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15. 一般的な認識との違い

 アイリとレイナの提案は二人の独断だったらしい。ひとまず、パーティーメンバーと合流して、改めて話をしようということになった。


 残りのメンバーとは酒場で合流することになっていたらしく、二人の案内で狭い室内を移動する。そうして、たどり着いたのが店の角。ひとつのテーブルに三人の少年が座っていた。年頃はアイリたち同じ高校生くらいだ。元同級生だろう。


「お待たせ」

「ああ……って。誰だ、その男?」


 アイリが声をかけると、少年の一人が睨むように俺を見た。もう一人も言葉はないが同様だ。最後の少年はそんな二人を見てから、申し訳なさそうな顔で俺に目礼をよこした。


「俺はジンヤだ。今はソロで活動しているんだけど、そろそろパーティーに入りたくてね。それで君たちに声をかけたんだ」


 説明しようとするアイリを制して、自分から話を切り出す。彼女たちからの説明では、少々話がこじれそうな気がしたからだ。後々のことを考えると、歓迎されていないのは構わない。だが、情報を得るためにも、即座に追い払われるようなことは避けたいのだ。


「ふ~ん? まあ、俺たちは優秀なパーティーだからな。目の付け所は悪くなさそうだ」


 優秀云々なんて言葉は一言も口にしていないのだが、少年は勝手に解釈して顔をにやけさせている。何にせよ、即座に追い返されるようなことにならなくてホッとした。自己評価が高そうなところは少し不安になるが、本当に言葉通りの実力があるのかもしれない。その辺りの評価は保留にしておこう。


 パーティー加入前の面談――の前にアイリが少年たちの紹介をしてくれた。


 先ほどから一人で話している少年がリーダーのコウヘイ。戦闘職業は疾風戦士だ。たしか、ランクは☆2の近接戦闘向きの職業だったはず。普通の戦士よりも早さに優れて、手数で勝負する戦闘スタイルだ。


 無言で睨み付けてきた少年はキョウヤ。彼は弓使いだ。☆1だが、特化している分、弓を極めるのなら最適な職業だろう。


 最後の少年はリュウト。彼の戦闘職業は盗賊らしい。どうやら、少年たちは示し合わせて戦闘職業を決めたようだ。前の二人が戦闘担当で、彼が探索担当という分担だろう。


 ここに聖騎士のアイリと精霊術士のレイナが加わる。


 聖騎士は耐久力に優れた前衛職。いわゆる盾役だ。加えて、法術に適性があるので、治癒法術による回復も担える。防衛面で活躍する戦闘職業だ。


 精霊術士は、精霊の力を借りて高威力の魔法を放つことができる後衛攻撃職。とはいえ、精霊系統のスキルの取得には精霊との契約が必要なので、初期スキルとしては取れない。契約がまだなら、ほとんど普通の魔術師と変わらない。


 こうして見ると、なかなかバランスの取れたパーティーだ。あえて新規メンバーを加える必要もないように感じる。アイリとレイナは何を思って、俺を誘ったのだろうか。


 さて、紹介が終わり、いよいよ面談だ。コウヘイたちが一方的に判断するような形になりかけたが、アイリの一言でお互いに質問する形式に落ち着いた。情報収集という意味では非常にありがたい。


 真っ先に口を開いたのはコウヘイだ。


「で、アンタの戦闘職業は?」

「魔法戦士だな。前衛でも後衛でも必要に応じてこなせるから、役には立てると思う」

「はぁん。まあ、器用貧乏にならないといいけどな?」


 どこか嘲るような口調が少し気に触るが、言っていることは間違いではない。近接攻撃と魔法、どちらも扱える分、どちらも中途半端になりがちだ。片方に特化した戦闘職業に比べると、攻撃面で不利であることは否めない。


 だが、臨機応変に攻撃を切り替えられる器用さはパーティーでの活動でも武器になると思うが。何ごとも、やり方次第ではないだろうか。面倒なことになりそうなので、あえて指摘はしないが。


