決意?
「君たちが助っ人に来てくれた超常現象研究部?」
うちの高校の名前が入ったユニフォームを着た、人の良さそうな野球部が話しかけてきた。
「そおっす。俺は悟るっす。よろしくお願いしやす。」
「ありがとう、助かるよ。僕は猛。よろしく。」
「僕は大樹です。よろしくお願いします。」
「私は香澄です。よろしくお願いします。」
「私は、前田瞳です。よろしくお願いします。」
前田さんの声は、とても綺麗で安心する声だ。一通り挨拶を終える。猛さんはうちの野球部のキャプテンで小学生の頃から野球をやっていて、中学時代は強豪と言われるところに在籍していたらしい。うちの高校は地区一番の弱小と言われている。そのせいか今年の入部希望者は、いなかったそうだ。しかも、隣町には甲子園常連校があり、やる気のある者や野球経験者はそちらに流れてしまう。そのためうちの学校はほぼビギナー集団なのだ。強豪校にいた猛さんがなぜこの学校に来たのだろうという疑問が浮かんだが、野暮な質問な気がしたので喉の奥にしまい、僕は別のことを質問した。
「僕たちはどのポジションを守ればいいですか?」
「今チームに必要なのが、外野とピッチャーなんだけどピッチャー出来たりする?」
「大樹は中学時代野球やってて、魔球カーブ投げるそんなすげーピッチャーだったんすよ。」
「それは頼もしいな! 頼んでもいいかな?」
「大樹君そんなに凄かったの!? 見てみたい!」
ピッチャーがいない野球部って、着ぐるみの胴体だけ着て顔は被らずに子供の前に出るのと同じレベルで問題があるのではないかと思う。このチーム大丈夫なのか? そんな一抹の不安があったが、内藤さんに期待されてはやるしかない。
「分かりました。ピッチャーやります。」
「ありがとう助かるよ。大会まで1ヶ月しかないから早速練習に入って貰えるかな? みんなにも紹介するよ。」
結局守備は僕がピッチャー、前田さんがライト、内藤さんがレフト、そしてどちらのカバーにもすぐ入れるように悟がセンターを守ることになった。打順は僕、悟、前田さん、内藤さんの順に下位打線に入ることになった。今まで野球は男子しか出られなかった。だが、最近は男女平等が強く唱われ、女子も甲子園に選手として出られるようになっていた。しかし、一つ別のとても大きな問題がある。それは僕が中学時代テニス部であったことである。僕は魔球カーブどころかストライクを投げられるかも分からない。自己紹介を終え、肩を温めるためにキャッチボールを始めてばらばらになったところで僕は悟を呼び止めた。
「おい、なんであんな噓ついたんだよ。話に乗った僕も僕だけどさ......野球なんて遊びでぐらいしかやったことないよ。」
「大丈夫。大樹には力があるんだから。」
「僕そこまで力強くないけど。」
「その力じゃねーよ。念じれば思い通りに出来る超能力だよ。念じれば魔球カーブなんて余裕だろ。」
「出来るかもしれないけど......」
「香澄にいい所見せるチャンスだぞ。」
「どういう意味だよ。」
「お前香澄のこと好きだろ。」
「えっ! 何で知ってるんだよ。」
「見てれば分かるよ、香澄のこと見る時、白目がなくなるくらい瞳孔開いてるからな。」
僕は恋愛経験がない。だからこういう話に疎いため、今まで好きな人を誰にも話したことがない。それなのにばれていたなんて......。もしかして僕の気持ちは内藤さんにもばれているのではないかと心配になる。
「安心しろ俺しか気づいてないから。」
僕の心の声と勝手に対話するな。そんなに見透かして将来レントゲンにでもなるの? 怖いんだけど。そんな恐怖を押し殺し、僕はまた口を開く。
「僕は恋愛に力は使わないって決めてるから。」
「恋愛じゃなくて、野球に使うんだよ、それならいいだろ?」
今更野球なんてやっていないとは言い出す勇気などない。なので、僕は説得されたことを言い訳に超能力を使うことにした。僕たちはノックからバッティング、そして他校との練習試合などを時間の許す限り行った。ほとんどが初心者だからか、悟が凄いのか分からないが、悟は他の野球部と同じかそれ以上のプレーをして見せた。