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曇りのち晴れ

作者: 清来なる


 ─私は今年の春、とても深い思い出になった高校生活に幕を閉じました。


 産まれも育ちも群馬で暮らしていた博燈あゆみ(はくとう あゆみ)。

あゆみの中学時代は、物静かで人見知りな性格でよく小説を読んだり、大好きな絵を書いたりしていた。

そして、中学校を卒業し家が近いという理由から、群馬にある富ノ浦高校に入学したあゆみは、新しい友達をつくろうと気合が入っていた。なぜなら中学校の時は、友達があまり居なかったからだ。

入学式が終わり、自分のクラスに行ったあゆみは担任の先生が来るまでの間、席が近い人と積極的に話しかけに行っていた。たった数分だけど、あゆみにとっては長く感じた。そして高校で、初めての友達ができた。彼女の名前は木谷なむという綺麗で、笑顔がとても似合う少女だった。なむとは、休み時間や放課後など遊んだり話したりしていた。あゆみにとっては、毎日が充実していてこのまま続くんだろうとそう思っていた─

入学して気づけば、半年が過ぎようとしていた。

 その頃には、なむとあゆみ、そして他の四人の友達も入り、グループで行動するようになっていた。休み時間も教室の移動も昼食も全て、そのグループと行動していた。あゆみは、そんな一日が楽しかった。もう一人じゃない、私は素敵な友達と出会えたんだと心の底からそう思っていた。だけどそれは長くは続かなかった。

ある昼食の時に、なむがあゆみに話した。

 「あゆみってさ、前から気になっていたけどご飯食べる時、なんで首を上下に 動かしながら食べるの?」と笑いながら博燈あゆみに問いかけた。すると、なむにこう話した。

 「いや、癖なんだよね。自分では気づかなかったけれどそんなに動いてた?」

 「動いてたよ。小刻みにね。ねぇ、みんなも見てたし言ってたよね?あゆみの 食べ方が気になるって」

 「そうなんだ。みんなも言ってたんだ。気づかなかった。」

陰口を言われていたことに対し、傷ついたがその場では何とか笑顔を保っていた。これだけで傷つくんなんておかしいと自分に言い聞かせ、グループの中に居続けていた。なむは、出会った時と比べて性格が変わり、自分が気いらない人には話しかけられても相手にせず、まるでその人がそこに存在しないかのように態度に出していた。そして、自然となむはグループの中でリーダー的な存在になっていて、グループの中にいる他の四人も顔色を伺いながら、嫌われないよう好かれるために、なむのことを褒めたり誘われたら断らないようにしていた。ただ、あゆみだけは違った。

確かに、あゆみもみんなと同じことを真似してやっていた。好かれたいが為にみんなのやっていることを真似していた。けれど、それが間違いだった。他の四人からすると、それはとても不快でたまらなかった。だから、積極的にあゆみを避け、仲間はずれにしようと昼食中も教室移動も話を振らずにしていた。その光景を見て察したのか、なむも面白そうに参加したのだ。そして遂に、博燈あゆみはみんなの後ろにただ着いていく存在になった。今まで楽しそうに笑っていたのにまた、一人になるのかと怖くて堪らなかった。だから必死で、後ろでもいいからそのグループに居たいとしがみついた。いつしか、あゆみはそのグループにいても全く笑うことが出来なかった。たとえ笑ったとしても苦笑いしか出来なった。ある少女は、その光景を遠くから見て遠くからいて、とても楽しくなさそうとしばらく観察していた。

