4:スティグマ
エルナとクレレはブリッヂの艦長席の前に来ていた。ミーティアは医務室で眠っている。艦長曰く、眠っているだけで心配はいらないとのことだった。
千香はミーティアの傍についている。天は自室で回収した魔王石を解析にかけているとのことだった。エルナとクレレの二人は、仕事に関する報告を任されたのだ。
「それで、召喚核は無力化。魔王石は無事に回収。いくつかのイレギュラーはあったけど、仕事は無事に終わったのね?」
「はい。それで、その……」
「問題はその白装束と、彼女が言ったスティグマの話ね」
エルナはうなずいた。どう説明して良いか迷ったのだが、遺跡から脱出した後のことはすべて細大漏らさず艦長に報告した。白装束の女性が立ちはだかったこと、ミーティアの持つLPを指してスティグマだと言ったこと、すさまじい殺気を放っていたが、天のおかげで戦闘にならずに済んだこと。
その全てを聞いてから、艦長は静かに、少しの間考えた。
「結論から言って、スティグマがどうたらってのはデタラメよ。気にしなくていいわ。
確かにミーティアちゃんのLPは少し特殊なものだけど、人工遺物じゃない。その白装束さんは何か勘違いしてるわね。彼女も彼女で只者じゃないのは確かなんだけど」
そこからの話題は白装束の女性に集中した。白装束の女性と対峙した時、エルナは疲労していたからかもしれないが、その女性の放つ威圧感に気圧されて身動き一つできなかった。
その感覚について、まず艦長は「正常な判断ね」と結論を下した。
「惑星カリダから離陸する単独用小型宇宙艦が観測されたわ。おそらくその白装束さんのもので間違いない。問題は、単独で宇宙航行ができるだけの後ろ盾が彼女についてるってことね」
ドレッドノートは大型宇宙艦の部類に入る。これは旧式の宇宙航行艦である以上避けようのない分類だ。
しかし、宇宙航行艦は時代を経るに従って小型化してきており、その極限にまで達したものが単独用小型宇宙艦である。その名の通り、単独で宇宙を航行することができる小型の宇宙艦だ。
問題はその費用。船そのものの製造費もそうだが、メンテナンスを行うための維持費も、その最先端の技術に追いついている技術者が――辺境である第四区画には特に――少ないために割高になっている。
それは決して、単独で支払うことのできる額ではない。単独用の航行艦でありながら単独では購入も維持もできないということがよく皮肉られる。
つまり、白装束の女性がその単独艦に乗っていたとするならば、彼女は只者ではない。組織だったバックボーンがあるのだ。
そんな相手がミーティアのLPをスティグマだと言ってきた、というのはなんだかとても恐ろしいことのような気がした。いかに勘違いとは言え、組織ぐるみでミーティアが狙われてしまう可能性が出てきたのだ。
全身白装束ということで連邦騎士団なのではないかという話も出たが、それに関しては艦長も否定的な見解だった。宇宙連邦領第四区画という辺境に、連邦政府直属の――連邦最強の武装集団と謳われる――特殊部隊の構成員が単独でやってくるとは考えにくい。
また、一週間前の校舎で負傷していた民間人と同一人物であったことから、やはり連邦最強の集団の一人である可能性は捨てても構わないだろう、というのが艦長の話だった。
「まあ、戦闘能力はそれなりにあるみたいだけど、天ちゃんと千香ちゃんがいれば問題にはならなかったわね。それより怖いのは、その後。彼女のバックが黙ってるかどうかってところなんだけど」
単純な戦闘ならば、天と千香の二人がいればその白装束を撃退するのに不自由はしなかったという。エルナはその二人の実力をあまり知らないのだが、艦長は絶対の信頼を置いているようなので強いのだろう。
