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2.不思議な参拝人

 その言葉はさっきの鈴のようにうるさくて、耳にガンガン響いた。同時に、小鳥達がバタバタと飛び立つ音も聞こえてくる。――人間がどんな願い事をするのかは動物達や他の神に聞くことがあった。大抵は無病息災や学業成就だったりするらしい。ぼくと親しい神のとこだったら良縁祈願かな。


 だからこそ、いやそうでなくても、この子の願いは全くの予想外だった。ぼくが知らないだけなのかこの子が変わってるのか。……いや、三つ編みの子も驚いてるからあの子が変わってるのだろう。


 見ると、三つ編みの子はさっきまでなぜか合わせていた手を放し、空中で制止させてしまっている。


「メイちゃん、何その願い」


 メイ、と呼ばれた女の子はその問いが理解できていないのか、キョトンと首を傾げている。


「いや、神様と仲良くなりたいなんて変わったお願いだなって」


 やっぱり人間の中でも特殊な願いらしい。


「そう? 誰かと仲良くなるのは良いことじゃないの?」

「そうだけど、神様に向かっては初めて聞いたよ」


 そうかなあ、と腑抜けた声で答える不思議な子。せっかくだから叶えてやろうって思ったけど、この願いはさすがに叶えられない。だって神と人間達は直接干渉出来ないから。今だってあの参拝人達はぼくを見えてないし、何言っても聞こえない。


 というか、誰かと仲良くなりたいって願いなら縁結びの神のところに行けばいいのに。なんでわざわざここへ来たんだろう。こんな狐の神がいること以外何も分からない様な神社に。ちょっと前の人間達は神社の種類に詳しいようだったけど、最近は語られなくなったりでもしてるのかな。


 そうこう考えているうちに、今度は三つ編みの子が、また信じられないような言葉を発した。


「それにさ、メイちゃん」


 三つ編みの子はさっきの驚いた顔から、呆れたような不安そうな顔をしてまた口を開く。


「口に出すと願い、叶わないよ」

「は?」


 実際に音にしたかは覚えてないが、思わずそういうことを口に出してしまったのだけは覚えてる。


「えー! そうなの!?」

「うん。よく言うよ」


 そんなことぼくも初めて聞いた。三つ編みの子も不思議な子だったという可能性もあるけど、メイという子よりはしっかりしてそうだし、「よく言う」のが本当なら、人間はそんなことを信じてるのか。何を信じるかってのは自由だと思うし面白そうだけど、ぼく達神は生憎さとり妖怪のような力を持ち合わせてない。 (もちろん信仰によって出来るやつもたまにいる)


 なるほど、通りで「人間の願いは叶えづらい」って言われる訳だ。さっきのお辞儀や拍手といい、人間というのはぼくの思うのよりも一層、奇妙らしい。


 あーあ、この調子じゃ三つ編みの子の願いは分からなそうだ。赤リボンの子の願いも意味が分からないし。良い暇つぶしになるかと思ったんだけどな。


 奇妙ではあっても何もできないから暇つぶしにはならない。その時点で、ぼくの人間に対する興味はかなり薄れていた。今はメイって人間が騒がしくて眠れないけど、あの2人が帰ったら寝よう。それでここへ来た他神に自慢する為の文言でも考えてみようか。


 暫くすると、飽きたのか人間の女の子2人も帰るみたい。再び礼をした後、ようやく踵を返していた。やっぱり変なの。そんな2人をぼんやりと眺めながら、ぼくは再び縁側に寝転んだ。


「そういえば、なんでメイちゃんはあのお願いにしたの?」

「なんでって?」

「仲良くしたいなら、学校の友達じゃなくても沢山いるじゃない。絵本に出てくるお姫様だって小鳥とか小動物だよ? なのになんで神様?」

「えー? だってさ、神様って――」


 その先は聞こえなかった。その時吹いた心地いい風にかき消されてしまったのか、ぼくが睡魔に負けてしまったのかは覚えてない。メイは、何で神と仲良くなりたがったんだろう。

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