45話 始まる厄災
【重要】
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戦闘シーンでは様々な場面が行き交う、目眩しそうな展開が多いので、ここから決着までは『三人称』とさせて頂きます。
見慣れない方もそうでない方も、ご迷惑をお掛けする形となりました。本当にごめんなさい。
自分のTwitterアカウントのDMや感想欄での要望がありましたら、これを改稿する予定です。
ご理解の程、宜しくお願い致します。
受話器から音が鳴る。会議の直後。緊張の音。
椿には電話主が分かっていた。彼は無言で耳に受話器を当てる。そしてスピーカーボタンを添えるように押した。
相手は緊急事態用の電話にも関わらず、落ち着いた声の男性だった。幾分の狂気を掠れた音に混ぜたような声だ。
「罪人取締班の諸君。私はプロ・ノービスの長、黄龍という者だ。この電話は約五十の取締班に対応している」
五十の取締班、それは日本中の全ての班を指している。
そんな数を後に相手にするにもかかわらず、彼は余裕そうだ。
そして彼は続ける。
「我々もそれなりに人員を集めた。その数は想像に任せよう。では、待ち遠しいその時を始めるとしようか。これからの日本の世を決める、運命の時を」
そうして彼の音声が途絶えた。班長である椿は、この場の全員に告げる。
「行くよ! 俺たちで、プロ・ノービスを止めるんだ!!」
声は出すにしろ出さないにしろ、その場の全員が肯定した。
* * * *
朱雀は黄龍の電話を横で聞いていた。朱雀は少しだけ気になることがあったために、その場を足早に後にした。
*
彼女の目的地は孤児院だった。
彼女は自分の姿がスーツ姿なのをすっかり忘れて、孤児院の中にいた俊泰先生と呼ばれる男に声をかけた。
「俊泰先生、子供達を連れて急いで警察に向かってください。お願いします」
俊泰は彼女の急なお辞儀やスーツの格好に戸惑いながらも、こう答えた。
「……亜喜先生が言うなら、何かあるんでしょう。しかし、この子供達を全員は厳しいかと……」
「そこは私が何とかします。俊泰先生は子供達を説得してください」
彼女の食い気味な反論、切羽詰まった顔が珍しかったのだろう。俊泰は目を見開いて頷くしかなかった。
朱雀はさらに、彼に無地の封筒を手渡す。彼は聞く。
「……これは?」
「後にバスを数台そちらに向かわせますので、何も聞かずに子供達をそこに乗せてください」
朱雀はそれに返答することなく、走ってその場から姿を消した。
俊泰はその封筒の中身を見た。そこには、さらに封筒が入っており、『辞表』と書いていた。
「亜喜先生……一体何が起きているんですか?」
もちろんそこに亜喜……もとい、朱雀は居ない。しかしそれでも、俊泰の口から疑問が零れた。
彼は実は、前々から疑念を抱いていた。
この施設の正体などなどに。しかし、彼にはここで働くしか生きる道が無かったのだ。
『えー、皆さんに連絡があります』
放送室でそう切り込んだことを、彼自身初めて気がついた。
*
朱雀は走っていた。ずっと、ずっと。自分は何をしているのだろう、と。一般人を殺す事が目的じゃないのか、と。
そんな彼女は、知らぬ間に子供という生命体に情を感じていたのかもしれない。いや、子供だけでなく、一般人すらにも。
黄龍は絶対に一般人を許さない。白虎も秘策があると言っていた。そして青龍は何を考えているか分からない。
では彼女は……この組織の何だと言うのだろうか。
そんなこと彼女自身が知りたいはずだ。果たして、彼女の存在意義はどこへ行ったのか……。
* * * *
優貴ら罪人取締班は外に出た。既にあちらこちらで悲鳴が上がり、軽く地獄という空間を彷彿とさせた。
椿は驚きながらも、冷静な判断を下し始める。
「もう攻撃が……!? 菫は警察の協力を! その他は、各自の役割を全うするよ!」
役割とは、椿と凛が敵の流れを観察or市民の救助。優貴と美羽、天舞音、聖華が敵を対処。翔と菫が情報を収集or味方の怪我の処置。
途中でバラバラになる恐れがあるが、被害を最小にするためにはしょうがない。
椿は全員に携帯を手渡した。
「これで互いに連絡を取り合ったり、情報が分かればそこに転送するから! 絶対に無理しないで、危険そうだったら助けを呼ぶこと!」
矢継ぎ早に話した椿。それはデザインも恐らく性能までも同じな『作業用』の物だろう。