問題は白装束の後ろにいる何らかの組織。単純に戦闘で撃退した場合、ドレッドノートという船そのものが組織と真っ向から対立することになりかねなかった。政府公認のギルドとは言え、依頼者たるギルドに対しては単なる請負者である政府がドレッドノートに加勢してくれることはない。よって、今回、実際に戦闘にならなかったのは幸運だと言っていい。
「さて、お話はこれくらいかしらね。クレレちゃん大丈夫? しばらく休んでたほうがいいんじゃない?」
「あ、はい……」
クレレはあの白装束に会ってからというもの、顔色が優れない。今の話を聞いていた時もうわの空だったようで、瞳の奥には見えない何かに脅えるような感情がある。艦長に答えた声も弱々しい。
エルナは彼女を部屋まで送っていくことにして、艦長室を出た。
―――◆―――
「玲菜ちゃんはすごいね。僕にはマネできないよ」
「何のことかしら?」
エルナ達が去った後、熱いコーヒーをすすりながら、ノクスは自分より年上の艦長を感心したように見つめた。
「本当のこと、言わなくてよかったのかい?」
金色の碇のマークの刺繍のある紺色の制服の女性は、静かにため息をついた。開いた黒い瞳はその奥に多くの感情を秘めている。しかし混沌としているわけではなく、そこには確かに憂いの色があった。
もう一度瞬きした後には、その感情も全て消えていた。あらゆる世界を見てきた者の目。薄汚い世界の冷酷さ、無情ささえも知り尽くした目は、自らの感情を殺すことも容易い。
「私たちの任務は期間中ミーティアちゃんを守ること。そのために必要のないことはしないわ」
しかし、感情を殺すことはすなわち非情という言葉には結びつかない。穏やかな対応は相手の怒りをなだめる。彼女は『エルナ達にスティグマとミーティアの真実を伝えること』を必要のないことだと言った。それは、彼女の優しさだ。
「軽くないんだろう? ミーティア・エンシスハイムの症状は」
「そうね。私も驚いたけど、今回の彼女の症状で確信したわ。スティグマは所有者の魔力を際限なく食らい尽くす。結果として、彼女のリミッターは常に外れた状態になる。魔法を使うときの魔力の調整ができなくなる。
タダでさえ食われ続けて枯渇状態に近いのに、魔法を使おうとすればスティグマが更に体の中から魔力を搾り取ろうとする。正直言って、死ぬ直前だったわ。これ以上、魔法を使わせないほうがいいわね」
ミーティアは今回の任務――惑星カリダの魔獣掃討任務――の途中で倒れた。報告によると、アースワームと魔導砲を正面から撃ち合ったらしい。
それだけでも常人なら魔力の枯渇――貧血に似た症状――を起こして倒れてしまいかねないのに、それに加えてスティグマという人工遺物の存在がミーティアの魔力を常に食らい続ける。
深刻な魔力の枯渇は生命活動に影響を及ぼすこともある。運び込まれたミーティアを見た時、玲菜は動揺を抑えるので精一杯だった。それほど、ミーティアが危険な状態だったからだ。
「今後、もし任務が増えるようなら、彼女には待機してもらうことになるね」
「ええ。少なくとも戦闘のある任務には参加させられないわ」
玲菜はもう一度静かに深く息を吐いた。
―――◆―――
上は動きを妨げないゆったりした袖の道着、下は長いスカート状の袴という姿。これは戦うための服装であり、武道をたしなむ者の正装だ。
白柳 千香は幼い頃からこれを着て育ってきたので、この格好が一番落ち着く。急な任務にも対応できるように、常にこの格好で生活している。
一本に結った髪が乱れていないかどうか、着ている和服に汚れやシワがついていないか、入念に確かめた。白柳の名を受け継ぐ者として、常にあるべき姿であらなければならない。特に、あの人の前では。
ドレッドノートの乗組員には、各人に個室が割り当てられている。それぞれについて十二畳はある広い部屋だが、彼女が訪れたこの部屋はその広さを感じさせないほど散らかっていた。床の面積の実に四分の一には専門書がうずたかく積み上げられ、もう四分の一には魔導工学のよくわからない機器が並び、残されたスペースにも足の踏み場もないほどよく使う工具が散らばっていた。
