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8時10分前の罠 *chatGPT使用

作者: ほほ

最近流行りの「8時10分前」をお題に書いてもらうようにチャットGPTにお願いしました。すごいね

昨夜のことを、何度も反芻している。

あのとき、自分でも驚くほど冷静だった。


手袋を嵌め、刃物を握った右手は、震えすらなかった。


すべては、計画通りだった。


唯一、“時間”だけが不安だった。


だから、うまく仕込んでおいた。

この街の誰もが「8時10分前」という言葉に惑うことを、知っていたから。


**


俺があの喫茶店に入ったのは、夜の7時20分ごろだった。


窓際の席に座って、カフェラテを頼み、時計をちらりと見る。


「あと30分」


タイミングは完璧だ。

コートの内ポケットには、よく研がれた折りたたみナイフがある。


被害者である古本屋の店主・菊川は、毎晩7時半過ぎに店の裏でタバコを吸う。

それが日課だと知ったのは、彼のSNSに書かれていた何気ない投稿だった。


**


7時45分、俺は席を立った。

店員に一言、言い残す。


「ちょっと裏で電話します。8時10分前くらいには戻ると思います。」


言いながら、スマホの電源を切った。

証拠は、残さない。


喫茶店の裏手から細い通りを抜けて、古本屋の裏口へ向かう。


暗がりの中、彼は一人でタバコを咥えていた。

俺の足音に気づいたが、特に警戒はしていなかった。


「……あんたか。何の用だ?」


答える前に、俺はナイフを突き立てた。


一瞬、息が詰まる音。

彼の手からタバコが落ちる。


やがて彼は、崩れるように地面に倒れた。


時計を見る。7時48分。


完璧だ。


**


そのまま裏道を抜けて、喫茶店の正面から店に戻った。

入店時、スマホの電源を入れ、そっと時刻を確認する。


8時6分。


カフェラテは、ほんのり冷えていた。


俺は何気なく窓の外を見る。

向かいの道を、若い男がぼんやり突っ立っていた。


一瞬、目が合った気がしたが、構わない。

彼が何を見ていたとしても——


「“8時10分前”に見た人がいる」

それで十分だ。


**


その日の夜遅く、俺は「目撃者」として警察に呼ばれた。


刑事は俺に尋ねた。


「被害者の周囲で、何か怪しい人物を見ませんでしたか?」


俺は、慎重に言葉を選びながら答える。


「ええ、“8時10分前くらい”に、向かいの通りでスーツ姿の人が通っていくのを見ました。何か急いでいるような様子でした。」


刑事は「8時10分前」という言葉に反応し、すぐに時間を確認してきた。


「それは、“7時50分”という意味でおっしゃってますか?」


俺は軽く笑って言う。


「はい、8時の10分前という意味です。」


刑事は納得した顔でメモを取り、「なるほど」とうなずいた。


俺の中では、「“8時10分前”=7時50分」だと最初から思っていた。

だが、今の若者は違う。

「8時10分の数分前」、つまり8時7分とか8時8分のつもりで使う人がいる。


その“勘違い”が、俺の盾になる。


俺が店を出たのは7時45分、戻ったのは8時6分。

つまり、“8時の10分前”に俺が不在だったことを、店員も、客も、きちんと覚えてくれている。


俺はその時間にアリバイがないと自ら証言した。

だが、被害者が殺されたのは“8時ごろ”だと推定されている。


そして——

「俺が見た“怪しい男”は8時10分前ごろ」と、もう一人の男が証言している。


彼は**「8時10分前」=「8時7分ごろ」のつもりで話した。

だが警察はそれを「7時50分」**と受け取り、事件直後の目撃だと勘違いした。


結果、“真犯人が逃げた時刻”と“目撃情報”の時間がずれ、

犯人像はまったくの別人として浮かび上がる。


——俺の狙い通りだ。


**


数日後、犯人の捜索が難航しているという報道を見た。

現場の時間帯に目撃された“スーツの男”は、まだ見つかっていないらしい。


きっと彼は、俺の作り出した「幽霊」だ。

存在しない男が、今も誰かの記憶に紛れて、虚空を歩いている。


言葉一つで、人は騙せる。


たとえば——「8時10分前」なんて言葉で。

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