色々頑張ろう1
「なんだか……俺泣いてばっかりだね……」
最初のスケルトンがクシャアンであることが分かった。
なんだかミューナには泣き顔ばかり見せている気がするとクリャウは顔を赤くした。
「ううん、そんなことないよ。泣いてばかりじゃなくて、その……カッコいいところとかもいっぱい、あったよ」
確かに泣いているような印象もあるけれどクリャウはミューナのことを助けてくれた。
水賊とも戦ったし泣いてばかりなんてことはない。
ほんのりと頬を赤くするミューナを見てクリャウも嬉しそうに笑う。
「それで……俺はどうしたらいいんだろうね?」
死の王とやらになるために強くならなきゃいけないということは分かる。
ただ死の王がどんなものなのかも分からないし、どうやって強くなったらいいのかも分からない。
色々あったし少し休みなさいと言われてミューナの家でのんびりとしていたけれどもいい加減何かしなきゃとクリャウも思った。
一応何もしてないわけじゃない。
体力ぐらいつけなきゃと思って朝走ったりもしている。
相変わらず周りの目は冷たいけど最初の頃に比べて少しだけ柔らかくなったと感じた。
「んー……分かんない」
ミューナはわざとらしく首を傾げる。
クリャウがどうしたらいいのかはミューナにも分かっていない。
「おばあちゃんもなんだかスケルトン……クリャウのお父さんと話してるみたいだしね」
最初のスケルトンがクリャウの父親であるクシャアンだと分かって以来イレヲラは家の裏にあるご祈祷場と呼ばれる小屋にクシャアンを連れて行って何かをしていた。
クリャウとミューナで様子を覗いたこともあったけど、クリャウから見た時にイレヲラはブツブツと何かを言っていて何をしているのか分からなかった。
ミューナからしてみるとクシャアンの魂の揺れ動くさまが見えたので何か話してるのだろうと思った。
「クリャウが王様になったら……私はお妃様かな」
「えっ、なんて?」
「な、何でもない!」
ミューナは顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
誓いの時にクリャウがミューナと婚姻するという条件がつけられていた。
ミューナも誓いの言葉を聞いていたのであり、その言葉を聞いた時には驚いた。
クリャウがフェデリオに勝ったことでそこはうやむやになっていたが、ミューナは忘れていなかった。
フェデリオは嫌だけどクリャウなら悪くないと思ってしまう自分がいる。
そのうちその話が出るのかななんて少しだけモヤモヤしていたりもする。
でも自分から言えば結婚したいみたいだし、もしクリャウにその気がなかったらと怖くて口にできない。
「クリャウ様、いるかい?」
「いますよ」
控えめに部屋のドアがノックされてイレヲラが入ってきた。
イレヲラの後ろにはクシャアンがいる。
一応クシャアンとしての意識はわずかにあるらしいけど、普段はほとんど顔を出さずクリャウに従うただのスケルトン状態となっている。
「今後どうするかについて話し合おうと思ってね」
「今後……どうするか」
「そうさね。大きな目標はある。クリャウ様が強くなり、死の王として私たちを導いてくれるようにすること。だがそれはあまりにも抽象的だった」
具体的に死の王が何であるのか聞かれても誰も分からない。
目指すといってもどう目指すのかも難しい。
「クリャウ様をどうお支えすればいいのかお悩みしました。そこでクリャウ様のお父様と少しばかりお話しをいたしました」
「やっぱり話してたんだね」
「話せるの?」
クリャウが少し期待したような目をする。
「クリャウ様が直接話すことは難しかろうな」
「そうなんだ……」
「そう落ち込むことはない。クリャウ様の声は確かに聞こえている。伝えたいことがあれば語りかけるとよい。返事は気が向いたらワシが伝えてやろう」
「気が向いたら……」
「死者と話せる時間は長くない。準備も必要になる、色々とな。よほど伝えたいことがあれば向こうから話すだろう。今はクリャウ様をどうするかが大切だからな」
できるなら毎日話したいぐらいであるが難しいのなら諦める。
聞いているならたくさん色々声をかけようとは思う。
「それでクリャウはこれからどうするの?」
「おお、そうだったな。今考えているのは二つ。一つは魔のデーミュント族の力を借りること」
「デーミュント族の?」
「魔の……?」
デーミュント族はそんなものがあると聞いていたが魔のとはどういうことなのかとクリャウは疑問に思った。
「そう言えば説明していなかったね。いくつかの部族には特徴があって魔の、とかついたりするんだ。デーミュント族は魔法が得意な人たちが分離したものだから魔のってつくの。ブリネイレル族は強い人たちが抜けて作られた部族だから武のってつくんだ」
「へぇ」
「魔法が得意なデーミュント族の力を借りるってことだけど……」
「クリャウ様の魔力は黒い。どう使えばいいのかワシらにはわからない。しかし魔法を得意とするデーミュント族ならば何か知っておるかもしれない」
まずは黒い魔力の使い方を知っていくことが死の王への第一歩だろうとイレヲラは考えた。
そのために魔法に優れた知識を持つデーミュント族に協力を求めようというのである。