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正義はどこにある1

「やったのはスケルトンだな……」


 タビロホ村の現状は酷いものだった。

 本来なら大きな事件などが起こって多くの人が死んだ場合生き残った人が後の処理をする。


 どうしても無理そうな場合は冒険者ギルドや国が支援を行う。

 今回のタビロホ村では健康な成人男性が数人生き残っていた。


 ブラウたちがやるべきことであったのだが、後片付けはかなり乱雑であった。

 丁寧な人なら全ての人を埋めてお墓を建てるのだがブラウたちは村人を一ヶ所に集めて燃やしただけであった。


 燃やしてしまえば魔物に食われることもなくなるが死体を積み重ねて燃やすだけなどちゃんとした弔いとはいえない。

 このままではアンデッドになってしまうかもしれない。


 後々教会に浄化をおねがいすることになりそうだなとリチアは苦い顔をした。

 リチアはウィグリーンという男性を連れていた。


「ぐっ……!」


 ウィグリーンは死体の山に触れて魔法を発動させていた。


「大丈夫?」


 青い顔をしてふらついたウィグリーンの体をリチアが支える。


「死ぬ瞬間を見るのは気持ちいいものではないからな」


 ウィグリーンは特殊な魔法が使えた。

 人の死体に残る記憶を覗き見ることができるのである。


 魔法を発動させていたウィグリーンの頭の中では触れた死体の記憶が流れていた。

 阿鼻叫喚の村の様子でスケルトンが村の人々を次々と惨殺していた。


 最後にはウィグリーンが記憶を見ていた人も胸を一突きにされた。

 ウィグリーンは胸を撫でる。


 自分が刺されたわけでもないし痛みを感じたわけでもないがなんとなく刺されたところがもやっとする気分だった。


「ともかく証言は正しかった。スケルトンが暴れたようだな」


「本当にスケルトンだったんですね……」


 このような惨劇を引き起こしたのがスケルトンであるというのがイマイチ納得できずウィグリーンの力によってスケルトンだったのか確かめにきた。


「ああ、スケルトンだ。魔法は使ってないからリッチじゃないだろう。ただ黒いモヤモヤに包まれていたような感じがしていたな」


「黒いモヤモヤですか?」


 ただ記憶を辿ってみても暴れた魔物はスケルトンであった。

 黒いモヤモヤがなんなのかリチアには分からないもののスケルトンであることは確定した。


 だとしたらやはり異常な個体なのではないかという疑念が強くなる。

 黒いモヤモヤという話も異常な個体の裏付けになりそうだ。


「しかしどこへいったとか最後どうなったとか……調査は不可能だな」


 ウィグリーンは死体の山を見る。

 スケルトンがどうなったのか全ての死体を調べれば分かるかもしれない。


 しかし乱雑に集められて燃やされた死体はもはやどれが誰なのかも分からない。

 一つ一つ死体の記憶を見ていくとウィグリーンの精神にも影響を及ぼしてしまう。


 何人もの死を短時間に経験すれば異常者でもない限り耐えられない。


「……異常な個体の可能性が高いことを報告して警戒を呼びかけましょう。村一つを滅ぼすほどのスケルトンがいるのは危険ですから」


 スケルトンがどこに行ったのか分からないけれど強い力を持っていることは間違いないとリチアは思った。

 周辺にそうした魔物がいるという情報は周知せねばならない。


「あとは先ほど聞いたところに向かうのか?」


「ついでですので行ってみましょう。ここからそう遠くないですし」


 タビロホ村に向かう途中で会った旅人に放置された死体があるという話を聞いた。

 そこまでする義理はないけれど冒険者ギルドの調査員ということで旅人も話をしてくれたので一応調査に向かってみることにした。


「どうせ魔物にやられたか何かだろう」


「ですが少しおかしいらしいですよ」


「死んでるってことはもうおかしいってことだ」


 ーーーーー


「やったのはスケルトンの魔物だ。ただこいつらは人さらい……しかも子供を誘拐している」


 奇妙な現場であるとリチアもウィグリーンも思った。

 焚き火の後を囲むように倒れた死体はもうすでに魔物に食い荒らされていて腐り始めていた。


 人を捕らえておくような檻の馬車は扉が開いたまま放置されていて繋がれていたはずの馬は逃げたのかいない。

 荷物は残っているので盗人に襲われたわけでもなさそうだが焚き火の周りに集まっているということは魔物に襲われて戦ったわけでもなさそうだと見ていた。


 苦々しい表情をしたウィグリーンは手袋をつけて死体に触れて記憶を読み取る。

 すると驚いたことが判明した。


 死体を襲ったのはスケルトンであったのだ。

 どの死体も死ぬ寸前にスケルトンのことを見ている。


 だが同時に殺された連中が極悪非道な人さらいで、人をさらった帰りだったことも判明した。


「なんだろな……やたらと視界が暗くてよく分からないな」


 焚き火を囲んで捕まえた魔族の子供について話しているところまでは普通なのだが、そこから寝始めて、気づいたら周りが暗くていつの間にかスケルトンにやられていた。


「子供が見える……」


「子供? さらわれた子ですか?」


「いや、違う……」


 ウィグリーンが記憶を見た男は切られた後もわずかな間息があった。

 急に視界が開けたようになって戦いが終わった後の様子も見ていたのである。

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