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13. 師匠の指導

ティアが弟子になって1週間。

ティアの修行は俺から見ても異様だった。


朝から基礎体力を向上させる為の訓練。

午後からは魔法の訓練。

これが酷くて師匠は全属性の攻撃魔法を絶え間なくティアに向けて容赦なく放つ。


師匠は無詠唱。ティアも奮闘しているが詠唱が必要だから、どうしても反応速度が遅く身体は傷だらけになり所々血が滲んでいる。


「魔法の具現化は想像力です!!言葉で組み立てるのではなく、イメージしなさい!」


師匠はそう言いながら攻撃魔法を放ち続けるのだ。

初日に師匠に言われた事をティアは色々考えているようだった。俺も基礎体力を向上させる訓練や、師匠の指示で対戦相手になったりしている。

またティアに俺が土魔法を発動させる為に想像している事などを折を見て伝えていたが、幼い頃から培った癖は中々解消されないらしい。

正しい詠唱方法は知らないものの、高位魔法になる程詠唱が長くなるところを見ると、あまり改善されていないようだった。


ティアの内包する魔力が少なくはないのだろうが、師匠のあれは俺でも耐えられないと思う。

俺は手を出したい気持ちを抑えながら、過酷な訓練を見学している。

1週間見てきたが、そろそろティアの魔力が尽きそうだ。いつものようにティアが膝を付けば訓練は終了だろう。

今日もそうだと疑っていなかった俺は、荒い息を吐きながら膝を付いたティアに師匠が


「ティア!敵は待ってはくれませんよ!」


と叫んだ時、驚きのあまり「嘘だろ…」と呟いた。


師匠は今日最大の火球を生み出すとティアに放つ。

…いくら何でもこれはっっ!そう考えた瞬間、俺は「ガルグイユ!!」と叫んでいた。

叫ぶのと同時に魔法陣が発現し、翼を持つ蛇が姿を現す。

ガルグイユは護るようにティアに長い尾を巻き付けると、その口を大きく広げて火球に向かい巨大な水球を放った。

火球と水球はぶつかり合い巨大な爆発音を響かせた後霧散した。霧散された余韻であたりに霧が立ち込める。


「師匠!殺す気ですか!!」


俺はガルグイユが広げた尾の中で気を失い横たわるティアに駆け寄り抱き上げた。


「おやおや、師匠のやる事に口を出すとは…」


師匠は不機嫌になると腕組みした指をトントンと動かす癖がある。今まさに修行を邪魔されて不機嫌の極みといったところだ。

温度を持たない視線に、ブワリと全身から冷や汗が噴き出る。ガルグイユは俺とティアの前に立ち塞がると翼を広げ、師匠を威嚇した。


「ガルグイユ戻れ。お前では師匠に敵わない」


主たる俺から命令されても尚、かぶりをふるように拒絶の様子を見せる。


「大丈夫だ。ティアを護ってくれてありがとう」


全くの痩せ我慢だが、ガルグイユを安心させるように笑顔を見せる。

ガルグイユは暫く悩む素振りを見せた後、諦めたように姿を消した。


「相手の力量を測れるのは良い事ですよ、ローラン。ですがティアには時間がありません。ティアの目的の為にはティア自身も犠牲をはらう必要があります」


師匠は俺達に向かって歩みを進めながら溜息をついた。組んだ腕は解かれており、俺はホッと息をつく。


「兄弟子は妹弟子に甘い」


俺が気付くより早くバチンとデコピンされた。

同時に空いた手をティアにかざすと治癒魔法をかける。


「私が失敗する訳が無いでしょう。ティアをこれ以上傷付ける気はありませんでしたよ。見学するなら見学するで、もう少し落ち着いて見ていなさい」


師匠の魔法は自由自在。直前に消滅させる事も可能だったと思い当たる。師匠の意図するものは理解出来ないが、初めからあの火球をティアに当てるつもりは無かったのだろう。


「申し訳…ありません」


そう、俺は頭を下げた。


「午前中から大分無理をさせましたらからね。今日はこの位にしておきましょう。

騎士はティアを部屋まで運んであげて下さい」


騎士の部分を強調し、師匠はいつものようにニッコリ微笑んだ。


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