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第113話 サムジャ、教会で追い詰める!

 アグールがやってきて俺たちを見て嫌悪感を顕にした。


「よりによってお前らかよ。て、聖女様! 一体どこに行ってらしたのですか! ハデル大神官も探していたのですよ。ですがお戻り頂きありがとうございます。さぁ、そのような下劣な輩から離れてこちらに!」


 アグールがセイラに手を伸ばしてきたので、俺が間に入ってガードした。


「き、貴様何をする!」

「セイラを大神官の元にやるわけにはいかない」

「な、何を言っている! 貴様聖天教会に楯突いてただで済むと思っているのか!」

「ふん。何を馬鹿な。むしろわれわれはこの教会のためにもさっさとハデルという不届き者を退治せんといかんのだ」

「ワンワン!」

 

 マスカが強気に口にし、パピィも吠え立てる。だが、アグールは納得がいってない様子だ。


「全くあんたもどうかしてるわね。ほら、これを見なさい?」


 ルンが呆れ顔を見せながらも、アグールに紙を見せる。


「は? 一体それが何だと――な! 領主様からの調査許可だと!」


 アグールが目が飛び出さんばかりに驚いた。こいつもハデルの正体には気がついてないんだろうな。利用はされていたかもだが。


「一体何だ騒々しい!」

「ワンワン!」


 すると今度は奥からハデルがやってきた。その方向に向かってパピィが吠える。ハデルに対してというよりはそっちに何かがあると訴えているようだ。


 そしてハデルの目は一旦はパピィと俺達に向き、顔が一瞬歪んだ。


「……ほう。これはこれは聖女様。どこにいかれたかと心配しましたぞ」

「心配か……一体何の心配をしていたんだろうな?」

「何?」


 俺の声にハデルが眉を顰める。俺の足もとではパピィが唸り声を上げていた。


「全く大体お前らは何だ? ここは貴様らのような粗暴な連中が足を踏み入れて良いところではないぞ。さっさと聖女を置いて帰れ!」

「領主様にレッサーデーモンを差し向けておいてよく言えたものね」


 声を張り上げ命じてくるハデルだったが、ルンが呆れ眼で言い返した。セイラを見てみたがやはり顔つきが険しい。


「レッサーデーモンだと? 一体何の話だ?」

「白を切るのはそこまでにしておくんだな。悪いがカイエル伯爵の呪いは解除させてもらったぞ」

「ついでに領主代理だったダミールも捕らえられ今頃牢屋の中だろうな」


 俺とマスカが交互に語ると、ハデルが顔を顰め唇を噛んだ。余裕が無くなってきているな。


「そ、それがどうした。良かったではないか呪いが解けたなら。まさか、あのダミール卿が捕まるとは思ってなかったがな。全く折角協力してやったというのに恩知らずなことだ」

「その協力というのは伯爵に呪いを掛けることなのですか!」


 セイラが声を張り上げた。感情が高ぶっているのを感じる。やはり教会の人間としてハデルの行為が許せないのだろう。


「セイラよ。一体何を言っているのだ? なぜ私がそんなことを……」

「邪天教団の信徒だからだろう?」

「…………」


 ハデルの目がスッと細まる。


「それこそ一体何の話かな?」

「隠しても無駄だ。ここにいるパピィが全て見ていた。お前が邪天教の誰かと話しているのも、奇妙な像もな。おかげで怪我を負ったが見ての通りすっかり元気を取り戻している」

「ワンワン! グルルルウゥゥウ!」


 パピィがハデルに向かって吠えそして唸り声を上げた。


「そういうことだ。ここまで来たら語れば語るほどボロが出るだけだぞ?」

「……知らぬことだ」


 マスカの言葉に、ハデルは耳を傾けようとしない。あくまでしらばっくれるつもりなようだ。


「ならば調べさせてもらうだけだ」

「そんなこと許可できるわけがないだろう」

「そ、それがハデル大神官! こいつら領主様からの調査許可を持参してまして!」


 アグールが駆け寄ってハデルに伝える。ハデルは無表情だが、余裕が無くなってきているのはよく判った。


「どちらにせよこっちには調査の許可が出ている。中を改めさせてもらうぞ」

「チッ――闇の裁き!」


 ハデルが杖を掲げた。その瞬間俺たちの足もとに魔法陣が浮かび上がり、範囲内に黒い光が降り注いだ。


「居合忍法・鉄壁の術!」

「ワンワン!」

「きゃぁああ!」

「ハデル様何をひぃぃいいい!」

「チッ、あいつ、他の信徒も巻き添えに――」

「そ、そんなハデル様何を……」

「お前はこっちに来い!」

「ええっぇえええ!」


 俺達がハデルのスキルに対応しているうちにアグールを連れてハデルが走り去ってしまった。


 黒い光が収まる。セイラはパピィが間に入って影を操って盾にしていたから無事だ。それを認めたから俺はルンの前に立って鉄の壁で光を防いだ。マスカについては全て避けていた。


「し、シノありがとうね……」

「あぁ、仲間を助けるのは当然だ」

「パピィちゃんありがとう」

「クゥ~ン」


 ルンが俺の裾を掴んでお礼を言ってきた。そして向こうではセイラがパピィの頭を撫でてパピィも目を細めている。


「お前たちさっさと行くぞ。あの馬鹿が何を考えているかわからん」

「わ、私は怪我をされた皆さんの治療をしておきます!」


 マスカが俺たちを促すと、セイラが叫んで答えた。今のハデルのスキルで死者こそでなかったが、教会の人間に怪我人は出てしまった。セイラはそれを放ってはおけないのだろう。


「なら私が残ってセイラを見てるわ。でも刻印は付与させて」


 そしてルンは俺たちにそれぞれ鉄の刻印を付与してくれた。


「そういえば、鑑定はどうだった?」

「駄目……大神官としか出なかったの」


 ルンが首を左右に振った。やはり鑑定への対策は取っていたか。


「わかった。セイラのことは頼んだ」

「任せて!」

「皆さん気をつけて!」


 セイラの声に頷き返し、俺達はパピィの案内で隠し階段のある場所に向かった。よっぽど慌てていたのか、向かった先では隠された地下への階段が開けっ放しになっていた。


「ぎ、ギャアァアアァアアァアアァアア!」

 

 地下から悲鳴が上がった。これはアグールの悲鳴?


 急いで地下に降りると、パピィから聞いていた不気味な像があり、その横では不敵な笑みを浮かべるハデル、そして床には胸にポッカリと穴が開いたアグールの姿。既に絶命しており、そしてハデルの手には心臓が握られていた。


「くそ、やはりもっと早く刀を回収しておくべきだった。忌々しい奴め!」


 俺を見ながらハデルが顔を歪めた。やはりこいつは数珠丸の力を知っていたのか。


「こんなところに邪教の祭壇を隠していたとはな。忌々しいやつだ」

「何とでもいえ。どうせ貴様らはここで終わる。本当は聖女の心臓が必要だったが仕方あるまい。さぁ邪神の眷属たる魔神ダエーワよ。聖なる心の臓を贄にここに降臨したまえ!」


 ハデルが両手を広げて何かを呼び起こすような文言を口にすると、その手に握られていた心臓が消え去り、かと思えば部屋にあった不気味な像の目が赤く輝いた――

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久々の更新、待ってました! ハデルを糾弾する場面だけに嬉しいですね♪ [気になる点] 聖女セイラ と教会の小間使い アグールでは《命の価値》が違い過ぎて、とても代用できる心臓とは思えないけ…
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