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3−4 「付き合う……だと……!?」

前回の粗筋。


体育の授業中、木下の態度が妙なのを二宮に相談する野田。

二宮曰く、野田と相川が仲良くしているのを気にかけているそうなんだが……。

それを聞いてテンション有頂天状態の野田識、現在ロマンティックが暴走気味。

 チームメイトがリバウンドで拾ったボールを受け取った俺は、相手方ゴールに視点を合わせた。まず目の前にいるディフェンスの脇を切り込んですり抜ける。


「おい!誰か野田を止めろ!」

「……うわ、脚速ぇ!」

「クソ!」


 正面からぶつかってくる二人を、左右のフェイントで翻弄する。そして二人の手の届かない高さまでボールを高々と投げ上げる。


「……よっと!」


 俺の行く手を阻む二人の頭上を、全力の跳躍で飛び越えて、落下して来たボールをキャッチ。再びドリブルに移行。


「んなのアリかよ!」

「メチャクチャだ!」


 後ろから聞こえてくる叫び声は無視。俺を追う足音もあっという間に背後の彼方だ。俺はゴール下でドッシリ待ち構える敵チームのキャプテンをやっているバスケ部の部員と睨み合いを始めた。バスケ部部員はやはり目が違う。俺の視線、足運び、球の動きを全て目で追って、あらゆる動きに対応せんばかりに軽く足を開いて腰を下ろして俺を待つ。

 コレは中々簡単には抜けないかもしれない。……じゃ、相手しなきゃいいじゃんって思えるのはきっと俺だけだよな。

 ドンドン縮まって行く距離。そして後三メートル程の距離に差し掛かった時、俺は。


「ふっ!」


 体育館の床を破壊する勢いで脚を蹴り出し、高く跳んだ。一瞬だけ内履きが床に擦れて、耳障りなキュッと言う音が聞こえる。両手を振りかぶり、身体は狙いを定めた赤い輪っかへとまっしぐらに飛んでいく。そして両手で持ったボールを、落下の勢いと共にリングを破壊する様な衝撃を伴って、ゴールに思い切り叩き付けてやった。

 いわゆるダンクシュートだ。テレビで見た事あったんで試しに実行してみたが、中々上手く決まったんではないだろうか。ピーッ!と言う甲高い耳障りな笛の音が館中に響き、スコアボードに点が追加された。

 観戦している他のクラスメイトも、俺が繰り出した俺も初めて実行した大技に歓声を上げてくれた。ゴール下で俺と競り合う筈だったクラスメイトは、ゴールにぶら下がる俺の足元で、口をあんぐり開けて呆然と見上げている。

 まだ試合は終わってないと言うのに呑気なものだ。

 ナ、ナイシュー、とクラスメイトが戸惑い気味の声をかけてくれる。俺は小さくピースサインをして返事をした。あまりの出来事に、相手方が作戦タイムに入る。それを待つ間、剛志がこちらに駆け寄って来た。

 結局コイツも俺と同じチームだ。全く試合に参加出来なくて、突っ立ってるだけだったけど。足を使わないとてんで駄目だな、お前。


「随分ご機嫌だな。体育の授業でお前が全力出すなんて」

「そんな事は無いぞ」

「でも高校上がってからは初めてだろ?」

「あんまり目立ちたくなかったんだよ。

 運動部から勧誘されるのも面倒くさいし」


 実際入ったばかりの頃は引っ切りなしだったけど、助っ人部に入ったって情報が巷に流れてからは、ぱったり勧誘の嵐は止んだ。理由はまぁ、あの部長のせいだろうな。間違いなく。


「ちなみにゴールの瞬間、木下さんは外の天気を気にしてたぜ」

「え!嘘だろ!?」

「嘘。人一倍喜んだたよ」

「……そ、そっか」

「またニヤついてるぞ。お前って本当に解りやすいな」


 いつもはムカつく剛志のからかいも、今の俺には馬耳東風のどこ吹く風でバタフライ効果である。それほど俺の気分は高揚していた。好きな女子から好意を向けられているかも知れないってだけで一喜一憂するなんて自分でも解りやすい奴だと思う。

 けどそんなのは別にバッドステータスではない。むしろグッドな時だってある。単純というのは素直と同義だ。そう、俺は素直なんだ。素直バカもといバカ素直だ。何の問題もない。最近ドラマにもあったろ、真っ直ぐな男っての。アレだよ。

 鼻息荒く次の魅せプレイを構想していると、何故か今日は俺のブレーキ役として出番が多い剛志が再び水を差す。


「さ、張り切って行こうぜ、野田。

 次はどんなプレイを魅せてくれるんだ?」

「手始めに3ポイント祭りと行かせてもらう。

 まだまだ試合は始まったばっかりだしな。

 だからみんな、俺にボール集めてくれよ!」


 周りに居た他の三人にそうやって声をかけると、三人とも引き攣った微笑みを浮かべつつも頷いた。さて、相手方チーム諸君よ。これからが本当の地獄だ……!






 学校の授業としては破格の44点差を付けて……と言うか相手には点を与えてないから、44対0で圧勝した。俺に廻って来たボールは全て距離を問わず俺が相手方のゴールに投げ入れた結果だ。と言うか途中から対戦側は試合放棄、檜山先生もあまりに一方的な試合展開に、試合をさっさと中断してしまった。

 本当なら100点くらいまでは行けたんだけどな、残念でならない。

 ちなみに二本しかミスってないぜ。すごいだろ、剛志。敬ってくれて良いぜ。


「天変地異か?お前がシュートをミスるなんて」

「そうやって驚かれると反応に困るんだけど」


 授業は終了し、俺達はクラスの男子全員が詰め込まれた更衣室の中で狭いながらも体操服を着替えていた。流石私立、更衣室も広い。ロッカーはクラスの人数分以上は余裕であるし、シャワー室まで完備している徹底ぶりだ。

 剛志はこの授業間の短い休みしかないにもかかわらず、しっかりシャワーを浴びてやがる。碌に汗を掻いていない俺は既に制服に着替え終わっていて、律儀にも剛志を待っている所だ。

 ほれ、待ってる奴居るんだから早く上がれよ。


「……なぁ、野田」

「なんだ?いきなり真剣な声出して。替えのパンツ忘れたか?」

「それもあるけど」


 あるのかよ。


「放課後、少し用事があるんだ。付き合ってくれるか?」

「付き合う……だと……!?」

「そっちじゃねーよバカ。いつまで浮かれ気分なんだよ。言っとくが俺はノーマルだからな。

 と、妙に必死になってしまったツッコミは置いといて。

 ウチの部長が、お前に用事があるってさっきメールに届いてたんだ。

 多分まぁ、助っ人の件だろうけどよ」

「助っ人の件?……そう言うのは全部部長を通す必要があるんだけど」

「俺がそんな事情知るかよ。兎に角、部長がお前を呼んでたんだ。

 確かに言ったからな。来いよ、ちゃんと。いや、俺が引っ張って行く」

「あ、あぁ、分かった」


 何でそんなに必死な声を出しているんだろうか、コイツ。俺とお前の仲なら、別にそんなの『今日晩飯食いに行こうぜ』くらいの軽いノリで頼める事だろうが。バカの俺でも何かしら裏がある事は察しがつくが、いかんせんそれが何かは俺には分からなかった。

 ……そして俺は、自身の鈍さを後悔する事と相成ってしまう。

軽いタイトル詐欺……になればいいけどなぁ。


またしても要らなかった気がする章。

バスケのテクニックとか分からんから、短く纏まってしまいました。

次回こそはシリアスだよ!本当だよ!

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