福引
昇降口に着くと三人が待っていた。その空間だけイルミネーションの様な輝きを放っていた。
「遅かったな。」
「少し五十嵐先生と話してたから。試合に来られなかったお詫びに五十嵐先生から商店街の福引券貰ったよ。」
「それ私も持ってる。」
「よし、じゃあ商店街に向かおう。」
商店街は学校から徒歩五分くらいのところにある。僕と悟は自転車通学のため、自転車を押しながら歩く。
「私全然運ないんだよね。こういうの当たったことないよ。」
「俺、そういう時だけ神頼みする。普段特に信仰していないけど。」
「分かる。私もこれからはしっかり自分で起きるのでどうか当ててくださいって祈ったりする。」
なんて可愛らしいのだ。僕が毎朝起こしてあげたいくらいである。
「俺も! いっつも母ちゃんに叩き起されてる。」
僕が毎朝起……。同じ話のはずなのにこんなに聞こえ方が違うものなのか。神の力より恋の力の方が凄いのではないかと思った。そんな他愛もない話をしていると商店街が見えてきた。僕と悟が近くの駐輪場に自転車を止めると、商店街の福引きに向かった。
「私も二枚持ってるから一人一枚引こう。」
「俺は大樹に任せる。こいつ運いいから。」
「いつも凄い格好で登校してくるのに?」
内藤さんに運の悪い奴だと思われていたのか。そう思われても仕方ない。星座占いで悪いことを言われると、用水路にはまったりして、畑仕事終えた後のような格好で登校しているのだから……でも、ここで一等を引いて悪いイメージを払拭しよう。
「任せて。僕、結構運いいから。」
「瞳ちゃんはやるよね?」
前田さんは静かに頷く。だが、何処か絶対に当てたいという強い意志を感じた。僕は野球の時辺りから、実は前田さんは結構感情豊かで、ただ感情を表に出すのが苦手なだけなのではないかと感じていた。内藤さんが係のお姉さんに福引券を手渡し、ガラガラに手をかける。
「明日から一人で起きます。だからお願いします。」
『ポロン。』
白色の玉が出てきた。
「参加賞のお菓子の詰め合わせです。」
お姉さんから参加賞にしては大きいお菓子の詰め合わせが渡される。次に前田さんが引く。表情は変わらないものの、何となく力が入っている気がする。
『ポロン。』
緑色の玉が出てきた。
「五等の商店街四千円分の商品券です。」
少し不満そうに見える顔で商品券を受け取る。今度は僕の番だ。内藤さんと遊びに行くチャンスだ。僕は二枚の福引券をお姉さんに手渡す。
「よし。」
一等が出るように強く念じながら回す。おならをしないように細心の注意を払いながら。
『ポロン。』
白色の玉が出てきた。
「参加賞のお菓子の詰め合わせです。」
お姉さんからお菓子の詰め合わせが手渡される。
「しっかりしろよ。運いいんだろ?」
後ろから悟が茶々を入れてくる。
「参加賞なんて珍しいね。」
僕が悟にムッとしていると僕らの後ろからお姉さんと同じ法被を来た中年男性が話しかけてきた。