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『ヒール48』

『ヒール48』




「一人ずつと言わず、全員一緒に戦えばいい。面倒だし!」

「ずいぶんと威勢のいいドワーフだ。こっちは6人いるのだぜ。6人対4人で勝てる気か?」

「勝てるから言ってる」


 強気のミヤマに向こうは余裕で来る。


「おいおい、Eランクが俺らのCランクパーティーに勝てるとでも思ったか。舐められたものだな。最初は俺から行かせてもらう。俺はトリプルシックスだ、ドワーフさん来てみな!」

「望むところだ。私はミヤマ、女だからと言って手加減はいらない!」

「大丈夫かミヤマ?」

「トレイル、心配するな」

「頼むぞミヤマ!」

「絶対に勝て!」


 ローズとパピアナも声援を送り、俺も止はしなかった。


「これからお互いのパーティーメンバーで戦っていただく。ただし私が勝敗の判定をする。致命傷まで戦う必要はなくて、力がわかればいい。よろしいかなミヤマ?」

「了解した」

「ドワーフ、これは受けたことあるかな。トリプルズ!」


 試合開始の合図と同時に相手側のトリプルシックスが仕掛ける。

 何をするか……。


「速い!」


 ミヤマが構えるよりも先にトリプルシックスが接近していき、ミヤマに切りかかった。

 移動速度が普通じゃない速さだ。


「……よくぞ防いだな。口だけの相手のではなさそうだ」


 ミヤマはとっさにハンマーで剣を防いでいて、傷はない。


「今のは……目の前から消える程に速かった」

「ミヤマ、相手は特殊なスキルか魔法を使っているに違いないぞ!」

「ふふふ、よくぞわかったな。それは俺のスキル、トリプルズ。通常の速度の何倍にも速度アップする。Eランク程度の冒険者に俺は見えないだろう!」

「ミヤマ、逃げろ!」

「速さでは勝てないよ!」


 ミヤマに聞こえただろうが、聞こえたときには相手の攻撃が迫った。

 何度となくハンマーで防御しても、ミヤマが攻撃には転じられなくて不利な場面に。

 これがCランクパーティーの力か。

 思っていた以上に手強いな。


「トリプル、そのままさっさと倒せ。時間をかけ過ぎだ」

「倒すさ。しかしドワーフだけにパワーはある。だがパワーがあっても速度が遅すぎて話にならぬ。負けを認めな」

「ふんっ、負けていない。まだこれからだ。トロールハンマー!」

「こ、これは……」


 トロールハンマーを繰り出すと上から叩きつけるようにしてハンマーを振り下ろす。


「あははは、遅い遅い遅い!」

「トロールハンマー!」

「トロールハンマー!」

「遅い遅い遅い!」


 何度も振り下ろすが、速度の違いがあり過ぎる。


「ダメだ、ミヤマの速度ではトリプルシックスの速度に追いつけない!」

「危ない!」

「あははは、遅すぎて笑えるぞ。あまり時間をかけると俺が仲間に笑われるのでな。ここらで勝負をつけるぞ!」


 トリプルシックスが勝負を決めに行くと宣言した。

 厳しい結果になりそうな気がする。


「あっ!」

「何だ!」

「トリプルシックスの動きが止まった。トレイル何があったの?」

「わからない。だけどトリプルシックスに不測の事態があったと思えるな」


 攻撃に転じる直前にトリプルシックスが停止した。

 停止するからには理由があるはずだ。


「お前……何をした……」

「自分の足を見てみなさいよ。私が作った穴に落ちている」

「穴? しまった。いつの間に穴を!」

「トロールハンマーで作った穴。あなたが逃げている時に同じ所を叩いていた。そしてトロールハンマーのスキルは穴を掘るスキル。落とし穴も作れる」

「相手に気づかれないうちに穴を掘っていたとは、めちゃくちゃにハンマーを振り回していたのじゃなかった!」

「さすがドワーフ族!」

「俺も気づかなかったよ」


 全く気づかなかったし、負けると思ってしまった。


「トリプルシックス、ミヤマ、戦いはここまで。両者の力はわかった」


 審判役のミュートエアーが試合を終えさせると、ミヤマはハンマーをおろした。


「トリプルシックス、情けないぞ。相手はEランクパーティーなのに」

「すまん。Eランクというのがあり、油断した」


 トリプルシックスは仲間から失笑されていて、勝てる相手だと断定していたらしい。


「良くやったなミヤマ。なかなかの健闘ぶりだ」

「トレイル、褒めてくれるのは嬉しいが、力はトリプルシックスが明らかに上だった。Cランクてのは嘘ではない」

「負けもしなかったのだから、いい試合だったよ。次は私が出る。大丈夫よトレイル、心配しなくて」

「パピアナは心配だ。ケガさせたくないしな」

「バカっじゃない、ケガなんてしないもん!」

「ケガしたら俺がヒールしてやる。安心して試合に行きな」

「……トレイルが言うなら行くわ」

「パピアナは魔法が使えるし、応援します。頑張れパピアナ!」

「任せなっ、ローズ!」


 ローズに手を上げて声援に答えた。

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