19. ローランの課題
ローランが師匠であるシリルから与えられた課題はふたつ。
ひとつが家族を説得すること。もうひとつが、四大国の縦断する山脈に行き、聖王ファルグスの聖剣と盾を持ち帰ること。
山脈の中腹には英雄達が魔王を滅ぼす際に使用した武器が眠っているらしい。
ローランはその事実をシリルから告げられて初めて知る事になった。ローランは自身が使うなら竜王オーディンの槍ではないかシリルに問うたが、頭を小突かれ「竜王の聖槍なんて持ってごらんなさい。すぐにクルドヴルムだと気付かれてしまいますよ」と嗜められた。
「かつては交流があった国同士。王家の血も混在していますから、ローランでも聖剣は扱えます。但し、聖剣に認められれば…ですが」
シリルはニコリと微笑んだ。
聖剣に認められるとは何だろうとローランは疑問に思ったが、シリルは微笑みを浮かべるだけで答えてくれそうになかったので諦めた。
『行ってらっしゃいませ、御主人様』
ティアの為に呼び出したスチュワードとフェンリルが頭を下げる。
ローランはひとつ頷くと、柔和に微笑むシリルと、心配そうに見つめるティアへ笑いかけた。
「行ってらっしゃい、ローラン。ローゼによろしくね」
ティアからは何の言葉もない。ローランはティアの頭にポンと手を置くと「心配するな、すぐ戻る」と微笑んだ。「心配なんてしてません!」とティアは怒る。僅かな期間で本当に感情豊かになったものだとローランは喜ばずにいられない。
ティアは顔を真っ赤にしながら、ローランが纏うマントをキュッとつかみ、上目使いでローランを見つめ、
「行ってらっしゃい。早く戻って来て下さいね」
と、眉を下げて微笑んだ。
ティアを抱きしめたい衝動を全力で抑えてから、頭を撫でてやる。
「そうだティア、新しい召喚獣を見せてあげる」
ローランは「フレイ」と名を呼ぶと、魔法陣からドラゴンが現れた。
「これはドレイクと呼ばれる種族で、クルドヴルム竜騎士団が騎乗する竜だ」
ティアの目が歓喜に見開いた。ローランはひとつ笑うと、フレイと呼ばれた竜に跨り「ティア!」と声を掛ける。
「戻ったらこいつに乗って、クルドヴルムの街を案内するよ」
花が咲いたように笑うティアを見ると、ローランは満足して「行ってきます!」と飛び立った。
まず目指すはクルドヴルム竜王国。
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「何やら騒がしいな」
クルドヴルム城内の執務室で筆をとっていたクルドヴルム国王は顔をあげた。
「女性の声が多い事を考えるに、愚弟が帰城したのではないでしょうか」
父親である国王の疑問にローゼ…ローゼリア・エル・クルドヴルムは面倒くさそうに返した。
執務室のソファーに座る彼女の横には宰相補佐でありローゼの婚約者が同じく腰を下ろしていた。
「ローゼ、その言い方はあんまりじゃ…」
「私にとって一番は国民、二番は貴方、それ以外は…ああ、お父様は三番目よ」
婚約者であるシャルルの言葉に、さも当然とばかりに首を傾げるローゼ。
つまりローゼにとってローランはランク外らしい。父親である国王は三番目である事にホッと胸を撫で下ろした。何せランク外になった者への扱いはまるで下僕のようだったから。
「失礼しますっ!!」
「礼儀をどこへ忘れてきた!このへタレが!!」
ノックもせずに執務室の扉を開けたローランに対し、ローゼは近くにあった槍を力一杯ローランに向かって投げつけた。
「げっ」とローランは心底嫌そうな顔し、自分に向かってくる槍を素早い動きで掴むと、そのままローゼに怒鳴りつける。
「悪かったのは俺だけど、いつもやり過ぎなんだよ!この馬鹿力!!!」
「ほう?よく止めたじゃないか。少しは成長したな」
ローランの言葉は無視して、ローランとよく似た風貌をもつローゼはニヤリと笑った。




