表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のそばに。  作者: はやはや
2/10

第二話

 ぼーっとしているうちに、午前中の授業が終わった。


「ゆず、中庭でお弁当食べない? 天気いいし」


 愛美の提案に即座に賛成した。お弁当と水筒を持って、二人で中庭に向かう。中庭は校舎に挟まれる形で広がっている。

 天気がいいのに、思ったより生徒は少ない。ちょうど木陰のベンチが空いていたので、そこに座った。


「今が一番いい季節だよね」

「うん。梅雨に入って、そしたら夏だもんね」

「今年も暑いんだろうね」

「嫌だなぁ」


 そんな会話をしながら、お弁当を開ける。その時だった。後ろから呼びかけられた。


「塚川?」


 初めて聞く声だ。二人して振り返ると、そこには背の高い男子生徒が立っていた。ネクタイが紺色だから三年生だ。体格がよく、いかにも運動部という感じ。その割には優しい顔立ちをしている。


「高橋先輩」


 愛美はそう言うと、お弁当の蓋を閉じてベンチに置き、先輩の側に駆け寄った。それを見て、バスケ部の人なのだと理解する。


「昼休みにごめん。これ、今度の練習試合の案内。悪いんだけど、部員の人数分コピーして配ってくれる?」

「わかりました。今日、部活の時に配りますね」


 愛美は先輩から受け取ったクリアファイルの中を確認している。


「助かる」


 高橋先輩はそう言って、親しみのこもった笑顔を愛美に向けると、「じゃあ」と言って校舎へと歩いて行った。


「バスケ部の人?」


 隣に戻ってきた愛美に訊いた。


「うん。三年生のキャプテン。もうすぐ引退しちゃうんだけどね」


 愛美はそう言って、お弁当の蓋を開け、プチトマトを摘んで口に入れる。


「優しそうな人だったね」

「うん。すごくいい人だよ。ゼッケンの洗濯を干すの手伝ってくれたり、バスケのルール詳しく教えてくれたりしたし。あ、休みの日、先輩とその友達と遊びに連れて行ってもらったこともある……」


 愛美は何気ない様子で、そう言ったけれど、私は高橋先輩が、愛美のことを好きなのではないかと思った。さっき、愛美に向けた笑顔には、その気持ちが現れているようだった。


「優しいし、かっこいい方だと思うんだけどね、彼女いないみたいだよ。もったいないよね」


 そう言って卵焼きを半分に割り、口に運ぶ。

「愛美のこと好きなんじゃない?」と言いかけて、口をつぐんだ。愛美とは何でも話していたけれど、いわゆる恋バナをしたことがなかった。

 愛美は綺麗なのだから彼氏がいるのかもしれない。でも、誰かと付き合っているとか、そんな噂を聞いたことはないから他校にいるとか? 一人でいろんな可能性を考える。

 箸が止まっている私に気づいた愛美が「どうしたの?」と不思議そうに訊く。

 私は「ううん。何でもない」と言って、おにぎりを口に運んだ。


 私は昔から恋バナが苦手だ。もちろん好きな人がいたこともある。でも、自分から進んでそういう話題を出せない。友達が出す恋バナに便乗して、少し話すくらいだった。

 だから、愛美からその話題が出るまで、私から話すことはないだろう。愛美のことをほぼ知っていると思っていたけれど、まだまだ知らないところがあるのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