 代わりに、聞きたいことを聞いておこう。


「俺からも質問していいかな?」

「何だよ?」

「狩り場とレベルを教えて欲しいんだ」


 分不相応の狩り場に付いていっても、役に立たないどころか仲間を危険に晒す可能性がある。パーティーを組むならば事前に共有しておくべき情報だろう。


 というのは建前で、俺が知りたいのは彼らの強さだ。レベルはざっくりと戦闘能力を計る指標になる。また、狩り場の情報も合わせれば、毎日どのくらいの魔物を討伐しているかも推測できるだろう。能力比較をする上で重要な情報となるわけだ。


「いいぜ、教えてやる!」


 自分たちを優秀と評価するくらいだ。さぞかし自信があるのだろう。コウヘイは得意げな顔で宣言した。


「俺たちは全員レベル6だ! 主な狩り場は西の平原だな。ザックバルも倒せはするが、時間効率を考えるとあんまりだからな」


 レベル6、か。優秀というわりには、想像以上にレベルが低い。


 俺とのレベル差は4。だが、高レベルになるほどレベルは上げづらくなるので、戦闘経験の差は数値以上に大きいはず。もし、経験値という概念があるのなら、そちらでは数倍――ひょっとしたら十倍近い差がついている可能性もある。実際、俺がレベル6になったのは転生して三日目だ。


 果たして、彼らが優秀だというのは嘘なのか。この場での判断は出ないが……アイリやレイナの表情を見る限り、本人たちの認識ではそれほど的外れなことを言っているわけではなさそうだ。おそらく、転生一ヶ月の探索者としては平均以上の成果を出していると見て良いだろう。ということは、現時点でレベル10の俺がおかしいのか。


「んー、反応が鈍いな。一ヶ月でレベル6だぞ? わかってるのか? アンタのレベルは幾つなんだ」


 さあ、困った。何と答えよう。本当のレベルを告げるのは論外だが、妥当なレベルは幾つか。機嫌を取るために彼らよりも低めに申告してもいいが、それで役立たずと思われても困る。


「俺もレベル6だよ」


 結局、彼らと同レベルということにしておいた。パーティーを組んだときのことを考えた結果だ。


 ただでさえ、こちらのレベルが高いのに、低レベルを騙るのはさすがに無理があると思ったのだ。無論、ある程度は手を抜くつもりだが、戦闘中に細かい加減をするのは難しい。ボロが出て怪しまれるよりは、同レベルと申告しておいた方がよいという判断だ。それなら多少活躍したところで、魔物との相性が良かったという言い訳が通りやすい……はず。


「はぁ? アンタ、ソロなんだろ? それが俺たちと同じなんてありえないだろ。巫山戯(ふざけ)てんのか? システムカードを見せてみろよ」


 無難な選択……のつもりだったが、コウヘイは気に入らないらしい。彼からすれば俺はポッと出のソロ探索者。そんな奴と同レベルだと言われて、プライドが傷つけられたと感じているのかもしれない。


 とはいえ、こちらもレベルを騙ったと思われれば信頼に関わる。今更、撤回するつもりはない。


 彼の言葉に従い、システムカードを簡易表示に切り替えて見せてやった。無論、〈誤魔化す〉によってレベルも偽装済みだ。結果として、偽装だらけで何一つ真実のない情報になってしまったが。



名  前:ジンヤ(偽装)

戦闘職業:魔法戦士(偽装)

レベル:6(偽装)



「どうだ? レベル6だろ?」

「嘘だ! アンタ、俺たちと同じ時期に転生したんだろ!? それがソロでレベル6……?」


 ステータスを見たコウヘイは大袈裟なほど驚いた。いや、彼だけじゃなく、アイリたちも目を見開いている。その上、コウヘイが周囲にも聞こえるような大声で叫んだせいで、周りの探索者の耳目も集めてしまったようだ。


 勝手に人のレベルを喧伝するんじゃない……と言いたいところだが、どうせ偽装だしな。まあ、それはいい。


 問題は、周囲の反応だ。レベルを知られただけにしてはざわめきが大きい。漏れ聞こえる声を拾ってみれば、そこにあるのは驚きや嫉妬。どうやら、一ヶ月でレベル6というのは、コウヘイの言葉通り、かなり優秀な部類らしい。それをソロで成し遂げた探索者が俺だというわけだ。


 これはやっちゃいましたかね……。

 いや、実際にはもっとレベルが高いんだが。

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