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原初のネクロマンサー〜いかにして死霊術は生まれ、いかにして魔王は生まれたか〜  作者: 犬型大


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黒い心、黒い魔力1

「順にイヴェール、スタット、カティナだ」


「よろしくお願いします」


 ミューナを助けたところから二日ほど移動してミューナの仲間と合流した。

 イヴェールとスタットが男性で、カティナが女性であった。


「何か問題はなかったか?」


「こっちは何も。無事にお嬢様を取り戻せたようでよかった」


「ついでに予言の人も見つけられたのね。ジュドリアの導きに感謝します」


 カティナは胸に手を当てて魔族の神に祈りを捧げる。


「ではこのまま我々の家に帰ろう。ブリネイレル族との緊張も高まっているからいつ戦いが起きてもおかしくない」


 子供二人と大人一人だと気の抜けない感じがあったけれど大人が三人増えて四人にもなれば旅の安心感も大きくなった。

 ここまでケーランが一人で負担を背負ってくれていたけれどここからは大人たちが分担して役割をこなしていける。


 魔族ということでバレないように道からも外れて移動しているので魔物への警戒もより強いものだった。

 三人だけの時は魔物に出会えばケーランが戦うしかないが今は四人で戦える。


 戦いに関してはスケルトンも戦力にはなってくれるけれどケーランと連携は取れない。


「それにしても……スケルトンが従っているとは奇妙な光景だな」


「むしろスケルトンだからこそかもしれませんよ」


「どういう意味だよ、カティナ?」


 スタットはカティナの言葉の意味が分からず首を傾げる。


「魔物は魔物……人の心など持たないケダモノにすぎない。ですがスケルトンは元々人間で通常の魔物とは少し違う経緯で生まれるでしょ? そういった意味では他の魔物とは違う。体はあくまでも器であり、敬意を払うべきは魂……魂にはどこか魔物ではない何かがあるのかもしれない」


「スケルトンの魂に人の意識が残っているというのか?」


「クリャウ様の黒い魔力がスケルトンの中にある人としての魂を刺激しているから魔物として暴れないのかも……しれない」


「まあ魂視者でもない限りは分かんないよな」


 スタットは肩をすくめる。

 どんな予想を立てたところで仮説の域を出ることはない。

 

「大切なのはどのようなことができるかだ。魔法や魔力が起こす現象はどんなもので説明が難しい」


 話を聞いていたイヴェールが話に入る。

 クリャウの黒い魔力でなくとも魔法というものは自然現象を超越した力を見せる。


 魔力が不可解な現象を引き起こすこともあるし魔法や魔力が原因だと現象に理由をつけることはできても何がどう作用して起きたのかまで解明するのは高名な学者でも難しい。

 クリャウの黒い魔力がどんな影響を及ぼしてスケルトンを操作しているのか論じたところで結論は出ない。


 分からないところを考えるよりも分かるところを見てどう使えるのか考える方が大切なのである。


「まあ少なくともスケルトンは操れるってことだな」


「まだ彼も子供だ。我々も黒い魔力については分かっていない。これから理解していけばいい」


「……なんだか難しい話してるね」


「うん……」


 ミューナが隣を歩くクリャウにこっそりと声をかける。

 黒い魔力がスケルトンにどう作用しているかなどクリャウ自身にも分かっていない。


「魔法の理解は魔法を強くしてくれるけどそんなに複雑に考えなくてもいいと思うよ」


「ホントに……黒い魔力って何ができるんだろ?」


 ーーーーー


「そろそろ補給が必要だな……」


 日が落ちてきたので早めに場所を見つけて野営の準備を整えた。

 荷物を確認しながらケーランは小さくため息をつく。


 食料品がだいぶ少なくなってきた。

 魔物と遭遇するのは厄介であるが魔物は食料にもなる。


 食べられるような魔物が出てきてくれれば食料の軽減に繋がるのだけど、今の六人でいる時はおろかクリャウたち三人で動いている時も魔物には遭遇しなかった。

 食料品はどうしても旅をする上で必要になってくる。


 ケーランはどこか町によって購入せねばならないなと考えていた。

 ただ魔族が人の町で食料を購入するのも楽じゃない。


 魔族だとバレれば売ってくれないことや高値をふっかけられることもある。

 攻撃してくる人もいるしミューナの場合のようにさらってくるような人だっている。


 基本は顔を隠して買わねばならない。

 ミューナがさらわれた時はどこかでミューナが見られてしまったのだろうとケーランは思っている。


「お嬢様、クリャウ様、そろそろお休みください」


 クリャウとミューナは子供であるし交代での見張りから外されている。

 申し訳なさも感じるけれど子供に見張りをさせるわけにはいかないし良く寝て日中しっかり歩いてくれた方がケーランたちにとってはありがたい。


「ん?」


 ほんの一瞬離れたところで何かがきらめいたのをクリャウは見た。


「うっ!?」


「スタット!」


 急に矢が飛んできて焚き火に枝を投げ入れようとしていたスタットの肩に突き刺さった。


「チッ! 何者だ!」


 次の矢が飛んできてケーランが剣を抜いて切り落とす。

 ケーランが剣を構えて闇の中に襲撃者の姿を探す。


「グッ……」


「スタット、大丈夫!?」


「……幸い矢の先端は出てる」


 体の中で矢が止まれば厄介だったが先が肩を突き抜けてくれた。

 カティナが剣抜いて矢の後ろ側を切り落とした。


「お前は警戒しろ。おい、ボウズ」


「な、なんですか?」


「これ引き抜いてくれ」


「お、俺が?」


「早くしてくれ……」


 とんでもない役割を押し付けられてクリャウは顔を青くする。

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