大学2年の箱根駅伝
小説書いてみました。
「僕も箱根駅伝、走りたい!」
小学生の僕はそう言った。
父は頑張れと僕の頭に手を置いてくれたことを覚えている。
10歳の時に書いた、20歳の自分に向けた手紙。卒業文集ー。
陸上長距離を始めた小学校の時から、その夢に向かって努力していた。
しかし、いつからこの言葉が、ストレスに感じるようになったのだろうか。
今の自分には、そんなのどうでもよくなっていた。
今の僕は、決められたことをただやるだけの無気力な日々を送っていた。
しかし、季節は巡る。
今年もこの時期がやってきた。
1月2日。
今の自分にとっては一番嫌いな季節といってもいい。
陸上競技部に所属している僕は、走路員として現地に向かう。
連絡事項を見て、持ち物、集合時間と場所をよく確認する。
場所は小田原で第4中継所まで残り4kmほどの地点になる。
東海道線に乗り、小田原駅には集合時間よりも30分ほど早く到着した。
とりあえず地図アプリを起動し、集合場所に向かう。
内心、嫌だなと思いながら。
沿道には、観客でごった返していた。
今回が2回目だったが、この人の量には圧倒される。
その時、近くの中継の声が耳に届く。
一瞬ドキッとして鳥肌が立つ。
「今、東京学院大学が4区当日変更、神田祐真2年生にタスキが渡しました!」
毎年おなじみのアナウンサーが興奮気味の声で実況する。
当日変更の情報を見ないで来たため彼が出走していることに焦った。
神田祐真。
僕の高校のチームメイトだった。
同期の活躍を応援したい反面、素直に喜べない自分がいる。
彼は僕の目標を簡単に奪っていく。
高校時代の都大路も、今回の箱根駅伝も。
いわゆる嫉妬だ。
あと1時間もしないうちにここを通過する。
逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。
人は増えていく。
係員の方の指示で、僕は歩道の車道側に立つ。
観客が車道に出るのを防ぐためだ。
腕を広げ、歩道側を向く。
しばらくするとトップの選手がやってくる。
応援の声は大きくなる。
足音と息遣いが聞こえてきて、すぐに遠のいていく。
何人か選手が通過して、しばらくすると
「東京学院大学頑張れー!」
という声が聞こえた。
その直後、車道側を向いていた僕の目に見覚えのある選手が走ってきた。
彼は僕に見向きもせず走り去っていった。
彼は区間14位でタスキを渡したことを後にSNSで知った。
何とも言えない気持ちだ。
ふと思ってしまった。
陸上やめようかな、と。




