謎の女子高生
今回で2話目になります
けたたましくアラームが鳴る。
箱根駅伝が終わった1月4日。
時刻は5時25分。
重い体をゆっくり起こす。
身支度をしてグラウンドへ向かう。
寮はなく、僕は一人暮らしをしている。
僕の住むアパートからグラウンドまでは歩いて10分ほどだ。
集合が終わると、体操をして朝練習のジョグをする。
今日も体はだるく、呼吸が入ってこない。
通常営業だ。
今日も他とは反対方向に向かってダラダラ走る。
線路の高架下を渡り、住宅街への脇道に入る。
住宅街は小高い丘の上にある。
ウォークに切り替えて、歩き始める。
しばらく坂を上った先には、ベンチや遊具の置かれた公園がある。
現在時刻は6時。
公園には街灯は少なく薄暗い。
しかし、目を凝らしてみるとそこには先客がいた。
近づいてみると制服を着た女子高生がスクール鞄を抱きながらベンチで寝ていた。
どうせ今日もさぼるつもりでいた僕は時間つぶしに彼女に声をかけた。
「おはようございまーす。そこの女子高生さーん。」
反応はない。
しかし、すー、と小さな寝息は聞こえてきた。
どうやら生きているようだ。
しばらく見ていると、
「んー…。」
と言いながら、彼女はゆっくり瞼を開ける。
寝ぼけている彼女をしばらく見ていると、彼女はいきなり、きゃーと叫び声をあげた。
僕はその声の大きさに転びそうになる。
ここは住宅街にある公園。
大声を出されたら間違いなく大変なことになる。
僕は思わず逃げ出そうとする。
その時、
「君、ちょっと待ってくれる?」
と呼び止められた。
住民が出てくる前に逃げようと思っていた僕は、その呼びかけに従ってしまった。
そして、
「心配いらないわよ。」
彼女は、誰も出てこないと言った。
僕は思った。
あの声の大きさに気付かないわけがないと。
しかし、いつまで経っても誰も現れなかった。
「それって、どういうことなの?」
と僕は聞いた。
「君は私のこと見えてるんだね。」
「え?」
「私のこと見えるのは君が初めてだよ。」
「えっ…、ちょ…どいうこと?」
彼女は大きく深呼吸すると、
「私の名前は未央。佐倉未央。」
と彼女は照れ笑いをしながら自己紹介した。
そして、
「実は私もう死んでるんだ。だから誰にも私を認識できない。姿も声も。」
その言葉に僕は言葉が出なかった。
「次、君の番だよ。」
と未央は言った。
動揺しながらも、僕はゆっくり話した。
「僕の名前は、吉岡秀…ん?どうした?」
僕は、未央の様子が気になった。
「ううん。何でもないよ。」
と言うので話を続ける。
大学で陸上の長距離をしていること、喘息の影響でチームから孤立し自暴自棄になっていること、箱根駅伝をあきらめようとしていること。
そして、陸上をやめようとしていることを。
未央は静かに話を聞いてくれた。
「話せて少し楽になれたよ。今日はありがとう。また!」
と感謝を述べ、戻ろうとした時、
「私と一緒に箱根駅伝目指さない?」
と未央は提案してきた。
「え?どいうこと?」
「私、陸上やってたの。だからサポートならできると思う。」
と未央は言った。
でも、うん、とは言えなかった。
箱根駅伝はとても出るのが難しいから。
体調も安定せず練習を積めるかもわからないから。
今僕は、終わりの見えない真っ暗なトンネルの中を彷徨っているからー。
「考えてみるよ…。」
と僕は答えた。
でも、答えは決まっている。
(そんなの無理だ)
と。
「また明日ね。」
と未央は手を振っている。
僕もそれに手を振り返して公園を後にした。
本業との関係で投稿が開きます




