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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
3章 彼らが優しい夢から残酷な現実に目を向けるまでの改造譚
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26話 懐疑は午前の極光に溶ける

今回も短めです! 警察庁などについて調べるのにかなりの時間を要してしまいました! ごめんなさい!


3人が病院から帰って来るところから始まります。

 扉がひらかれた事務室には、異様な空気がただよっていた。始めは、美羽みうに合わせる顔が無くて、何をどう話そうか、と思い迷っているのか、と思い、やや同情しつつ席に着く。


 しかし、実際はそうで無いのを、組まれた手で隠された班長の口から知らされた。



優貴ゆうきくんが昨日、頼渡らいとしょうさんと共に捕まえてくれた女性について、さっき電話があったよ。……彼女は、身柄を送検中のパトカーの中で変死したらしい」



 俺の驚きの声は、発されないまま口に包まれた。無意識に、一瞬目が広がったのは認識できた。


 決して彼女に思いやりがあった訳では無い。しかしなぜ変死したのか、どうして突然そんなことになったのか、理解できなかった。


 班長も同じなのか、顔を少し歪ませて口を小さく開く。



「一応、原因を究明中らしい。恐らく、罪人のせいだろうけどね。まあ……おかげで、聴取も何もできなくなった」


「話す。……恐らく、プロノービスの口封じ。もう1人も、白虎びゃっこがわざわざ出向いて殺したし」




 翔さんは眉をしかめて話す。だがその、不愉快そうな顔の理由となる、彼自身の心境については話さないままでいた。


 俺と同じタイミングで席に座っていた頼渡さんは、後ろに体重をかけ、頭に両手を組む形でポーズをとっていた。そんな彼が、特に拍子ひょうしもなく話した。



「うーん。そんなに目的やらなんやらを知られたくないものかねぇ? もう、聖華せいかさんっていう情報源があるのに?」



 彼の言葉には、どこか違和感があった。疑いの目を向けた聖華さんは、目線の先に居る彼にこう指摘する。



「あたし、あんたに話したっけ? あたしが、元プロノービスの幹部だって」


「……」



 彼女の告白こくはくの時、確かに頼渡さんは居なかった。誰かに聞いたとしても、その場に居なかったりんさんにも伝わっているはずだ。病院で会った時に、少なからず確認をとるだろう。しかし彼女はしなかった。

 では何故、その事を知っているのか?


 聖華さんの鋭い意見に、雰囲気がさらに険悪になった。何も疑いをかけられてない俺までもが、改まって固唾かたずを飲む。


 頼渡さんの顔が一瞬強ばった。しかし、すぐにニコッ、と笑うとこう話した。



「……いやぁ、話題からズレてるよぉ? じゃなくって、どうしてかたくなに隠すのかなぁ、って。もしかしたら、もっとやばい目的があるのかも……よぉ?」



 彼の語尾には、強い何かがこもっていた。彼の言葉自体は、確かにすじが通っている。しかし、俺は本当に彼を味方と見るべきかどうか、頭を悩ませていた。


 彼にとって触れてほしくない核に触れられる時、とっさに逸らすことを癖のようにこなしている。だから前に1度、凛さんも彼の事を理解できない、と話していた。

 それどころか、もはや班長も彼のことを……? だとしたら、彼は結局何者なのだろう? それを知るものは、果たしているのかどう……



「……かい?」


「……」


「優貴くん?」


「……えっ……あっ、はい」


「うん。ありがとう」



 班長に話しかけられたことで、焦点が意識から現実へと戻る。話を聞かずして承諾しょうだくしてしまったことを少々後悔する。後で、詳しく聞かないと……。



 辺りの雰囲気は、思ったよりも早く復元された。時折ときおり、笑い声なども聞こえてくる。俺としては……いや、全ての班員としては、明るい方がいいだろう。


 俺は、班長に話を聞きにいった。さすがに聞き流しました、とは言えないため、ぼかして話すことにした。



「班長。さっきの話なんですけど……」


「ん? ああ、『行くことになった場所』っていうのかい?」


「あっ、はい」



 場所? 俺はどこかへ出向くことになったのか。



「要は、他県の罪人取締班の方々と会いに行くんだよ。プロノービスの対策としては、戦力は多い方がいいからね」


「罪人取締班ってここだけだと思ってました」


「まあ逆に、他県に無かったら対応できないからね。あと、あまり詳しく言わなかったけど、この班は『刑事局』っていう警察庁の機構きこうの細かい1要素なんだよ」


「すると、つまり?」



 その話の意図も内容もピンと来なくて、俺は先を急ぐように聞く。



「まあ簡単に言えば、ここは東京にあるから『警視庁罪人取締班』が正式名称。ここは罪人取締班をまとめる、グループのリーダーみたいなところだよ」


「つまり、罪人取締班というのはわずか8人ではなく、もっと大勢の人で構成されているわけですね。班長はその大勢の長……」


「ふふっ、まあね。俺たちは明日、親交の深い『神奈川県警察本部罪人取締班』と『埼玉県警察本部罪人取締班』に向かうよ。まあ、略して言うことも多いから、『神奈川罪人取締班』と、『埼玉罪人取締班』って言う方が多いね」


「分かりました」



 班長は明日のスケジュールを俺に渡した。正直、ここから神奈川、埼玉までどのくらいの時間がかかるか分からない。しかし、紙を見る限りだとそんなにかからないらしい。

 そういえば、メンバーは誰と行くのだろう? さすがに全員は無いだろうけど……。


 と、色々不安があった。少しの移動はあったにしろ、ここまで長いのは生まれて初めてだ。孤児院では遠足や旅行など、そういう行事など無かった。今思ったら、外に出られないあそこはまるで収容所だな。



 午後になって、班長と聖華さん、そして翔さんがお見舞いに向かった。つまり、ここには3人しかいない。こんな時に事件が来たら対応できるのか……? いや、プロノービスの襲撃は昨日起こったばかりだ。今日も連続して起こることは……


 そのとき、何度か聞いたことある着信音が鳴った。『フラグかいしゅう』という言葉を聞いたことがある。恐らくこの時に使うのだろう。


 すみれさんは、無言で受話器を取った。俺は彼女の表情の変化を見るほかなかった。

次は電話をするところから始まる予定です。


警察の仕組みって、ややこしい分、しっかりしている、としみじみ感じたこの頃でした。

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