椿と凛は敵の出処を突き止めるため、能力を発動し始めた。
「じゃあ行くよ! 《発動》!」
「わたくしも……《発動》!」
彼らはその場から姿を消した。それを合図に、「あたしらも行くよ!」という聖華の声が響く。
そうして四人で、悲鳴の在処を突き止めに行くことになった。
*
罪人共は攻撃を止めない。例え泣き叫ぶ子供が居ようと、血を流して逃げる人が居ようと。
ある一人の罪人が歪んだ口角を上げ、尻もちをつく人へ長く尖った爪を振りかぶる。
「罪人をコケにしやがって……死ねぇ!!」
「させるか! 《断罪の拳》!!」
罪人の顔に、優貴の拳がめり込む。
「げぶぅっ!!」
罪人は遠くに吹き飛ばされて意識を失った。
優貴は振り向くと、その人に右手を出した。
「大丈夫ですか? 立てます……」
「ざっ、罪人だあぁぁ!!」
その人は優貴の手を取らずに、すでに配備されていたパトカーへ走って逃げた。
優貴は差し伸べた手を握りしめて、悔しさを露わにする。そんな優貴に、聖華は彼の頭に手を添えてなだめた。
「大丈夫。気持ちは伝わってるさ」
「……はい」
優貴はただ返事するしかできなかった。一番の理由は恐らく迷いからだろう。
こんなことを繰り返し、敵の対処をする。ボランティアの集団も、やられながらも市民を保護していると言う。
罪人取締班にとったら感謝の念しかないだろう。
椿や凛は少しずつ敵のアジトを見つけ出しているという。翔や菫もまだ何とかなっているらしい。
更には警察が敵の流れを予測して、避難先の住所を公開した。市民のおよそ一割はそこにたどり着いたという。
そんな時、天舞音は少し不機嫌そうに話す。
「危険なのは分かってるけどさ、別々に行動しない? 固まって動いてたら被害を抑えらんないでしょ? こっちはあまりにも人員が少ないから」
聖華が答える。
「……分かった。その代わり、危険な敵が来たらすぐに住所を言って助けを呼ぶこと。いい?」
残りの三人は頷いた。そして各自で市民の救助活動を始めた。
*
それから二時間後……。
「はぁ、はぁ……」
優貴は疲弊していた。想像以上に敵の数が多いからだ。
ただ、あまり能力を使いこなせてない者のほうが多く、対処は割と容易だった。
敵の勢いが徐々に収まってきていて、ボランティアの人だけでも何とかなりそうな気配がした。
そんなとき、ふと携帯から美羽の声がする。
『あ、あのっ! 班長が場所を絞れたそうなので、その辺で集合しませんか!?』
『敵も少なくなったし……僕は賛成だよ』
「俺もそっちに向かう。……聖華さんは?」
どうしてか、聖華の声がしなかった。
焦った声で美羽は声を放つ。
『聖華さん!? 聞こえますか!?』
彼女からの返答はない。ただ、天舞音は自分の携帯にメッセージが届いているのに気がついた。
『あっ、僕の携帯に『先に行け』っていう聖華さんのメッセージがあったよ』
「聖華さん……何かあったんじゃ?」
優貴の問いに、天舞音は答えた。
『聖華さんがこう言ってるし……信じるって意味でもここは先に行こう』
『聖華さん、大丈夫ですかね……?』
「……先に進もう」
そうして三人は、聖華への不安を胸に、椿と凛の元へ向かった。
* * * *
時は遡ること二十分前……。
「ここは終わったかね……? よし、次は……」
「《愚者の宴》」
「っ……!? 《発動》!」
聖華は咄嗟に障壁を展開した。それに銃弾の嵐がカンカンと当たり続けた。
障壁の方向を間違えていたら大惨事の、危機一髪な瞬間だった。
こんなことができるのは、聖華にとって一人しか思いつかなかった。
「これも……運命ってやつかい? 朱雀……!」
「玄武……お前とだけは、会いたくなかった」
怒りを顔で表す聖華と異なり、朱雀は悲しそうな、虚しそうな表情をしていた。
聖華は携帯で『先に行け』と誰かに届けて、それをそこら辺へほおり投げた。
宛先は適当だったが、それがあの三人に届くかどうか、彼女は気にならなかった。
「決着をつけるよ、朱雀。あんたの間違いを正してやるさ……!」
「私は……ボスのために……!!」
聖華の決意と朱雀の躊躇。二つで織り成される空間で、両者の悲しい戦いの火蓋が切られた。
前書きで記述した通り、もしダメでしたら即刻改稿致します。ご意見は自分のTwitterのDMや、ここの感想欄にお願いします。
アドバイス等も受け付けておりますので、宜しくお願いします。
良ろしければ、次回の話を楽しみにお待ちください。お願いします。