第17話 検問所突破
翌六月一日の朝「連盟」の各部隊が見送る中、まず女性・子供・老人達がバスやワゴンなどに乗って出発する。榛名山の女性リーダーも大型バスに乗って出発する。別れの言葉はない。ワタルにはバスが林で見えなくなる曲がり角で、榛名山の女性リーダーが大きく手を振るのが見えた。
次に、北アルプス部隊三百人が多様な車やバイクに乗り込み富山方面へ出発して行く。続いて、浅間山の二つの中隊三百人も多様な車やバイクで先発の山崎隊、後発の藤野隊に分かれ、出来る限り分散して横須賀基地へ向けて出発する。隊員達はそれぞれ観光客のような私服を着ている。ワタルとオダも、苗場山部隊の平井隊員が運転する中型トラックの荷台に運搬ロボットとともに乗り込み出発する。オダと二人の中隊長、山崎、藤野は耳にかけたレシーバーで連絡を取り合っている。
横須賀基地へ向かう浅間山部隊の車列は、湯の平高原から比較的なだらかな坂の牙山峠を越え川沿いに下って行く。浅間山キャンプ場から、C国人の多い軽井沢を避けて小諸市に出る。東西に走る上信越自動車道を超えて、佐久市から、八が岳高原線と呼ばれる舗装道を走行する。南アルプスの八が岳と横尾山の間の峠を超えて甲州街道に入ると、西方向に南アルプス、そして正面に山頂に雪の残る富士山が美しい姿を見せ始める。ワタルは初めて見る本物の富士山に感動している。
甲府市内を走行していると、ヒッチハイクをしている四人の派手めの服を着た女性達がいる。よく見ると先刻浅間山から出発していった苗場山の女性達である事に気付く。ひとりが例のアブナイ多機能メガネをかけていて、アニメのアラレちゃんの様に見える。
いち早く女性達に気付いた運転役の平井隊員が、トラックを止めた。
「どうしたんですか?」と荷台から下りてきたオダが声をかける。
「私達も横須賀に連れてってよ!」
「えっ、どういう事ですか?」
「男ばかりよりも、女もいた方がC国軍に疑われないじゃない!それに、このメガネも役に立つと思って」
「それはそうだけど・・・中隊長に連絡してみる」とオダが答え、あわててマイクとレシーバーを耳にかけ、二人の中隊長と交信を始める。
「あのー、苗場山の女性メンバー4人がここにいらしてですね、一緒に横須賀に行くとおっしゃってるんですが・・・」
二人の中隊長との相談の結果、この苗場山から来た四人の女性達を連れていく事になった。トラックの荷台に乗せるわけにもいかず、後からやって来た隊員たちの乗った二台の車に、事情を話して同乗させることになった。
ワタルとオダと運搬ロボットを乗せた中型トラックは、富士河口湖を回り込んで、昼過ぎに、浅間山部隊の通過ポイント山中湖畔の富士吉田にあるドライブインの大きな駐車場に到着した。先発の山崎隊の隊員たちは既に到着していた。ドライブインの中には数人のC国兵も見受けるが、窓際の席でふんぞり返っている。辺りを見回している様子もない。
駐車場に止めたトラックの中でオダは耳にかけたマイクとレシーバーで二人の中隊長と交信を始めた。
神奈川県境には中央道を含め、どの国道にもC国軍の検問所がある。ここで国道を避けてわき道に入ると地雷原になっており抜けられなくなる。相談の結果、検問所を突破するしかないが、部隊が攻撃を仕掛けて強行突破する作戦よりも、C国軍の検問所に女性達が押しかけ油断させて、あの多機能メガネで眠らせ、その間に部隊が攻撃・突破する作戦を実施する事になった。
駐車場の隅で、女性達に検問所突破作戦への協力を依頼すると、
「分かった!そのつもりで来てるよ!私達もC国軍に一泡吹かせたい、っていうか眠らせたい!」と、女性達はすぐに了解した。
すでに渡してあるオダのメガネに加えて、ワタルのメガネも女性達に進呈する事にした。
女性たち二人がかけると、二人のアラレちゃんがいるような感じになった。ふざけた事を言っている場合ではないので、ワタルもオダも、そんな事は言い出さなかった。
ドライブインに到着していた先発隊の山崎隊長が女性達と段取りの相談をした後、到着した部隊の車から一台の黒色の中国製高級車を選び、運転手の隊員と四名の女性を乗せ出発させる。続いて二つの中隊の隊員達が、食事休憩後のゴルフやバイクツアーの観光客の様に振舞いながら、次々と出発していく。ここからは南東方向へ走行し御殿場から箱根山の北にあるC国軍の検問所へ向かい、検問所突破作戦を決行する事になる。
先発隊が箱根山の北の上りの国道を東へ進んで行くと、神奈川の県境を超えた辺りの峠付近にC国軍の検問所が見えてくる。頑丈なコンクリート製の塀と鉄のゲートで閉ざされ、緑色軍服のC国軍の兵が十人程、銃を構えている。奥にもかまぼこ型の兵舎があり、そこにも多くのC国兵がいる様子だ。検問所のC国兵が何かを叫んでいる。
検問所突破作戦が開始される。まず、苗場山の四人の女性達が乗った黒色の中国製高級車が検問所に悠々と近づいていく。車から苗場山の四人の女性達が降りて、何か怒っている様子でC国語で何か叫びながら検問所のC国兵に近づいていく。C国兵は表情を和らげ、銃を肩にかけ、ゲートを開けて四人の女性に近づいて来る。女性達はC国兵になれなれしく、腕をつかんだり抱きついたりしながら大声で笑いだす。兵舎の中からも数名のC国兵が出てきて、にやにやしながら女性達を取り囲んだ。四人の女性は二手に分かれ、一方はゲートの奥の方へ進んでいく。C国兵も二手に分かれ、それぞれ二人の女性を取り囲ん
で談笑を始めた。それから一分後、十数名のC国兵は次々と倒れていき、最後の一人も銃を一発撃って倒れこんだ。毒針攻撃は成功したらしい。
C国兵から見えない後方で待機していた山崎部隊が、直ちに車列をC国軍の検問所前に急行させ、車から降りて鉄製のゲートを押し開け、一斉に検問所内に突入して行く。奥にある兵舎の中からC国兵が飛び出してくる。山崎部隊が一斉に銃を発砲する。数名のC国兵が倒れる。間髪おかず、隊員の構えたバズーカがC国軍の兵舎に向けて撃ち込まれ爆破粉砕された。躊躇する事なく、山崎部隊の隊員達は次々と車に乗り込み、神奈川県内へ向かって走行を始める。続いて、藤野部隊もスピードを上げて通過していく。検問所の戦闘は、数分で終了していた。
ワタル達のトラックが検問所に到着すると、部隊の車に乗り遅れた苗場山の四人の女性達が慌てた様子で駆け寄ってくる。乗ってもらう他ないので、四人の女性達を荷台に引き上げて出発する。トラックは浅間山部隊を追って、神奈川県内へと走り出した。