少女は、そうっとあゆみに声をかけた。

 「ねぇ、お名前なんて言うの?」

 「私は、あゆみだけど・・・」

 「そう、あゆみ・・・ちゃんね。」

 「貴女は?」

 「私は、霧島凛きりしま りんです。よろしくね」

 「う、うん。よろしく」

と、挨拶程度に凛は笑顔に話した。

あゆみは、少し驚いたように凛と話、変わった子だなと思いながらその場を後にした。

それからというもの、頻繁に凛はあゆみに話しかけていた。それに対し、

あゆみは不快な気持ちにはならず、寧ろ喜んでいた。

次第に二人の仲はとても良い方向に向かった。

 そんな時、あゆみがトイレに行こうと教室を出てすぐのことだった。

彼女の目に映ったのは、なむと凛が楽しそうに廊下で話していた。咄嗟にまるで何も見ていなかったように、廊下の地面を見ながら小走りでその場を去っていた。その後、トイレに着き間もなく急に嗚咽が出て、その嗚咽で段々気持ち悪くなってしまった。数分後、やっと落ち着いたのかトイレから出て、教室へと戻った。自分の席に着くと、落ち着いて気持ち悪くなった状態のことを振り返った。

 「今までこんなことなかった。なむと凛が楽しそうに、廊下で話して 居た様 子を見てさっきのようになった。他に考えられるのは・・・。」

あ、そうだ。私一人になりたくないという気持ちがあって、だけど同じグループ内から、癖のある食べ方と馬鹿にされ、それでもそんなのはすぐに終わる、また楽しかったあの頃に戻るって信じていたけれど、何でもかんでも真 似をするからと不快に思われて、避けられるようになっていた・・・。これ が原因か。」と、原因を見つけ出てまた私の嫌なところとか言っているのかなと、多少不安にはなったが、気にしないようにと好きな絵を書いたり、グループ内の輪に入って、気を紛らわしていた。その時から、なむと凛が話しているところが度々、見かけるようになった。

そしてある放課後、凛が一人で帰っていく姿を見かけ、あゆみが急いで凛の元へ向かい話しかけた。

 「ねぇ、凛ちゃん。なむちゃんとは仲良いの?」

 「うん、仲良いよ。なむとね、親友に近い感じかな。あぁ見えて意外と寂しが り屋で自分と話が合う人って中々いないとかで、それで私と話が合うし遊ん んでいて楽しいからって、そう言う話をしているんだ。」

 「そ、そう・・・。」

 「えっ・・と、あゆみちゃんはその話をしたくて声かけてくれたの?」

 「まぁ、それもあるけれど、凛ちゃんは私のことどう思っているの?なむちゃ んから聞いているでしょ?」

 「あ、あぁ〜そう言うことね。うん、聞いているよ。今までのこと全てね。

確かに、なむや他の四人のやっていることは、良くないなって思っているよ。ただ、一つ疑問があるの。なんで、あゆみちゃんはそこに居続けるんだろうなって。私、あゆみちゃんがあのグループで笑えていないこと知っているし、見たこともある・・・というよりは観察してたに近いかな。ねぇ、どうして?」

 「そ、それは、中学校の時から友達が少なくてだから、高校では友達をつく りたい、もうずっと一人で居るのは嫌だから・・・。だから・・・、あのグループに居続ければ、また楽しかったあの日に戻れるかなって思っている。」と、二人は日が暮れるまで話をした。

結局、あゆみのモヤモヤはむぐ得ないママだったが、一つだけ分かったことがある。それは、凛は良い人ということ。ちゃんと話を聞いてくれて、親友に近いと言っていた木谷なむのことを庇うんじゃなく、本心を言ってくれた。それが分かっただけでも嬉しかった。

 そして、翌日学校に行き避けてくる明らかな態度を見て、あゆみは辛さを超えてもう何も思わなくなっていた。昼食も会話はせずにただその場に居るだけ。美味しいはずのお弁当も美味しくはなかった。

その光景を、凛は見ていてもう限界を感じ呆れたようにあゆみを眺めていた。そして休み時間に、凛があゆみを廊下に呼び出した。提案をとして聞いてほしいとだけ伝え、あと自分で考えてと前置きをした。