千香はため息をついた。こんな部屋でどうやって寝ているのだろう。
「兄さんは小難しい魔導工学理論より、整理整頓という言葉を学ぶべきだと思うんです」
「お前は何を言ってるんだ。充分すぎるほどに整理された部屋だろう。この配置美がなぜわからない」
部屋の主、白柳 天は目の前に置いた紫色のごつごつした石を観察しながら、脇に置いた端末のキーを叩いて何か調べているようだった。自然召喚核を形成していた魔王石の分析らしい。
全く悪びれた様子のない天に、千香はもう一度深くため息をついた。こんなどうしようもない男が白柳の長男であり、跡取り候補の筆頭なのだと考えると眩暈がした。
白柳は剣の名家だ。宗家である風戸から派生した庶家ではあるものの、剣術において由緒正しい家系である。その跡取り候補の筆頭が、千香の目の前であぐらをかいて石ころの分析をしている男、白柳 天だ。服装は千香のものと違って白いシャツにジーンズというラフなものだし、生活は規則正しくないし、起きている時間の大半は魔導工学の機械いじりに勤しんでいる。
天は昔からそうだった。自分の好きなこと以外はしなかった。少なくとも、周りにはそう認識させてきた。そんなだらしのない兄の代わりに、千香は親族の期待を一身に背負った。寝ても覚めても剣の修行に明け暮れて、十七歳で奥義まで会得した。
それでも、全く足りない。天は自分の好きなこと以外しなかった。周りに修行をしているところを欠片も見せようとしなかった。誰もが寝静まった頃に、己を鍛え抜いていた。
千香は、一度だけ天に稽古試合を挑んだことがある。その時に、はっきりと確信したのだ。まだ、自分の剣ではこの男の足元にさえ及ばないと。対峙しただけで震えが走るほどの気迫と、無駄な動きの一切を排した立ち回り、確実に敵の動きを崩す太刀筋。その全てが千香の想像をはるかに凌駕した領域に達していた。
純粋な剣術のみで戦ったためにその試合は千香の勝ちで終わったが、魔術を絡めた戦いになれば千香は自分に勝ち目などひとかけらもないことを理解してしまった。それほどまでに、天の剣は強かった。正規の修行をこなして、全ての時間を剣にささげてきた千香にそう感じさせるだけの実力を持っていた。
持っていながら剣を握らず魔導工学の道を志したことに、憤りを感じることもある。だが、今必要なのは皮肉にも魔導工学の知識だ。千香はそのために天の部屋を訪れた。
「スティグマについて、兄さんなら何か知ってるんじゃないかと思って」
「ああ、あれか」
惑星カリダでの任務が完了したときに遺跡の外で出会った白装束の女性が言っていた、スティグマ。その存在が人工遺物の中でも危険性の高いインテリジェンス・ウェポンであるということくらいは、千香も知っている。学園の宇宙史の講義で一番最初に習う部分にも登場するからだ。
しかし、それ以上の詳しいこととなると、諸説あるために学園の講義では扱われない。LPを作る技術を中心とした魔導工学に関連する書物を読み漁っている天ならば、古代のLPに関する知識もあるのではないかというわけだ。
「文献によって記述の異なる部分は多いんだが……」
二、三キーの操作で手元の端末を省エネルギーモードにして、天は千香のほうに向きなおった。一度閉じた目が開かれた時、天の周りにあった空気が先ほどまでと比べてガラリと変わった。
魔導工学、特にLPのこととなると、天は人が変わる。彼が研究するのはLPの構造であり、改良手段だからだ。真剣な目で見つめられて、動揺しそうになった。普段はやる気のない顔なのに、どうしてこうすばやく切り替えが利くのか。
「古い文献の中に共通する記述がひとつある。聖なる傷の話だ。
