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原初のネクロマンサー〜いかにして死霊術は生まれ、いかにして魔王は生まれたか〜  作者: 犬型大


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父の知3

「よし、いくよ、クリャウ!」


「あっ、まって! これだけ食べて……」


 先に食べ終えたミューナが立ち上がる。

 クリャウは残った料理を慌てて口に書き込む。


「うふふ、賑やかでいいわね」


「少しはみんなにも馴染んできたようだしな。ただミューナとの距離が近くはないか?」


「いいじゃないの」


「むぐぐ……」


「はーやーくー!」


「むぐっ、ごちそうさまでした!」


 料理を飲み込んでクリャウとミューナは家を出ていく。

 その様子をヴェールとトゥーラは微笑ましく見ていた。


 家を出た二人は裏に回り込んでご祈祷場に向かった。


「おば……師匠ー!」


 ご祈祷場にはイレヲラがいる。

 そしてクシャアンを始めとしてイッチー、ニッチーの三体のスケルトンのご祈祷場にいた。


 クリャウの支配下にあって他の人を傷つけることはないけれども、やはりそこら辺にスケルトンがいるとみんなが不安に思ってしまう。

 だから人目につかないご祈祷場が待機場所ともなっていた。


 イレヲラはミューナの祖母であるが、今は魂視者としての師匠である。

 魂視者としての勉強をするときは師匠と呼ばなきゃならないのだ。


「ふむ、よく来たね。それじゃあ始めようか」


 ミューナもミューナで魂視者としての修行がある。

 イレヲラの横に立ったミューナは大きく息を吐き出すと体の力を抜いてじっとスケルトンたちのことを見る。


 魂視者としての術を使えるようになることも必要だが、魂視者にとって最も重要なことは魂を見る目である。

 ミューナの目には魂がぼんやりと見えていた。


 イレヲラまでになるともっとはっきりと魂を見られるらしく、場所や条件によっては人としての姿すらも捉えられる。

 ただまだ未熟なミューナではスケルトンの骨の胸の辺りにぼんやりとしたものがある程度にしか見えていない。


 ただクリャウが近づくと魂たちはざわつく。

 クシャアンたちスケルトンの魂だけではなく、そこらを飛んでいることがある野良の魂もクリャウの近くにあると不安定な形がより不安定になるのだ。


 なぜざわついているのかミューナには分からない。

 イレヲラに聞いてみたことがあるのだけど、笑顔を浮かべてそれが分かれば一人前だねと答えられた。


「いくよ!」


 クリャウが黒い魔力を放つ。

 最初の頃はただ全身から放出するだけだった魔力もクシャアンの教えでコントロールすることを覚えていた。


 黒い魔力は他の魔力と違って魔力そのものがもう変化後のような性質を持っている。

 ただの魔力、あるいは火や風といった形の無いものではなく水などの形あるもののように黒い魔力は扱うのが正解だった。


 本当なら手からだけ魔力を放出したいのだけどまだまだ未熟で全身からも魔力は放出されていて、ミューナから見るとクリャウはうっすら黒く染まっている。

 それでも最初の頃よりもだいぶマシになった。


 魔力を放出しろと言われて放出したらただの黒い塊が黒い魔力を垂れ流しているだけだったのだから。


「お父さんに……」


 クリャウがクシャアンに向けて手を伸ばす。

 黒く渦巻く魔力が伸びていってクシャアンの体にまとわれていく。


「魂が喜びを感じている」


 クリャウは黒い魔力がクシャアンに吸収されていくところを見ているが、ミューナは黒い魔力を得て起こる魂の変化を見ていた。

 吸収された魔力は魂に取り込まれている。


 淡く光を放っていた魂の輝きが強くなっていく。

 もうこれ以上取り込めないところまで来るとクシャアンは黒い魔力にまとわれる。


「むむむ……」


 ミューナは目を細める。

 黒い魔力を得て魂の形は少しハッキリとする。


 もっと頑張ればクシャアンの顔が見えるようになるのではないかと目を凝らしてみるけれどそれでも見えない。

 一度顔を見てみたいものだと思うのだけど、まだまだ修行が必要そうだ。


「だいぶよくなってきたようだね」


 強化すると一口に言ってもただ魔力を与えればいいのでもない。

 吸収できる魔力には限界というものがある。


 各々の魂には格というものがあって、格によって強化できる上限があるのだ。

 魔力の無駄を避けるためには上限ギリギリで魔力を送る必要がある。


 上限を見抜き、上限の魔力を送れるようになって初めて完璧な強化だといえる。

 さらにはクリャウからクシャアンに繋がるまでに伸びた魔力も無駄になっている。


 理想は魔力だけを放って与えることであり、継続的に強化し続ける場合でも極力細く魔力を繋ぐことが大事となってくる。

 全身から魔力を放ち、上限を遥かに超えた魔力を黒い霧のように送りつけて強化していた頃に比べればかなりマシになった。


 クシャアン曰くまだ未熟ではあるけれど目に見えて良くなっているのでイレヲラは優しくクリャウを褒める。

 

「イッチーさんとニッチーさんにも」


 無駄はあるけれどクシャアンに強化したぐらいではクリャウの魔力は尽きない。

 今度はイッチーとニッチーにも強化のために魔力を送る。


 ちなみにイレヲラによるとイッチーは女性で、ニッチーは男性の魂であるようだ。


「慎重に……」

 

 右手と左手それぞれから魔力を飛ばす。

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