部活動
『キーンコーンカーンコーン』
いつもと変わらぬ一日が終わった。放課後を迎えた僕ら三人は超常現象研究部と書かれた表札の付いた教室に向かう。部員は僕、悟、内藤さんと隣のクラスの前田瞳さんの四人である。活動内容は名前の通りである。町中で起こった超常現象と思われることを検証する部活である。大抵は動物や劣化が原因で、まだ超常現象と呼ばれるものに巡り合えていない。その為、町の何でも屋的存在に成りつつある。教室の扉を開けると先に来ていた前田さんが本を読んでいた。前田さんは、鼻筋の通った綺麗な顔立ちをしていて、一見人気者の雰囲気がある。だが、無口な上に表情が枯渇していて掴みどころがないため、クラスで異様な空気を放っているらしい。
「ヤッホー、瞳ちゃん。」
内藤さんが声をかける。前田さんは本からこちらに目を移すと、無表情ながら会釈ともしゃっくりとも取れる仕草をした。僕らは長テーブルを囲むようにして席に着いた。一人一台パソコンがある。新しいパソコンを学校で購入したため、今まで使っていたパソコンが不要になり部活に支給されたのである。このパソコンに町中から超常現象研究部宛てのメールが届き、検証しに行く。僕は超常現象研究部宛てのメールに目を通すと一通の新着のメールが来ていることに気づく。メールの内容は最近流行っている七不思議を検証して欲しいというものであった。七不思議の内容は、
1.踊り狂う火の玉
2.溺死させようとしてくる花子さん
3.金縛りにしてくるモナリザ
4.走る二宮金次郎像
5.移動する廊下
6.増える階段
7.吸い込まれて消される鏡
というものである。
「この学校二宮金次郎像なんてないよな。」
悟が僕のパソコンを覗き込みながら疑問を口にする。
「今流行ってるこの七不思議は別に学校の七不思議というわけではないみたいだよ。」
「そうなのか。」
「七不思議って全部知ったら死んじゃうんだよね。」
内藤さんもメールについて触れる。
「七不思議は七つ知ると死ぬというのが定番だけど、この七不思議は一味違うんだ。七つ知ると新世界を創れるらしいよ。」
言っていて恥ずかしくなる。この七不思議は少しおかしい。しかも最近これを鵜吞みにした一部の人たちが七不思議を探しだし、新世界を創ることを目標とした団体を作ったらしい。その団体の名前はDioで、イタリア語で神という意味らしい。
『コンコン。』
超常現象研究部の扉を誰かがノックする。
「はい。」
返事をすると革靴を鳴らしながら顧問の五十嵐瑞樹先生が入って来た。髪はセミロングで、薬指には指輪がはめられている。
「あなたたち野球の経験はある?」
五十嵐先生はそう言うと僕らを見渡し、返事を待たずに話を続ける。
「野球部がもうすぐ大会なのだけど部員が足らなくて試合に出られないの。だから、助っ人として出て欲しいのだけどいいかな?」
「せっかくだしやろうよ。」
「面白そうじゃないっすか、俺もやりますよ。」
「僕も別に構わないよ。」
すると全員の視線が前田さんに集まる。前田さんは何も言わずに頷く。
「ありがとう。早速だけど今グラウンドで野球部の子たちが練習しているから参加してきてね。」
そう言い残すと五十嵐先生は教室を後にした。それに続いて僕たちも教室を後にし、校庭に向かった。校庭に着くと活気に満ち溢れているが、どこか寂し気な空気を纏ったグラウンドが広がっていた。