 「ねぇあゆみちゃん、私のグループに入らない?」

 なんの話だと思えば、その提案と驚きを隠せず、何を言われているのか一生 懸命頭の中で整理した。

 「えっ・・・と、それはなんでそうな話になったの?」と一言質問し、一つ一つ噛み砕いていこうと考えた。

 「以前、私が下校中に胸の内をあんなに話していたじゃん。それで、なむと あゆみの双方の意見を私の中でまとめてみたの。それでこういう話をしたの。

 あ、もちろんなむからは、承認済みだよ。で、どうしたい?」

 「えっ、待って待って。いつからなむちゃんとそういう話をしていたの?」

 「あぁ〜、それはね前に二人で休み時間に廊下で話していて、聞いてみたの。

 なむにとってあゆみちゃんはどういう存在?って。そしたら、普通の友達って言っていたけれど、その時の表情は少し不快な顔をしてて、まるで聞かない でって言われている様子だったの。じゃあ、私があゆみちゃんをこっちのグループに入れさせてもいいかな?って言ったら、なむは笑顔でいいよって言ってたの。」

 「そんな話をしていたんだね。でも、嬉しい言葉だけどやっぱり今まで通り、な むちゃんのグループに居るよ。だって凛ちゃんから誘われて、行きますって都合が良すぎると思うんだよね。だから今まで通り残る。ごめんね。でも、こん な私を誘ってくれてありがとうね。」

この話を伝え終わると、あゆみは教室に戻ろうとした時、凛があゆみの手を掴んだ。そして最後に一言だけ言わせてとこう話した。

 「自分に素直になって」と。

そして、伝え終わるとその手を離し授業の始まる鐘がなり、凛も教室に戻った。

授業が始まりしばらくして、あゆみはあることに気づいた。それは、私が最後に言った一言を伝えた時、あゆみから伝わってくる手の震えと同時にもう片方の手で涙を拭っていたことに・・・。気づいていたし、そこで確信も持てた。あゆみは、私に目を向けてくれると信じた。

そう凛が考えていると同時に、あゆみもゆっくりと現状を把握しながら頭の中で整理をしていた。そして凛が最後に放った「自分に素直になって」という言葉が強く心に刺さってた。彼女の中では、もう心の中で決まっていてそっと自分自身にこう呟いた。

 「凛ちゃんの側にいたい、凛ちゃんともっと仲良くなりたい」と・・・。

 そしてあの日以来の一週間が経った頃、凛が教室で同じグループの友達と楽しそうに話しているのを見かけたあゆみは、不意に凛の元へ向かった。後で気づいたことだが、この時の彼女は気づいたら身体が勝手に動いていた、という本当の意味を理解したそうだ。そしてあゆみは、凛の元へ着き面と向かってこう言った。

 「凛ちゃんのグループに入りたい。」と伝え、凛は嬉しそうに満面の笑みで受け入れた。また、あゆみの表情からも笑顔が溢れていた。それを凛は見てほっと一安心した。

 楽しい日々は続き、気づくと私たちはもう二年の夏になっていた。

凛のグループは、凛とあゆみを含め四人になっていた。

元々三人のグループで、凛と小学校から友達の七瀬真弓ななせ まゆみ、そして、富ノ浦高校で友達になった伊勢悠いせ はるか。凛以外の二人もあゆみの現状と、なぜ誘ったのかも知っていたので、二人も積極的にあゆみに話しかけて毎日が楽しかった。

 そんなある日、四人はいつも通り楽しく会話をしていた。

その日は四時間目に体育の授業が入っていて、制服から体育着に着替え終わり四人は体育館へ向かう。その瞬間ときだった。凛はある異変に気づいた。

悠が以前よりも私に凄く話しかけてくるし、何よりも距離が近いと。いつもなら三人で会話していたのに、あゆみが来てから、悠行動は変わっていった。

けれど、それは単に憶測にしかすぎないし、考えすぎだとその時は、そう思った。いや、そう思いたかったのだろう。だけど凛の勘は当たってしまった。

 その日以降も、凛を中心によく絡むようになってきた。徐々に、凛が悠との距離が近過ぎて嫌気がさしてきていた。

凛はその会話を同じグループにも振り、会話を弾ませていた。凛の考えとしては、楽しく過ごしたいという気持ちが強かったからだ。

だけどそれを、悠は、面白くなさそうに目線を下に下げ、その表情を見た凛は、ひとまずそのまま放っておいた。そんな時、別のクラスにいる友達と凛は、何気ない会話をしていた。その会話をきっかけにあの勘が真実へと変わった。

