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「いい?今日はこの薫ちゃんの計画書通りに、行動してよ!絶対に余計な事しないでね!」
「「「「は~い!!」」」」
いい返事。今日は前回の反省を活かして、どうとでも取れる様な言い方をしない……
返事をしてるのが予定より1人多いけど、気にしない!気にしたら負けよ!!
何故、こんな事になっているかと言うと、話は昨日に遡る……
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学校に着くと真っ青な顔の薫ちゃんに、いきなり同行会室へ引っ張って行かれた。
中にはもう坂野君が居て、私達を待っていた。
「えっ!?倉本先輩が入院した?」
「そうなのよ!流石に限界だったらしくて、昨日の夜入院したって今朝お母さんから聞いたの。どうしよう?」
「ヤバいな。誰がアイツを呼び出すんだ?俺は無理だぞ!」
作戦決行前に三波さんを呼び出す役の倉本先輩が、過労で入院してしまった。
「どうするの?今から他の人に頼むとか無理だし…… 」
「そうねー。信頼出来る人でってなると厳しいわね。」
「なぁ?誰か知り合いに代わりを頼めそうな人居ないのか?」
豆狸と稲荷狐の知り合いなら居るけど……
「一応、徳さんに聞いてみるわ。
あの人、顔が広いから知り合いに声帯模写の得意な人とか居るかもしれないし…… 」
さっそく六を通して、連絡を取ると『昼休憩の時間までには、」探しておく。』と返事があった。
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六
{『寿司桶いっぱいの、美味い稲荷寿司』で引き受けてくれるそうだ。前に寛現寺の花まつりの時に振る舞われているのを食べた事あるんだって。}
その事を薫ちゃんに伝えると……
「へーお寺の行事に参加した事ある人なんだ。」
「なんか相手の人、無類の稲荷寿司好きらしくてね。『寛現寺の稲荷寿司がもっと食べたい。』って言ってるの。」
寛現寺の花まつりで振る舞われる稲荷寿司は、美味しいと評判だ。
ただし、数に限りがあるので《1人1個づつ》という暗黙のルールがある。遅く行くと食べれない事もあるのよね。
「そんな事ならお安い御用だけど、本当にそんな事でいいの?」
「と…とにかくそれで『引き受けてくれる。』って言うんだからいいじゃない。」
「問題はその頼んだ相手が、どれだけ先輩を真似る事が出来るかだ。」
「とりあえず、普段の先輩の声が入ったデータを集めてみるけど、上手くいくかしら?」
「私も瑞稀と弟君に協力してくれる様に頼んでみるわね。」
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そして決行日の今日、私の前に居るのは六、徳さん、満月。
それから、徳さんのお友達…自称《田口さん》。
当初予定していた県内で一番権威のある方のお友達は、急用で呼び戻された為、ピンチヒッターで来てくれたそう。
そう言えば、何処に稲荷神社あったわね……
お帰りになったお友達も、打ち上げには参加するそうなの。
そういうところは、ちゃっかりしてるのね。
「じゃあ私は支度があるから、先に行ってるわね。くれぐれも予定外の事はしない様に!」
「「「「は~い。」」」」
そう…返事だけはいいのよ。返事だけは!!
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※1
4月1日のお釈迦様の誕生日に行われる仏教行事。
正式名称は、灌仏会と言います。




