10. ◆怪人誕生のきっかけ
御使い男との邂逅からしばらく経ったが、俺はまだ森の中にいた。取得したスキルを試すという意味合いもあるが、本命はダンジョン探索だ。
エルネマインにおいて、ダンジョンと呼ばれるのは洞窟や地下迷宮ばかりではない。創造エネルギーが湧き出しやすい場所をダンジョンと称しているそうだ。
ダンジョンで湧き出した創造エネルギーは、多くが魔物として実体化する。だが、その一部は宝箱となることもあるそうだ。
つまり、魔物も宝箱も根源は同じ物。だとすれば、魔物が多い場所ほど宝箱が出現する可能性が高いのではないだろうか。
そこで俺は考えたわけだ。白猿の集団と遭遇したからには、この近くに宝箱が出現しているのではないか、と。
「お、あった!」
推測が正しかったのか。はたまた、単なる偶然か。あちこち歩き回った甲斐あって、巨木の根元で、ついに宝箱を見つけた。
森の中の宝箱。ゲームではよくあるシチュエーションだが、リアルで遭遇すると違和感があるだろうなと思っていた。だが、実際に目の前にすると、テンションが上がって、そんなことどうでもよくなるらしい。ついつい駆け寄って、宝箱に手をかけてしまった。
「おっと。宝箱には罠が仕掛けられている可能性があるんだったか」
勢いで開けそうになったが、ぎりぎりの所で思いとどまる。ダンジョン内の宝箱には罠があったり鍵が仕掛けられたりと、一筋縄ではいかないらしい。
それらを無効化するのは、基本的に盗賊の役割だ。該当スキルがあれば盗賊でなくとも対処可能なのだが、盗賊の職業特性である【盗賊技能+++】は解錠や罠解除の確率を大幅に向上させるらしい。俺のバグ盗賊にも、本職には二段階ほど劣るが【盗賊技能+】がある。スキルも取得済みなので、どうにか安全に中身を取り出せるだろう。
「うーん、罠はない……か? 鍵も掛かってなさそうだ」
初めての解錠作業なので少々自信は無いが、そう結論づける。
なかなか運が良い。罠の解除や解錠には専用のツールキットが必要なので、罠があったなら、それなりにデカい宝箱を抱えて歩く羽目になるところだった。
「さて、何が入ってる――……うっ!」
宝箱を開けた瞬間、凄い早さで矢が飛んでくる。完全に油断していたせいで、避けることもできない。矢は脇腹に突き刺さり、強烈な痛みをもたらした。
「普通に痛いな。痛覚耐性があるはずだが、耐性であって軽減ではないってことか……」
個人特性の【痛覚耐性++】を取得したおかげで思考はクリアだ。だが、痛みそのものを軽くしてくれるわけではないらしい。【頑強+】で多少はダメージが軽減されているはずだが、痛いものは痛い。
「しかも、これは毒……か?」
痛みに遅れて倦怠感が襲ってきた。ちょっと重い風邪程度に留まっているのは、【状態異常耐性+++】のおかげか。
システムカードでステータスを見ると、毒状態になっていることが確認できた。カウントが表示されており、それが1減る度に生命の現在値が2減る。カウントの初期値はおそらく20だ。カウントが0になっても、ダメージの累計は40。このまま放っておいても死ぬことはない。
「助かった。魔物を見つけて、エナジードレインで回復すれば問題ないな」
現状を確認して、ひと安心できた。個人特性の選択も悪くなかったらしい。それを確認できたのは、悪くない。
とはいえ、罠を見落としてしまったことは不安材料だ。もし、単独で活動するなら、自分で解錠作業ができなければ効率が悪い。街まで運べば、代行してくれるサービスもあるらしいが、金は掛かるし、持ち運ぶのも大変だ。
「ま、判断はスキルレベルを上げてから、か」
まだ、罠解除のスキルレベルは1。見切りをつけるには早い段階だ。補正特性もあるので、スキルが成長すればそれなりに上手く解錠できるのではないかと見込んでいる。
「さて、肝心の中身は、っと」
気を取り直して、地面に落ちているはずの中身を探す。
ダンジョンの宝箱は、開けた瞬間に光の粒になって消えるのだ。その代わりに、中身がドロップする。この辺りの現象は魔物を倒したときにそっくりだ。もしかしたら、宝箱の見た目をした魔物なのかもしれない。
「これは……服と仮面?」
地面に転がっていたのは、怪しげな黒い服と不気味な白い仮面。おそらくは装備アイテムだ。
「ええと、これでいいのか?」
呟きながら、システムカードをアイテムにかざす。これで簡易的な情報が取得できるそうだ。詳細を知るには鑑定スキルが必要だが、概要を知るには十分らしい。
【宵闇の外套】
◆分類◆
防具・体装備(軽装)
◆防御性能◆
物理防御:E 魔法防御:E
◆特殊効果
闇魔法の威力が微かに上昇する
夜間や暗所で気配を察知されづらくなる
【怪人の白面】
◆分類◆
防具・頭装備(軽装)
◆防御性能◆
魔法防御:E
◆特殊効果
精神的な状態異常に耐性を与える
どちらもマイナス効果はないらしい。装備しても問題がなさそうだ。
「とりあえず装備してみたが、かなり怪しい格好になっているんだろうな……」
仮面は口元以外を覆うタイプなので顔を隠すにはちょうどいい。が、ただでさえ怪しげなデザインであるのに、黒い外套と組み合わせることで怪しさが倍増する。もし、元の世界で遭遇したならば、見た目だけで不審者と断定されても文句は言えないスタイルだ。エルネマインならば、ほとんどの転生者は装備アイテムだと察してくれるだろうが、悪目立ちするのは間違いない。
「だが、装備の性能は悪くないんだよな」
防御性能のE評価に関しては、比較対象がないので判断しづらい。が、戦闘職業と同じくS~Fの範囲ならば最低ランクよりは一つ上。最初の装備としては、悪くないはずだ。特殊効果までついていることを考慮すると、おそらく今の段階ではレア装備ではないだろうか。
当然ながら、有用な装備を使わないなんて選択肢はないので、見た目については諦めるしかない。しばらくは人の目が気になるかもしれないが、すぐに気にならなくなるはず。
「さて、どうするか」
装備も手に入ったことだし、ダンジョン探索を続行したい気持ちもある。だが、すでに日が傾きはじめた。直に、周囲は闇に包まれることだろう。明かりの用意もないので、さすがに夜の探索は厳しいように思えた。
「仕方がない。街に行ってみるか」
よく考えれば、転生してからほぼずっと森の中だ。食事すらしていない。気付いた途端、腹の虫が鳴き出した。今までは気にもならなかったというのに、一度意識すると空腹は耐えがたい。さっさと黙らせるためにも、俺はアースリルの街へと足を向けた。
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名 前:ミツカイ・セプテト
戦闘職業:盗賊
レベル:3
生命: 134/ 134
マナ: 125/ 125
筋力: 62 魔力: 62
体力: 52 精神: 53
器用: 77 抗力: 52
敏捷: 78 幸運: 77