 その友達は、悠と同じ部活動に所属し仲の良いという。そして、部活動の内容やその会話などいろんな話を凛にして、会話の種にしていた。その会話から、なぜかあゆみの名前が出てきた。そして、その友達からこう話された。

 「あゆみって、凛ちゃんが誘った子なんでしょ?悠は、それをあまりよく 思ってないみたいんだよね。」

 「うん、誘ったのは私だよ。悠は私の前では、すんなりいいよって言ってくれ たよ。」

 「悠が言うには、凛ちゃんがあゆみばかり見て、自分を見てくれていない と かなんか不安?を感じていたよ。後、凛ちゃんが取られるのが嫌だって言っ ていたよ。」

凛は、少し動揺を見せた。そして、その話を聞いて、あの時感じた異変と悠の行動で今迄の点と点が一つの線になったことに気がついた。その時凛は、悲しい表情と同時に身体が急に重くなったように感じた。重たい身体を動かせ、授業の鐘が鳴ると友達にこう言って教室に戻った。

 「ありがとう、教えてくれて・・・。」

教室に戻ると、同じグループの三人が仲良く会話を楽しんでいた。凛には、その光景が嘘に思えてしょうがなかった。あの笑顔も言葉も嘘なのかと考えてしまいそうになるが、一旦考えることをやめることにした。考えすぎは良くない、相手をよりそう見てしまう。意識してしまうし何よりも、自分自身が疲れてしまうことは分かっていた。落ち着いた時にまた改めて考えればいいと思った。

 数日が経った頃、相変わらず楽しいそうに話す悠に少し変化が見えた。それは、あゆみを省いての会話を始めた。そして会話だけではなく、行動までも明らかに出ていた。凛に近づけないようにする為に、あゆみを端へと行くように、しむけていた。そして悠は、わざと凛と真弓の三人の横並びになり、あゆみを入れさせないよう考えて行動していた。

悠にとって凛は、自分に居場所を作ってくれた存在で、尊敬もしていた。考え方や友達が多いことなど、自分が持っていないものを凛は持っていたからだ。

だから、あゆみが妬ましくて羨ましくて仕方なかった。真弓は、凛と昔からの友人であり、凛のことは何でも知っていた。優しくていつも笑顔だけど、どこか寂しそうで、そういう内面的なところは他の誰よりも知っていた。二人がそういう話をしているところみて、何だか少し距離があると感じていた。

私も真弓みたいになりたいとそう思うようになっていた。凛にとって必要とされたら、一歩距離が近づいた気がすると思った。そんな時、あゆみがグループに入ってきた。正直、やきもちをやいた。凛はあゆみとばかり話すようになっていた。凄く気に食わなかった。だから、優越感に浸りたくてあゆみを仲間はずれにし、このグループから出ていってもらうためにいろんな策を考えていた。

 ある日の放課後、その時は全部活動は休みで凛は一人で帰ろうとしていた。そこに悠が来て、何やら誰にも言えない話があるということで、一緒に帰ることになった。学校の門を通り、同じ学校の人がいないか辺りを見回す悠。その様子を見て、凛は相当誰にも聞かれたくない話だと分かった。そして、悠は誰もいなくなったのを確認すると凛に話した。

