表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
4章 彼らが理想の世界から残酷な現実に立ち向かうまでの克服譚
39/174

39話 正義VS正義

少し短めです! ごめんなさい!


話が少し飛びまして、優貴と聖華さんが特訓をしているところから始まります。

 * * * *




「ぐっ……!」


「ほらほら、もっと攻めな! 考える余裕はないよ!」



 怒涛の攻撃。何度特攻しても、その度に押し返される。

 ……体力も身体も限界だ。


 俺は足をふらつかせながら、聖華さんに言う。



「も、もう、厳しいです……」


「よし、じゃあ今日はここまでだね!」



 こうして、二人の特訓が終わった。



   *



 前々から、特訓を厳しくすると言っていたが……まさかここまでとは。

 ただ、もっと優しくなんて悠長ゆうちょうなことは言ってられない。もうすぐ彼ら……プロ・ノービスとの闘いが始まるのだから。


 聖華さんは、俺に真っ白なタオルを手渡して話す。



「ここ最近の優貴はすごいよ、みるみる成長してる」



 俺は彼女から手渡されたタオルを取る。自然に垂れてくる汗をそれでぬぐいながら答える。



「あ、ありがとうございます……でも、まだまだです」



 聖華さんは「そういえば」と話を始める。



「優貴、『技』を作ってみないかい?」


「技……?」



 そういえば、聖華さんやその他の人は技を使っている。まあ、今まで聞き流していたが……。

 聖華さんは天井を指すように人差し指を立てる。



「例えば……優貴ってゲーム好きだったんだろ? そのゲームの技を真似たらそれっぽくなるかもね」



 彼女は、「ほら、やってみな」と言いながら障壁バリアを張る。それに対し、彼女の無茶振りを断りきれない俺。

 ゲームの技なんて、そうそう真似できるものなんて……あっ。


 俺は姿勢をとる。

 俺が中学生のとき、できそうだと思ってできなかった技。この体なら……。



「《断罪の拳ジャッジメント・フィスト》」



 そう言って飛び上がると、重力の力も利用して、拳を彼女の障壁バリアに叩きつける。

 自分の全体重もそれに乗せ、ただ一点に圧力を加える。


 ──パリンという音。弱々しくも、確かな、障壁バリアの破裂音だった。



「「なっ……!?」」



 俺と聖華さんの、驚きの声が重なる。そんな中でも、障壁バリアが割れて消えていく。

 少しの間、二人でその消えざまを眺めていた。


 聖華さんはキラキラとした目でこちらを見て話す。



「すっっごいじゃないか! それ、練習しな!」


「そっ、そうします! ……ただ、消耗が激しい技でした」



 なんせ全体重を乗せるため、いつもと体勢が全く異なり、かつ体力を大幅に失う。

 ……トドメの一撃、といった感じだ。


 その後も聖華さんと技開発がはかどり、帰ったのは結局午後の七時のことだった。



   *



 班長の声が絶妙に心に刺さる。



「随分と遅かったね。優貴くん、聖華さん」


「「うっ……」」



 まあ恐らく、最も遅い帰還なのではないだろうか。

 しかし班長は、それ以上咎とがめはせず、代わりにあることを話した。



「そうそう。あるかたから、合同演習の提案が来たよ」



 さっきとは打って変わって、聖華さんはサプライズを受けたようにウキウキと話す。



「なっ……ご、合同演習!? いいじゃないの!」



 ここ最近、聖華さんの戦闘癖がより悪化したような……。

 そんな陰口を心にしまって、俺は班長に聞く。



「その、ある方というのは?」


「ああ、京都の罪人取締班の班長、『長谷川はせがわ 徳人のりと』さんだよ」



 班長はそう答える。

 京都と合同演習か……。位置的に少し遠いな。



「あちらから来てくれるってことだけどね。それまでの間、京都の防衛は大丈夫らしいよ」



 京都の罪人取締班……どんな人達なんだろう?

 俺は少しだけ楽しみになってきた。いや、決して誰かのように戦闘についてではなく。


 来るのは遅くても明後日辺りになるらしい。……それまで俺は、今日身につけた技を練習するだけだ。

 誰にどうする訳でもないが、俺はそう意気込んだ。



   *



 彼らとの待ち合わせの時間までもう少し。来ない、なんてことはないと思うが……。



「いやー、お待たせしました! 私が長谷川徳人と申す者です!」



 手を振りながらこちらに近寄ってくるのは、班長よりも若いように見える、黒髪の男性だった。


 隣にいるのは、赤色の着物姿の少女と、顔のあちこちにシワのある老人紳士、本を抱えている少年、そして見るからにパワー系のように筋肉が張り詰めている男性の四人だ。


 少女は着物を乱暴にして、愚痴りながらも徳人さんについている。



「班長ぉー! だから遅れるって言ったじゃろーが!」



 続いて老人は、優雅な走り……いや、早歩きをしている。少しホラーだ。

 その老人と、隣の本を抱える少年が話す。



「ほほほ……老体には少々酷ですなぁ」


「げ、げんじい! あまり、無茶はダメですよ!?」



 筋肉のすごい男性は無言のまま、こちらに走ってくる。老人の彼よりも恐怖だ。


 ただ、思ったよりも……ユニークな方たちだ。俺はそう苦く笑う。



   *



「はぁ、はあ……ふう、時間ギリギリですみませんね」



 徳人さんはそう話す。

 疲労困憊ひろうこんぱいなのは徳人さんだけでなく、班員全員息を切らしていた。……筋肉の男性を除いて。


 班長は首を振ると、「問題ないですよ」とフォローした。


 合同演習は、こちらの練習場で行うことになっている。こ

 ちらのメンバーは、翔さん、天舞音さん、菫さん以外の五人だ。


 ちなみに美羽の学校は、今日は休みとの事らしい。

 美羽の方向をチラ見すると、彼女もまたこちらを見る。そしてふいっと顔を背けた。分からないが、一応後で謝っておこう。


 そんなやり取りを見ずに、班長は話す。



「じゃあ、行きましょうか。練習場に」


「あはは……お手柔らかにお願いしますね」



 徳人さんは、そう言って笑っていた。

ご愛読ありがとうございます。


良ければ、また次回も宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