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22. 新しい狩場

 白猿の森を卒業して、次の狩り場として選んだのがその更に南にある山岳地帯だ。白猿の森と同じく、あまり人気のない狩り場らしい。物理攻撃に強い硬めの魔物が多く、しかもドロップアイテムの金銭価値が低いというのが不人気の主な理由だ。


 ドロップアイテムで稼げないのは俺にとってもマイナスだ。とはいえ、それでも人目を気にせずにアーツを使えるメリットの方が大きい。少しくらいエルネの獲得効率が悪くても、数を倒せば十分に補える。そもそもエルネマインではレベルを上げて強い魔物を倒した方が圧倒的に稼げるのだ。多少の稼ぎの悪さには目を瞑ってでも、ガンガン魔物を倒してレベルを上げた方が長期的には有利なはず。


 山岳地帯の魔物は、聞いていた通り概ね硬い。白猿には十分に通用していた白鉄の長剣による斬撃も、ここでは武器を痛めるだけでほとんど意味をなさない。白鬼長の籠手の特殊効果のおかげで格闘攻撃についてはそれなりに有効だが、硬い相手に殴る蹴るの攻撃は手足を痛める。ちゃんと確認したわけではないが、反動ダメージがありそうだ。相変わらず物理攻撃は不遇である。そういう狩り場を俺が選んでいるだけなのだが。


 まあ、物理的な硬さは魔法攻撃を主軸にすれば解決する問題だ。数戦したところ白猿よりは格段に強いが、戦えなくはない。狩り場を変えてもドレイン系のアーツは優秀だった。


 となれば、狩りの効率を上げるためにも試してみたいことがある。【咆哮】スキルのアーツだ。


 現時点で使えるアーツは二つ。〈威嚇の叫び〉と〈挑発の叫び〉だ。前者は敵を居竦ませ行動を阻害し、後者は聞く者の敵愾心を高めて攻撃を集める効果があるらしい。まず試してみたいのは後者のアーツだ。


ほら、かかってこい!(挑発の叫び)


 大声とともにアーツを発動させる。【咆哮】というだけあって、スキルの効果は声量にも依存するらしい。効果範囲にも関わってくるので、基本的には大声を出す必要がある。もし有効そうなら喉を鍛える必要があるかもしれない。


「おお、集まってくる集まってくる」


 弱体化しているとはいえ、効果は十分。岩に擬態していた鼠みたいな魔物が数体、のそりと体を動かして、こちらに突っ込んできた。


 奴らの動きは機敏とは言い難いが、突進攻撃だけはやたらと速い。対処方法は簡単で、突進を避けたあと方向転換に手間取っているところを攻撃すれば良い。白猿よりは耐久力に優れており、エナジードレインを二発は耐える。ファイアーボールも同様だ。だが、今のところ三発目を耐えた岩鼠はいない。方向転換中に周囲をぐるぐると回ると、再突進の方向を定めることができずにまごつくのが滑稽だ。


 マナドレインで奪えるマナは白猿よりは多いので、魔法を三度使ってもマナ収支もかろうじてプラス。つまり、岩鼠が相手なら無限に戦える。


「おっと!」


 岩鼠を数体光の粒に変えたところで、視界の隅に高速で飛来してくる岩の矢を捉えた。慌てて躱し、そちらに目をやるが魔物らしき存在は確認できない。


「いや、アレか」


 よくよく観察してみれば、ゴツゴツとした岩場から生えたサボテンのような植物の一部が不自然に動いている。アレも魔物らしい。そんな魔物がいるという話は聞いていたが、なかなかに厄介だ。動かなければ、周囲のサボテンとほとんど見分けがつかない。


 どうやら、〈挑発の叫び〉の効果範囲にサボテンもどきも混じっていたようだ。他の魔物が寄ってくる中、遠距離攻撃を仕掛けてくるのでやりづらくはある。だが、別の側面から見れば、やりやすくなったとも言える。


 というのも、奴らの真骨頂は擬態からの奇襲攻撃。隙を見せたところに狙い澄ました一撃で痛打を与えてくるのが一番厄介なところらしい。だというのに、自ら擬態を解いて襲いかかってくるのだから、攻撃の厭らしさは半減している。


 擬態する魔物が多く獲物が探しにくいのも、山岳地帯が不人気な理由の一つなのだ。〈挑発の叫び〉が有効に機能すればその難点も克服できると睨んではいたが、まさに狙い通りの結果となった。


 寄ってくる岩鼠を全て仕留めたあと、サボテンもどきへと迫る。奴の移動能力は極めて低く、距離を詰めてしまえば攻撃を当てるのは容易い。とはいえ、物理にも魔法にもそれなりに耐えるので、ちょっと面倒な相手だ。棘があるので、ドレイン系のスキルを使うにも少し躊躇してしまう。まあ、棘を避けて触れればいいだけなので、ほんの少しの心理的な抵抗だが。


 岩の矢に関しては射出するときの仕草がわかりやすい。不意打ちならともかく、そうでなければ避けるのは容易だ。だが、耐久面は聞いていた通り厄介だった。エナジードレインとファイアボールを二回ずつ当てても、倒れる様子がない。コイツ相手の場合、白鉄の長剣の〈スラッシュ〉で攻撃した方が良いかもしれないな。


「お前、やるじゃないか!」


 そんな厄介な相手なのだが、良い点もある。それは奴の保有マナが大きいところだ。一度に吸えるマナは白猿並なのだが、数度吸えるので、サボテンもどき一体で100マナほど補給できるのだ。おかげでスキルドレインが使いやすい。サボテンもどき二体で一回スキルドレインを使うチャンスが得られる。


「まずは、手始めにお前からだ」


 実は奴の攻撃手段を見たときから目をつけていたのだ。岩の矢は物理攻撃のように見えるが、何もないところから生成していることを考えると魔法系のスキルなのではないかと当たりをつけている。だとしたら是非ともスキルを入手したいところだ。


 さて、一度目で入手できればいいが。まあ、別のスキルが出ても損はないのだ。どんどん試してみよう。

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