 「ねぇ、凛ちゃん。あゆみちゃんのこと何だけど・・・。」

悠は言いづらそうに手が落ち着かない様子で、話していた。

 「うん、あゆみちゃんがどうしたの?」

 「実は、とても言いづらいんだけど陰で凛ちゃんの悪口を笑しながら話して いたのを聞いてしまって・・・。」

 「あゆみちゃんが?まさか、そんな事ないでしょ!?だって、あゆみちゃん 優しくて大人しくて、良い人だよ?」

 「私もそう思っていたけど、確かに他のクラスの人話しているところを偶然 見ちゃったし、聞いちゃったの。」

 「そうなんだ・・・。悠、教えてくれてありがとうね。」

悠は嬉しそうな表情をしていた。

自分が凛にとって大事な存在だとそう思ってた。

 そして翌日、いつものように登校して教室入って挨拶を交わした。

以前と変わったことは、あゆみはグループの中で悠によって省かれていた。あゆみは、あえて気づかないフリをし続けいていた。けれど日が経つにつれ、少しずつ元気がなっていき笑えない状態になりかけていた。凛は、彼女の様子を見て一緒に居るのに距離が遠く感じた。悲しいそうな寂しそうな表情を浮かべていたことは、一目で分かったからだ。何故なら、以前にも同じ表情を見たことがあったからだ。そう、このグループに入る前にいたあのグループに・・・。

このままでは、またあゆみを悲しめてしまう。ようやく心から笑えるようになっていたし、また同じことがあって良いかと考え、何とかしなければと凛は、その日の放課後に真弓を呼び出し今までの悠の行動や友達から聞いたこと、そして昨日、悠から話されたことを全て真弓に話した。

真弓は、驚いていたが一旦落ち着きを取り戻そうと深呼吸をして、凛の話をしばらく聞いていた。

真弓も少し思い当たる節があった為、凛の言っている事は何となく理解が出来た。凛は、全て話を終えると真弓にこう問いかけた。

 「ねぇ真弓、このままで良いと思う?」

 「良くないね。あゆみちゃんが可哀想。」

 「だよね、私少し考えていて真弓にお願いしたいことがあるんだけど・・・。」

 「どうしたの?私にできることならやるけど。」

 「しばらくの間、積極的にあゆみの側にいてあげてほしい。私は、とりあえず悠と話すようにするから。

 と言っても、一緒のグループでいることは変わらないけど、ただこのままだとあゆみが省かれ続けるだ けだからね。」

悠は、心配そうに凛を見ていた。

 「分かった。凛は大丈夫?」

 「何が?」

 「いや、凛は無理していないかな?思ってさ。」

 「んー・・・。正直、無理してるかな。だから、悠にこのことを伝えた。」

 「そうじゃなくて、今の感情のまま悠としばらくの間居て良いのかって言っているの。」

 「こうするしかない。これしか方法がないの。悠の行動を見て、それしかないと思った。だけど、二人き りじゃないし、それが唯一の救いかな。」

 「凛がそこまで言うんだったらそうするよ。だけど、昼食の時はみんなで話せるしなんとかなるしね。」

 「うん、何とかなる。」

だけど悠は、凛のことを心配していた。凛がこの話を持ちかけてきたことは、一番はあゆみの為だと思うけど、凛自身も少し疲れていた様子だったから。凛は昔から、自分自身を犠牲にして他人を為に尽そうとする傾向がある。そして最終的に一人で悩み、憔悴してしまうからだ。

そして、その話を終えると真弓と二人で下校した。

 翌日、凛は何も変わらぬ様子であゆみや真弓、悠に挨拶を交わし、昨日真弓と話した頃を実行に移した。

そんな事知らない、悠はいつものようにあゆみを省く行動し、凛はあえてそれに乗った。

移動教室の時や休憩時に、積極的に凛は悠に話しかけ、満足させようとしていた。後ろには真弓とあゆみが居て、凛は悠と話しながらふと後ろに目を向けると、あゆみが楽しそうに真弓と話しているところを見て、安心した。

