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一方その頃、理子の部屋の縁の下では……
「ほほぅ……
お嬢達、面白い事を考えとるのぅ。ここは一つ、ワシらも協力してやらんとなぁ~。」
と、満月タヌキが不穏な事を考えていた。豆狸は本来、イタズラ好きな妖怪。昨日化かした事に味をしめた満月タヌキは、今日もイタズラしてやろうと、ほくそ笑んでいた。
「コレは《スクモ様》をお救いする為の、歴とした正義の行いじゃ。決してただのイタズラではないぞ!
そうじゃ!皆にもこの事を教えちゃろう♪」
豆狸はイタズラ好きな妖怪です。
大事な事なので、2回言いました。
その日から、三波マサエは世にも恐ろしい体験をし続ける事になった。学校から家まで、迷いに迷ってようやく家に帰ってトイレに入れば団地の中の1室なのに見越し入道。
寝ようとしたら、朝まで小豆とぎがして、寝不足。
通学路では、大勢の生徒の行き交う中で誰かに小豆とぎとぎされて大恥をかかされたり……
それが数日続いたかと思うと、今度は夜道で一本だたらに追いかけられ、慌てて駆け込んだ店の人達はキツネの顔をしていた。(幻覚)
親や友達に言っても、誰も信じてくれない……
何しろ、見えているのも聞こえているのも彼女だけ。
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三波さんは遂に、コンビニのバイトを辞める事になった。
精神的に疲れて、それどころじゃなくなったみたいね。
「なんか最近、三波さん誰かにイジメられてるみたいね。精神的的にかなり参っているみたいよ。今なら《スクモ様》のフリして出れば話しを聞いてくれるんじゃない?」
誰かのイジメ…犯人?は、ウチの豆狸とそのお友達。『《スクモ様》の為だ。』と言う大義名分を掲げて、妖怪に片っ端から声をかけたみたいなの。
でもってそれを口実に、やりたい放題。
その所為で三波さんを怖がらせるのが、最近の妖怪達の娯楽になっている。
《スクモ様》は、そんな三波さんの姿を見て、『もっとやれ!』みたいな事を仰って、喜ばれているそうだけど……
このままだと《スクモ様》が邪神とかにならないか心配。
今朝見かけた彼女は、目の下に隈を作りフラフラしていて、逆に《スクモ様》は生き生きしていらっしゃった。
「それでね…準備も整ったし、そろそろこっちの話を聞いてくれそうだから、明後日あたり仕掛けてみようと思うんだけど、理子ちゃんはどう思う?
もちろん、他の皆んなの都合もあるけど。あ、坂野君はいつでもOKだって!」
「皆んなの都合かぁ~。徳さんと満月は基本暇だから、大丈夫じゃない?
六も夕方なら大丈夫だと思うけど、聞いてみるね。」
「じゃあ、連絡宜しくね。倉本先輩には私から連絡しとくから。」
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「次は肥溜めにでも落としてやるのはどうじゃ?」
「この辺りにも、もうそがぁな物無いで…… 」
「そうなんか?つまらんのぅ。」
「前に業突く張りの庄屋を化かした時は、面白かったのぅ!」
私が説明しようとしても、さっきからずっとこの状態で、誰も話を聞こうとしない。
妖怪達の集会所と化した、我が家の庭……
私の周りには豆狸、県内で一番権威のある稲荷狐、小豆とぎ等いろんな妖怪や神様の使いが集まって、まだ悪巧みをしている。
「ちょっと!私の話聞いてた?そろそろ仕上げにかかろうと思うのよ。」
「「つまらんのぅ。もう終わりか?もうちっと遊んじゃあ駄目かのぅ?」」
と、徳タヌキと満月タヌキが声を揃える。やっぱり、コイツら遊びだと思ってたのね!
「駄目に決まってるでしょ!早く《スクモ様》の【銅鏡】を修復してもらって、《スクモ様》を元の場所にお戻ししないといけないのよ!だからお願い、いい加減に辞めてくれないかな?」
「「仕方ないのぅ。」」
やっと解ってくれたのね。そう思って油断した私が馬鹿だった。
「「いい加減で辞めてやるわい!今日は化かし放題じゃ~!!」」
「「「やっふ~♪♪」」」
そう言うが早いか、妖怪達は一斉に
飛び出して行ってしまった。
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「それで皆んな居ないのか……
流石、妖怪…揚げ足取りが上手いな。」
遅れてやって来た六に豆狸達の事を話したら、笑ってるし……
「とりあえず、勝屋さんの計画書を見せてくれるかな?」
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※1
肥溜めは、伝統的な農業設備の一種。農家その他で出た屎尿を貯蔵し、下肥という堆肥にするための穴または、大きめの水瓶。穴の方の外見は井戸に似ている。 水瓶の方は、素焼きの瓶が多く、口径1~1.5m程度のものを土中に埋め使用する。一般的には、薄める為の水を入れる水瓶と一緒に設置されることが多い。




