39話 正義VS正義
少し短めです! ごめんなさい!
話が少し飛びまして、優貴と聖華さんが特訓をしているところから始まります。
* * * *
「ぐっ……!」
「ほらほら、もっと攻めな! 考える余裕はないよ!」
怒涛の攻撃。何度特攻しても、その度に押し返される。
……体力も身体も限界だ。
俺は足をふらつかせながら、聖華さんに言う。
「も、もう、厳しいです……」
「よし、じゃあ今日はここまでだね!」
こうして、二人の特訓が終わった。
*
前々から、特訓を厳しくすると言っていたが……まさかここまでとは。
ただ、もっと優しくなんて悠長なことは言ってられない。もうすぐ彼ら……プロ・ノービスとの闘いが始まるのだから。
聖華さんは、俺に真っ白なタオルを手渡して話す。
「ここ最近の優貴はすごいよ、みるみる成長してる」
俺は彼女から手渡されたタオルを取る。自然に垂れてくる汗をそれで拭いながら答える。
「あ、ありがとうございます……でも、まだまだです」
聖華さんは「そういえば」と話を始める。
「優貴、『技』を作ってみないかい?」
「技……?」
そういえば、聖華さんやその他の人は技を使っている。まあ、今まで聞き流していたが……。
聖華さんは天井を指すように人差し指を立てる。
「例えば……優貴ってゲーム好きだったんだろ? そのゲームの技を真似たらそれっぽくなるかもね」
彼女は、「ほら、やってみな」と言いながら障壁を張る。それに対し、彼女の無茶振りを断りきれない俺。
ゲームの技なんて、そうそう真似できるものなんて……あっ。
俺は姿勢をとる。
俺が中学生のとき、できそうだと思ってできなかった技。この体なら……。
「《断罪の拳》」
そう言って飛び上がると、重力の力も利用して、拳を彼女の障壁に叩きつける。
自分の全体重もそれに乗せ、ただ一点に圧力を加える。
──パリンという音。弱々しくも、確かな、障壁の破裂音だった。
「「なっ……!?」」
俺と聖華さんの、驚きの声が重なる。そんな中でも、障壁が割れて消えていく。
少しの間、二人でその消えざまを眺めていた。
聖華さんはキラキラとした目でこちらを見て話す。
「すっっごいじゃないか! それ、練習しな!」
「そっ、そうします! ……ただ、消耗が激しい技でした」
なんせ全体重を乗せるため、いつもと体勢が全く異なり、かつ体力を大幅に失う。
……トドメの一撃、といった感じだ。
その後も聖華さんと技開発が捗り、帰ったのは結局午後の七時のことだった。
*
班長の声が絶妙に心に刺さる。
「随分と遅かったね。優貴くん、聖華さん」
「「うっ……」」
まあ恐らく、最も遅い帰還なのではないだろうか。
しかし班長は、それ以上咎めはせず、代わりにあることを話した。
「そうそう。ある方から、合同演習の提案が来たよ」
さっきとは打って変わって、聖華さんはサプライズを受けたようにウキウキと話す。
「なっ……ご、合同演習!? いいじゃないの!」
ここ最近、聖華さんの戦闘癖がより悪化したような……。
そんな陰口を心にしまって、俺は班長に聞く。
「その、ある方というのは?」
「ああ、京都の罪人取締班の班長、『長谷川 徳人』さんだよ」
班長はそう答える。
京都と合同演習か……。位置的に少し遠いな。
「あちらから来てくれるってことだけどね。それまでの間、京都の防衛は大丈夫らしいよ」
京都の罪人取締班……どんな人達なんだろう?
俺は少しだけ楽しみになってきた。いや、決して誰かのように戦闘についてではなく。
来るのは遅くても明後日辺りになるらしい。……それまで俺は、今日身につけた技を練習するだけだ。
誰にどうする訳でもないが、俺はそう意気込んだ。
*
彼らとの待ち合わせの時間までもう少し。来ない、なんてことはないと思うが……。
「いやー、お待たせしました! 私が長谷川徳人と申す者です!」
手を振りながらこちらに近寄ってくるのは、班長よりも若いように見える、黒髪の男性だった。
隣にいるのは、赤色の着物姿の少女と、顔のあちこちにシワのある老人紳士、本を抱えている少年、そして見るからにパワー系のように筋肉が張り詰めている男性の四人だ。
少女は着物を乱暴にして、愚痴りながらも徳人さんについている。
「班長ぉー! だから遅れるって言ったじゃろーが!」
続いて老人は、優雅な走り……いや、早歩きをしている。少しホラーだ。
その老人と、隣の本を抱える少年が話す。
「ほほほ……老体には少々酷ですなぁ」
「げ、げん爺! あまり、無茶はダメですよ!?」
筋肉のすごい男性は無言のまま、こちらに走ってくる。老人の彼よりも恐怖だ。
ただ、思ったよりも……ユニークな方たちだ。俺はそう苦く笑う。
*
「はぁ、はあ……ふう、時間ギリギリですみませんね」
徳人さんはそう話す。
疲労困憊なのは徳人さんだけでなく、班員全員息を切らしていた。……筋肉の男性を除いて。
班長は首を振ると、「問題ないですよ」とフォローした。
合同演習は、こちらの練習場で行うことになっている。こ
ちらのメンバーは、翔さん、天舞音さん、菫さん以外の五人だ。
ちなみに美羽の学校は、今日は休みとの事らしい。
美羽の方向をチラ見すると、彼女もまたこちらを見る。そしてふいっと顔を背けた。分からないが、一応後で謝っておこう。
そんなやり取りを見ずに、班長は話す。
「じゃあ、行きましょうか。練習場に」
「あはは……お手柔らかにお願いしますね」
徳人さんは、そう言って笑っていた。
ご愛読ありがとうございます。
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