完全の刻印だとか、神の子の傷だとか、いくつか異なる表現で書かれていて、そのどれもが抽象的だから詳しいことは全くわからないんだが、どうも人体に浮き出る痕らしい。
手足か、脇腹か、額か、あるいは背中の十字傷か。スティグマの継承者にはそいつがあるらしいんだが……」
天はもう一度目を閉じた。千香は助かったと思った。今の表情を見られるのはよくないことのような気がしたからだ。
「ま、どうせおとぎ話だ。あの新入りのLPは確かに製造番号も書いてないが、人工遺物の類じゃねぇだろ」
次に天が目を開いたときには、彼の表情はいつものやる気のないものに戻っていた。ひとまずは秘密を守れたことに安堵し、千香は部屋を去った。
―――◆―――
懐かしい夢を見ていた。まだ、エンシスハイム卿に引き取られたばかりの頃の夢。
最初は怖かった。エルナもシャズおばさんもいない。大きな大きなお屋敷で、これからお父さんになる人が優しく笑っていた。
どんな綺麗な絵が飾ってあっても、ちり一つ落ちていない絨毯の上を歩いても、ジャンプしたって届かないほど高い天井を見上げても、やっぱり怖かった。
だけど、ひとつの部屋にたどりついたとき、怖くはなくなった。ベッドの上で本を読んでいた、自分よりも少し年上の子が笑いかけてくれたから。
「よろしく。僕はエルネスト」
「……ミーティア」
差し出された手は暖かくて、伸ばした手を握り返してくれたことが嬉しくて、怖いだけの世界が全部明るくなった気がした。それが、エルネストとの出会いだった。
その先は見たくなかった。エルネストとの楽しい思い出ばかりが繰り返されて、だけど、その夢を見ている時は、たまらなく悲しくなった。いつだって最後に来るのは、あの日だから。
背中の傷が痛くて苦しむエルネスト。その傍に転がる杖。杖が語った知識に従って、刃で同じ傷をつけて、さいごに、激痛の中で一度だけ……。
不意に、頭をやわらかく撫でてくれる感覚がした。瞳からこぼれる涙の感覚で、目を覚ました。目を強く閉じて、涙を振り払う。
わずかにかすんだ視線の先には、和装の少女がいた。優しい眼差しが夢の中で見た人に似ていて、もう一度涙が出そうになった。
「お、おはよう!」
甘えそうになる自分を誤魔化すために、わざと大きな声で言った。千香は驚いたみたいだったが、それでもいつもの落ち着いた調子で「おはようございます」と答えてくれた。
起き上がろうとして、背中に鋭い痛みを感じた。表情が強張ったのを見られなくて良かった。千香の視線はベッドのそばに立てかけてある杖に向いていたから。
「やっぱりあれは、スティグマなんですか?」
遠慮のない直球の質問。この船に乗っている者の中で、ミーティアの傷を見たのは千香だけだ。背中の十字傷。少し詳しい者なら、その意味がわかるかもしれない。
「……うん」
小さくうなずいて、ミーティアは答えた。背中の傷が痛んで体も起こせないけど、そこまで悟られてしまうわけにはいかない。
「スティグマ。知性ある魔導具。色々、怖い伝説があるものだよ」
「そう、ですか」
短く答えて、千香はスティグマを睨んだ。傍目には何の変哲もない杖型のLPに見える。
千香はどこまで知っているのだろう。ミーティアは不安になった。ひょっとして、他の皆にも知られてしまっているのだろうか。
それは嫌だ。伝説は人を狂わせるか、恐怖を与えるかのどちらかしかできない。
「スティグマのこと、皆に知られちゃった……?」
「いいえ。兄さんもスティグマなんておとぎ話だと言っていました。大丈夫ですよ」
心を小さく突き刺す痛み。千香の「兄さん」に反応したのだろう。もう戻らないことはわかっているのに、いつまでもこの心に刺さったトゲは消えない。
それから千香の話を聞いて、白装束の女性がスティグマの存在を示唆したこと、千香はスティグマについて持ち主が聖なる傷を持っているということ以外知らないこと、誰にも傷の存在は気付かれていないことを知った。
