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原初のネクロマンサー〜いかにして死霊術は生まれ、いかにして魔王は生まれたか〜  作者: 犬型大


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君のため、戦う4

「負けを認めないなら……俺は君を倒す!」


 クリャウがさらに黒い魔力を放つ。

 スケルトンの力がさらに強化されてフェリデオは防戦を強いられる。


「はああああっ!」


「ぐっ! このガキ!」


 そしてクリャウもスケルトンに混じってフェリデオを攻撃する。

 スケルトンに気を取られていたフェリデオは腕をざっくり切られて顔をしかめる。


「……こんなもの……無効だ! 卑怯な誓いなど……」


「私がかけた誓いが不満かい?」


「バルエラ……」


 何とかしなければフェリデオが負けてしまう。

 スルディトは試合を無効にでもできないかと考えたけれどバルエラが現れて言葉を飲み込む。


 誓いは絶対。

 確実に不正だと言えるような証拠もなく誓いを批判して無効にすることは魔族の誇りを捨てるようなものである。


 バルエラとて自身が立会人として立てた誓いを不正な誓いだと批判されては許すことはできない。

 ここで批判の言葉を吐いてデーミュント族と敵対するわけにはいかない。


 スルディトは悔しさに唇を噛んでフェリデオに目を向けた。


「チッ……」


 クリャウを倒してしまえばいい。

 フェリデオはそう思ったのだがクリャウを攻撃しようとするとスケルトンたちが上手く邪魔をしてくる。


 まるでクリャウを守っているようだった。

 クリャウにやられた傷から血が流れて段々と体力を奪う。


 焦りが大きくなり攻撃が大振りになると防御が間に合わず傷が増えていく。


「フェリデオ、降参しろ!」


「父上……それはできません!」


 もはや勝ち目はない。

 死ぬぐらいなら降参すればいいとスルディトは叫ぶがフェリデオは諦めなかった。


 誓いを立てた。

 ここで諦めると一生ミューナには手を出せなくなる。


 スルディトの大願も終わってしまう。

 さらには人間に負けたなど不名誉を背負ってしまうことになる。


「負けるわけにはいかない……負けるわけには……」


「負けるぐらいなら死を選ぶの? それなら俺は止めないよ」


「フェリデオ!」


 フェリデオの腹にクリャウの剣が突き刺さった。


「選べ。プライドか、息子か」


 フェリデオが降参しないのなら止められるのは審判であるスルディトだけだ。

 しかしそれは同時に人間であるクリャウの勝利と諦めずに戦うフェリデオに負けを宣言することになる。


 ミューナを諦めて自ら敗北を認めるという行為をスルディトは迫られた。


「これでも降参しないの?」


 クリャウはフェリデオの腹に刺さった剣をパッと手放した。

 フェリデオは力無く膝をついてゆっくりとクリャウのことを見上げる。


 今フェリデオはスケルトンに囲まれている。

 もはや勝ち目はない。


「降参しないのなら……俺は君を倒すよ?」


 クリャウが視線を向けると最初のスケルトンが剣をゆっくりと持ち上げる。


「俺は父さんの期待に応えられなかった……殺せ……俺に生きてる価値なんかない」


「どうしてお父さんだけが君の価値なの?」


「なんだと……?」


「もっといろんな人がいるよ。俺のことを他の人は認めてくれなかったけどミューナは認めてくれた。きっと君のことを認めてくれる人もいるよ」


 フェリデオの瞳が揺れた。

 そういえば今どうして戦っているのだろうとフェリデオは思った。


 最初は普通にミューナのことが好きだった。

 可愛い子だと思って笑顔が素敵だと顔が熱くなったことは覚えている。


 ただスルディトはそのことでいい顔をしなかった。

 でもいつ頃からかミューナのことを推すようになった。


「俺は……」


 ミューナと結婚することが魔族のため。

 ひいてはブリネイレル族が魔族の頂点に立つためだとスルディトは言い始めた。


 父親の言葉によって好きだし父親のためになるのならとスルディトはよりミューナと結婚することを意識していく。

 だけどいつの間にか目的が入れ替わっていた気がする。


 ブリネイレル族のため、父親のためにミューナと結婚しなければならないと考えが変わっていったように思えた。

 今フェリデオは父親に失望されたくないから降参しないでいる。


 ミューナへの思いじゃなく別のことから殺せと口にした。


「ゲホッ……」


 口から血が出てきた。

 もう頭もぼんやりとしている。


「なんで俺は……戦ってるんだ?」


「分かんない。でも君は強かったよ」


「えっ?」


「少なくとも僕一人じゃ勝てなかった。もしかしたらスケルトンさん一体でも厳しかったかもしれない」


 フェリデオは強かった。

 素直に認める。


 付け焼き刃のクリャウの実力がフェリデオが目隠ししていたって勝てなかったかもしれない。

 でもクリャウの能力は油断を誘い、動揺している間にフェリデオを制圧してしまった。


「死ぬまで終わらないなら俺はミューナのために……」


「待て! 人間のガキ……クリャウ、お前の勝ちだ!」


 最初のスケルトンが剣を振り下ろそうとした。

 その瞬間スルディトはクリャウの勝ちを宣言した。


「だからフェリデオを殺すんじゃない!」


「スケルトンさん」


 スケルトンは振り下ろした剣を途中でピタリと止めた。


「君のお父さんは……君に死んでほしくないみたいだね」


「……とう……さん……」


「フェリデオ!」


 フェリデオは気を失って倒れる。

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