 この状態をしばらく続け、私たちは三年の春を迎えていた。

グループの状況は、あゆみが来た時と同じ雰囲気で良い方向に向いていた。

 ある日、久々に凛と真弓は二人で休み時間を過ごし廊下を話しながら歩いていた。

その時、偶然悠と会った。

悠は、落ち着かない様子で話しかけて欲しそうに凛を見ていた。

凛は悠に声をかけてみた。

 「どうしたの?今からどこか用事があって行くの?」

 「いや、これから職員質に用事があって行く途中だよ。」

 「そうか。なら、また後でね。」

凛は伝え終わり、真弓と話の続きをしようと歩き始めた時、悠は待ったをかけてきた。

凛と真弓は、足を止めた。

 「どうしたの?悠」

 「いや、その・・・やっぱり職員室は今じゃなくて良いかな思ってきて話に混ぜてよ。」

 「えっと・・・。今から職員室に用事があって行くんだよね?それなら、そっちを優先させた方が良いんじゃな  い?」

 「いや、大丈夫。」

悠は、何処となく挙動不審だった。

凛と真弓はその様子を見て、これは多分嘘をついてまで凛と真弓と一緒に居たいんだということを察した。そして、悠は必死な様子だったので三人で教室に戻った。すると、あゆみは一人で居て本を読んでいた。凛はあゆみに話しかける。

 「あゆみ、その本面白い?」

 「うん、面白いよ。」

 「そうか、それなら良かった。今度私も読んでみようかな。」

そこから、あゆみは本の話題から凛の本の良さやお勧めの本を話し始めた。

その輪の中に、真弓も悠も居て、四人であゆみの話を聞いていた。

話し終えると、あゆみが悠に話しかける。

 「職員室行ってきたんだね。」

悠はその言葉に筋を凍るほど、少し焦っていた様子見えた。

 「いや、職員室行こうと思ったんだけど、今じゃなくて良いかなと思って行くの止めたんだよよね。」

 「そうだったんだね。」

あゆみは、その話を終えると悠は落ち着きを取り戻した。

その様子を間近で見ていた、凛と真弓は頭の中でこう思っていた。

 「やっぱり、あれは嘘だったんだ・・・。」と。

悠は、あゆみに対し心の中で、何故この二人の前でそのことを話してきたのかと怒り狂っていた。

その日以降、悠はあゆみと凛が楽しそうに話しているところを見て、その話に無理やり割って入って行き、凛の手をグイと引っ張り悠は凛に話してきた。凛は一体何が起きているのか分からず、話しかけてくるあゆみと悠を見た。とりあえずこの状況を何とかしなければと、考えていた。

その様子を察した真弓は、あゆみに話しかけ凛を救おうとしていた。

凛は周囲を見渡し、あゆみの話し声は真弓に向いていることが分かり、悠はそのまま話続けていた。

凛は、悠の話を聞くことにした。そして休み時間が終わる鐘が鳴り、先生が来る前に皆が急いで席に着いた。凛はこの鐘に何とか救われていたし、真弓にも感謝をしていた。凛はもう限界だった。疲れていた。その日の放課後、真弓に相談した。

 「もう限界だ・・・。」

 「うん。どうしたい?」

 「これからの事を考えると、修学旅行もあるし多分このメンバーだと思うから何とか良い方向に向けたい。元に戻りたい。私は、ただ楽しく話たいだけなんだよ。」

 「うん。そうだね、じゃあ四人で話そう。良い方向に持って行くためにね。」

凛はその言葉に泣き出しそうになっていた。

 「うん。」と一言いい、気持ちを入れ替えた。

凛は、あゆみと悠と真弓に今度の日曜日に遊日に誘い、二人は嬉しそうに頷いてくれた。

凛は三人に待ち合わせは時間と場所を話し合い、決めた。

 そして日曜日、凛は窓から差し込む太陽の日差しから目を覚める。

カーテンを全開に開け、窓を開けた。

天気は晴ればしい雲一つも無い快晴だった。とても綺麗な青空で、良いことがありそうと、凛はワクワクしながら、みんなと待ち合わせした場所に足を弾ませながら向かった。

待ち合わせ場所に付き、先についていたのが真弓だった。

 「真弓、おはよう。」

 「凛、おはよう。」

 「今日は、とても良い天気だね。良いことありそうだよ。」

 「そうだね。そう願おう。」

二人は微笑みあった。

そして、悠が着きその後すぐにあゆみも着いた。

四人が揃い、デパートで買い物をしたり、プリクラを撮ったりと思いっきり楽しんだ。

そしてお昼時間になり、ランチできるところを探した。

四人とも和食が好きで、豚カツの良い香りに誘われ豚カツ屋に入った。

注文し終わり、衣がサクッとお肉はとてもジューシーな豚カツを堪能した四人は店を後にした。

その後、Tamiカフェと書かれたカフェに入りお茶をした。

そして、凛は口を開き今まで思っていたことを話した。

 「あのさ、私今まで思っていたことがあるの。私ね、このグループで居るなら楽しく高校生活送りたいのね。 だから、仲良くやろうよ。私知っているよ。悠は、あゆみが嫌いなんでしょ?」

