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原初のネクロマンサー〜いかにして死霊術は生まれ、いかにして魔王は生まれたか〜  作者: 犬型大


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死者の復讐3

「なんだ!」


 部屋の中にいたのは水賊のリーダーであった。


「チッ……!」


 状況は分からない。

 しかし敵襲なことには間違いないと水賊のリーダーは疑問を考えるよりまず剣を抜いた。


「スケルトンだと!? 一体どこから……」


 スケルトンが二体、水賊のリーダーの部屋に飛び込んだ。


「ただのスケルトンじゃねえな!」


 振り下ろされた剣を受けて水賊のリーダーは顔をしかめた。

 スケルトンにしては力が強く、甘くみて戦うと危ないことを瞬間的に察する。


「たかだかスケルトンが舐めんなよ!」


 水賊のリーダーがスケルトンを蹴り飛ばす。

 足に赤い魔力をまとわせていてスケルトンの背骨が折れて倒れる。


「オラッ!」


 そのまま返す刀でもう一体のスケルトンの頭を切り落とす。


「くっ……まだいるのか……あいつらは何やってんだ!」


 さらに最初のスケルトンを始めとして残る三体のスケルトンも飛び込んできて水賊のリーダーは大きく舌打ちする。

 こんな魔物が暴れているのに他の水賊たちは何をしているのかと苛立ちを覚える。


「こいつ……!」


 ただのスケルトンより力は強いが技術は甘い。

 そんなことを思いながら最初のスケルトンの剣を受けて水賊のリーダーは余裕がゼロになった。


 最初のスケルトンの攻撃は他のスケルトンよりも鋭くて技術を感じさせる。

 残る二体のスケルトンの攻撃にも対処しながら戦わなきゃいけなくて全く余裕がなくなってしまった。


「くそっ……このままだと…………うっ!」


 一人で戦うには辛い。

 どうにかこの状況から脱して部下を連れて戦おうと考えた水賊のリーダーの足が止まった。


 止めたのではない。

 止められた。


 水賊のリーダーが視線を落とすと蹴りで背骨を叩き折ったスケルトンが水賊のリーダーの足を掴んでいた。


「クソが……」


 二体のスケルトンの剣が迫る。

 一つは弾き返したけれど一つは防げなくて肩に剣が深くめり込む。


「クソが!」


 水賊のリーダーは自分を切りつけたスケルトンに向かって剣を上げる。


「なっ……」


 剣を振り下ろした。

 なのに水賊のリーダーの攻撃はスケルトンに届かなかった。


 振り下ろした腕の先がなくなっていた。

 手も剣もない。


「テメェ……」


 最初のスケルトンが振り下ろそうとした水賊のリーダーの腕を切り飛ばしていたのである。


「うっ……」


 スケルトンの剣が水賊のリーダーの腹に突き刺さる。


「チッ……なんだってこんなことに……」


 最初のスケルトンが水賊のリーダーの首を目掛けて剣を振った。

 水賊のリーダーの首が飛んで床に転がる。


「これで終わりだね……」


 先程までうるさいほどに騒がしかった水賊の船から人の声が消えた。

 至る所に水賊が倒れて金臭い血の匂いだけが船内に広がっている。


「みんなお疲れ様」


 呼び出したスケルトンのうち三体がやられてしまった。

 それでも水賊の規模を考えたらよくやった方だと思う。


「ミューナを助けに行こう」


 もうクリャウを邪魔するものはいない。

 クリャウは閉じ込められていた部屋に向かう。


 部屋のドア横にかけてある鍵を手に取ってガチャリと開ける。


「クリャウ!」


「ミューナ、平気だった?」


 ドアの向こうから訳の分からない騒がしい声が聞こえ続けていた。

 クリャウたちが連れて行かれたこともあったので子供たちはすっかり怯えて隅に身を寄せるようにしていた。


 ドアから入ってきたクリャウに気がついてミューナが飛びつくように抱きつく。


「クリャウこそ……顔腫らして……痛くない?」


「君だって……」


 連れて行かれる時に顔を殴られた。

 クリャウもミューナも顔が青くなっている。


 それでも命はあった。

 生きていて、無事だった。


「何があったの? すごい騒ぎがあって……急に静かになって……」


「もう大丈夫だよ。全部終わったから……全部スケルトンさんたちが倒してくれたから」


「ま、魔物だ!」


「こ、殺される!」


「スケルトンが……」


 クリャウの後ろからスケルトンが入ってきて子供たちは騒ぎになる。

 ミューナはスケルトンの数が増えていることに驚いていた。


「きっとミューナが言っていた魂が協力してくれたんだよ」


 増えたスケルトンの魂は無理矢理従わされているような感じではないとミューナには見えている。

 それがなぜなのかは分からないがクリャウに対しては感謝している。


 どこか満足げな感情であるようにミューナには感じられたのであった。


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