツは武器を持っていない。


 なんというかインパクトが凄い。人型とは聞いていたが、ちょっと想像とは違う。


 見た目に気を取られて、一瞬、呆然としてしまった。その隙を突くかのように、素手の筋肉兎が猛然と駆けてくる。その狙いの先はレイナだ。


「きゃっ!」


 思った以上の素早さだ。その勢いにレイナが悲鳴を上げるが、アイリは冷静だった。


「させない!」


 盾を構えた状態で、レイナを庇って前に出ると、見事に筋肉兎の攻撃を防いだ。初撃を防がれた筋肉兎は動揺することもなく、少し退く。そこに、杵兎が並んだ。


「大丈夫か?」

「はい! でも、思った以上に攻撃が重いです。二体は防げないかも」

「一体防げるなら十分だ。もう一体は俺が受け持つ」

「お願いします!」

「まかせろ」


 聖騎士は防御に優れた戦闘職業だ。その彼女が防げない攻撃を放つ魔物を、魔法戦士として振る舞っている俺が防ぐというのもなかなか無謀な話だ。だが、誰からも異論は出なかった。まあ、信頼されているということだろう。


 ともかく、ヘイトを集めるために〈ファイアボール〉を放つ。あわよくば武器を破壊したいと考えて杵兎の杵を狙ったが、残念ながら燃え出す気配はない。だが、ヤツの注意を引くことには成功したようだ。続いて、レイナが素手兎に風の魔法を放った。そちらはレイナと、彼女を守るアイリをターゲットとしたようだ。


 向かってくる杵兎に、さらに〈ファイアボール〉を一射。直撃したはずの杵兎は、それでも怯まず向かってくる。なかなか厄介なタイプだ。


 ブォンと嫌な音を立てて振り下ろされる杵。当たれば、かなりのダメージがありそうだ。当たればだが。


『突撃ぃ!』


 杵を避けたところで、こちらの反撃だ。振り下ろした長剣は、杵兎の右手を切り裂いた。どうやら、攻撃直後の隙が大きいらしく、杵兎はまともに回避行動も取れていない。


『あはは! これなら余裕だね!』


 十分な傷を負わせてペルフェがご機嫌になっている。が、その言葉に偽りはなかった。杵兎の攻撃は俺にかすりもせず、一方的に攻撃を加えることができる。四度目の斬撃で、杵兎は結晶体と杵を残して消滅した。



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