「またお願いになっちゃうけど、やっぱり、このことも誰にも言わないで欲しいの」
背中の傷が疼いて痛む。笑えただろうか。千香はいつもの調子で「わかりました」とだけ答えてくれた。
―――◆―――
宇宙連邦政府は第四区画にも支部を置いている。区画ごとに自治を行っており、異なる区画には中央政府である第一区画の権限以外は干渉できない。
背後には要人の控える議事堂がある。辺境とは言え、政府関係者に負傷者が出たとなれば第四区画中央防衛師団の実力が疑われてしまう。議事堂付近の民間人を素早い対応で避難させることができたのはハーヴィ中将の辣腕によるところが大きいだろうが、今も昔もそういった事実はあまり公にならず、特に軍隊という立場にいる以上は失敗を咎められるのみだ。
そうなってしまわないためにも、今回の急な襲撃者は全て排除しなければならない。第四区画の議事堂城下町に魔獣が入り込んだという報告から、すでに一時間は経過している。どこかに召喚核が存在するのだろうが、それを無力化するために人員を割くことができないほどに襲撃は激しい。
前線の様子は追尾眼を通して小柄な部下、スキルヴィルが伝えてくれる。
しかし、全く役に立たない。前線では師団員が善戦している、とかいう寒いギャグを言われても反応できないくらいに、迷彩色の軍用制服に身を包んだ中年の男の神経はすり減っていた。
「くそっ、けが人が次々に運ばれてくる。追尾眼の情報はアテにならないな。ベズヴィルド、前線の者を第二防衛ラインまで引かせろ」
「了解しました」
同じ制服に身を包んだ女性は短く敬礼して駆け出した。本来はベズヴィルドが走らなくてもその場で前線と通信すればすぐに命令が伝えられるのだが、ハーヴィ中将はそれをしない判断を下した。
通信はハーヴィ中将の傍らにいてモニターを注視している小柄な男、スキルヴィルの追尾眼を通じて行われる。本来、追尾眼は特定の対象を追尾してその映像を通信によって得る特殊形状のLP――簡単に言えば魔術的動力に頼った移動式監視カメラ――なのだが、スキルヴィルの改造によって双方向通信が可能になっている。
追尾眼本体を前線をはじめとする要所に配備し、その情報をスキルヴィルがモニターによって得る。そこから指令を送れば師団長たるハーヴィ中将はこの拠点から動かずとも良く、非常に効率的な任務遂行が可能になる。
だが、追尾眼の奮闘する師団員の映像とは裏腹に、現状はけが人が次々に運び込まれてくる。元々、魔術というものにあまり強く頼らないハーヴィ中将は追尾眼を真っ先に疑った。追尾眼の情報がどこかで操作されていれば、そこから指令を送っても意味をなさない。
「おかしいな。そんなはずはないんだけど……」
スキルヴィルはモニターの前でキーを叩いている。追尾眼の操作は体系化されたLPの機構を流用しており、視覚的にわかりやすいGUIで確認することができる。モニターの映像の隅で小さなウィンドウが開閉しながら、動作に異常がないことを告げていた。
「ようやく来たか」
黒光りする巨大な航行艦が青空の中に現れた。ハーヴィはその船を複雑そうな表情で見つめた。
「援軍ですか? 必要ですかね……」
疑り深いスキルヴィルの言葉に、ハーヴィは忌々しげにため息をついた。第四区画がずっと平和で、訓練とパトロール以外にすることがなかった防衛師団なのだから仕方がない。まだ若いスキルヴィルは戦場というものを知らないのだ。
政府の防衛師団がギルドに頼らなくてはならないのはシャクだったが、彼らは圧倒的に戦場を知っている。下手な師団員よりは百倍以上まともな働きをしてくれる。
宇宙航行艦ドレッドノートが議事堂付近の開けた場所に着陸し、その中から戦場を知る者達が下りてくる。ここから本当の議事堂防衛戦が、始まる。