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6.ティアの目的

「すごい…」

ティアは感嘆の溜息をついた。


先程までの薄汚れた殺風景な部屋が様変わりしている。

壁紙は淡いアイスグリーンが基調になっており、アクセントとしてフォレストグリーンがテラスに繋がる窓枠などに配色されている。

室内にはシンプルな木枠のベッドに壁紙と同じ色合いの机とタンスが配置されていた。


「気に入ってくれた?」

「素晴らしいわ!ありがとうローラン!!」


ティアが俺に向かって破顔した。破壊力抜群の笑顔。

素直に感情を表して欲しいとは言ったが、こんなに無防備で大丈夫だろうかと心配になるくらいだ。


「少し部屋が狭くなったけど、一応あちらにティア専用の浴室とかも作ってあるから」


そう言いながら部屋の中にある扉を示した。

興奮しているのか、繋ぐ俺の手を握りしめている。


「嬉しいわ!何て素敵なの!!ブラウニー達も感謝します!ありがとう」


対価を受け取る為にフヨフヨ漂っていたブラウニーも嬉しそうにクルクル回っている。

嬉々としているティアを眺めながら懐から絹織物を取り出した。


「対価だブラウニー。これを以って契約満了とする」


リーダー格であるブラウニーが俺が差し出した対価を長い毛で巻き取り寄せ『契約満了』と一回転した後、他のブラウニーと同時にパチンと音を立て消えた。


「これが召喚術…」


クルドヴルムでは当たり前の光景だから、驚くティアの様子がとても新鮮に思える。


「さっきも言ったけど、俺のブラウニーは都度契約の召喚なんだ。明日にでも使役召喚獣を紹介するよ」

「嬉しい!明日が楽しみだわ」


目をキラキラさせて満面の笑顔を向けているティアに、俺は悪戯心でそっと顔を近づけて愛らしい額に口付けた。


「!!!!」


ティアがビシリと石像のように固まる。

気にせずティアの耳元に唇を寄せて「契約には対価が必要だからね」と、囁いた。


「今日はティアの弟子入り初日だから腕を奮わないとな!夕食になったら呼ぶからそれまで部屋で休んでいるといい」


未だ固まるティアの頭をポンと撫でて、俺は部屋を後にした。

背後から「対価なんて聞いてません!!」と叫び声がしたが気にしない。






ーーーーーーーーーーーーー


「ん?ティアはどうしてそんなに膨れっ面をしているのかな?」


夕食時、ダイニングに姿を現したティアは俺の姿を見るなり百面相をした後、膨れっ面を維持している。


「何でもありませんわ。虫に刺されただけです」


俺は虫か。そう思いながらも自然に笑顔が溢れそうになる自分を抑えられそうにない。


「ローラン。明日は素振り1000回ですからね」


俺とティアの様子を見て全てを察した師匠は黒いオーラを纏わせ、ギギギとなる筈も無い音を立てながら俺を見てニッコリと微笑んだ。

なまじ人外な容貌をしている師匠から黒いオーラが発せられると、もう魔王の再来にしか思えない。

ティアへの悪戯に後悔は無いが、ここは素直に従った方が良さそうだと、俺は無言で頷いた。


「ティアも明日から修行が始まりますからね。初めは辛いでしょうが貴女の望む力が得られるよう頑張りましょう」

「はい!よろしくお願いいたします」


背筋を伸ばした後、真剣な顔でティアは頭を下げた。


「ふふっ。…ああそうだ、万が一兄弟子がティアに下心を出そうものなら師匠がボコボコにしてあげますから安心して下さいね」


いや師匠がボコボコって俺死亡確定じゃないか…。

ティアと会話を交わしながら食事をしつつ、笑顔で恐ろしい事を言うのは勘弁して欲しい。


「そういえば、ティアの修行期間は1ヶ月だろ。短すぎないか?」


話を逸らす目的もあったが、初めからあった疑問をぶつけてみた。

ティアは少し視線を落とし、自身が持つナイフとフォークを見つめながら言う。


「わたくしはこの1ヶ月である風の魔法を無詠唱で発動出来るようにしたいのです。その為に賢者である師匠に無理は承知で指導をお願いいたしました」


「適性属性が風なのか?」






「わたくしの属性は火、風、水…です。わたくしは風魔法『切断魔法(ヴォンカッター)』を学びに参りました」


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