悠は、凛の問いに驚いていた。

返す言葉が見つからず、只々黙ることしかできなかった。

そんな悠を見て、凛は話しかける。

 「ねぇ、悠。黙ってっちゃ分からないよ。何か言いたいことあるなら話してよ。お願い。」

悠は凛の言葉にここまで言われ、口を開いた。

 「うん。凛ちゃんの言う通りだよ。私は、あゆみが妬ましく羨ましくて嫉妬していた。だから、あゆみちゃ んが嫌いだから、避けてきた。」

 「そうか。なんでそう思ったの?」

 「それは・・・。」

悠は言いづらそうにしていた。

凛はその様子を見て、言いたくないなら無理して言わなくていいと悠に話した。

それでも、悠は今話さなけけばまた同じことになると自分自身と葛藤していた。

そして数分後、悠は重たい口を開いた。

 「実は、とても恥ずかしい話何だけど私がまだ小学生の時のこと。仲の良かった友達から急に仲間外れさ れたことがあって、気づくとひとりぼっちになっていたんだ。そして、それが中学校入っても基本一人で いてね・・・。」

三人は悠の話を受け入れ、話を聞いていた。

凛は悠に聞いた。

 「その時、とても辛かったよね。寂しかったんだよね。」

悠は凛の言葉に、目になだを浮かべ頷いた。

そして、悠は話し始めた。

 「寂しかった。辛かった。本当はみんなと話したかった。遊びたかったんだ。」

 「悠は、あゆみちゃんにどうして避けるような行動をしたの?」

 「それは、あゆみっちゃんが凛ちゃんと話てて楽しそうで羨ましかった。一緒にいた時間は、私の方が確 かに長かったのに、凛ちゃんと私との距離が少しずつ遠くなって行くように感じてすごく不安だった。 だから、自分を守りたくてあゆみちゃんを避ける行動をした。もう一人は嫌だから。そう思っている自 分ももっと嫌になる。」

悠は、今までの想い伝え、目に溜まっていた涙がぽろりと頬をつたって、服に溢れた。

 「気づいてあげられなくてごめんね。言ってくれてありがとう、悠。」

悠は、泣きながら首を振り、あゆみはその光景を見て目を下に向けていた。真弓は、あゆみの背中を撫でるように摩った。

悠は、泣きながらあゆみに伝えた。

 「あゆみちゃん本当にごめんね。辛い思いをさせてしまって、本当ごめんなさい。」

その言葉にあゆみは、急に涙が出てしまったが、何とか悠の気持ちに答えたいと口を開いた。

 「ううん。私は大丈夫だよ。私、悠ちゃんの事はあゆみ許しているしそれよりも私は、悠ちゃんと仲良く なりたいの。私とお友達になってくれますか?」

あゆみはずっと悠と仲良くしたかったみたいだった。そのことは初めて聞いた凛と真弓は少し驚いていた。あゆみと悠の想いを聞けて良かった。と思う凛は心から嬉しかった。

悠は、あゆみの想いに答える。

 「こんな私だけど、仲良くしてください。」

二人は、微笑んだ。


 その後は、四人でたくさん笑い、たくさん話したし高校生活を楽しんでいた。

そして、修学旅行も満喫できとても良い思い出になった。


 四人は卒業式を迎えた。

最後は四人で一緒に帰り、分かれ道で凛が晴れ晴れとした気持ちを込めてこう言った。

「また遊ぼうね。」と。

三人はそれに答え、手を思いっきり左右に振った。

あゆみは涙を浮かべ、凛と出会ったことにとても良かったと心からそう思った。





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