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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
最終章 彼らが『始まりから終わりまで』を続けたいそうです
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168話 終末②

 風は素早い動きでルドラに近づく。



   まずはあなたです。

「っ……なんで、動けてるんスか……?」


 風は答えず、ルドラに触れようとした。その時──



「おやめなさい」


 どこからともなく声がした。その声からは、気品と同時に優しさも感じる。

 しかしその優しさは、少なくとも風に向けてではない。語気からしてもそれを感じ取れた。

 その声の主の方を見ると、そこには二人の女性の姿があった。



眼音まお? それにのぞみも……?」

「遅くなりました、あなた。もう大丈夫です」


 よく見ると、眼音の首元には『青いマフラー』がかかっていた。

 まさに今、優貴ゆうきが持っているのと同じような──



「ふっ、やっぱりか」

「優貴、どうしたんだ?」


 和也かずやが彼を心配する中、優貴は突然、首にかかっていた青いマフラーをほどき、それを地面へ捨てた。

 優貴は呆れたような顔で希を見る。



「──そっちが、本物か」

「ふふっ、悪いのう。子どもを騙すなど、母親失格じゃな」

   ……偽物? いや、それは本物として()()()はず──

「勘違いするな、わっぱ。確かにお主はこれを本物と思っていたようじゃが、生憎これを作ったのはお主じゃない、わっち学者じゃ。偽物と本物をそっくりに作るなどできるに決まっておるじゃろ」


 風は少し吹き荒れる。

 希は不敵な笑みを浮かべて続ける。



「良いか、本物は今眼音の首にあるこれじゃ。素人なりのミスリードはどうじゃ?」

   っ──だとしても、それで何をするつもりですか? 眼音さんの能力は、()()()()()の情報を書き換える能力……戦力にはならないと思いますが

「いえ、もうしましたよ」


 動揺する風をさらに追い詰めるように、眼音が告げる。



「あなたは、この世界を『物語』と言っていました。もしここが、漫画かアニメ、はたまた小説となっているならば、きっとあなたの世界のどこかにあるはず……そこで私は能力を使いました」

   ……まさか、いや、ありえない! だって、あなたの能力は触れたもの──

「ええ。ただ、私はこの()()の登場人物。それはもう密接に触れていますよね、この物語に」


 眼音は恐れもせず、堂々と風に近づく。



「だから私は、この小説情報を『切り取り線』まで巻き戻しました。皆さんが殺された世界線を、なかったことにするために」

   っ……できる、わけが…………

「この『青いマフラー』のおかげで、私の能力は強力になりました。私の体に負担を与えてまで、あなたに勝とうとしています。これでもまだ、登場人物に意志は無いと言えますか?」


 眼音は右手で銃の形を作り、風の胸に突きつける。

 『バン』と彼女が呟く :ว・『と、本当に発砲したような音と銃撃が空気中に響いた』∢₂_ 。



   っ──!?

「あなたには見えないでしょうけど、小説情報を書き換えました。あまり無茶な改変は危険ですが、この程度ならできるようになりました」


 風は危険だと判断したのか、彼女の元から大きく離れた。

 眼音は優貴と和也の方を見る。二人のボロボロな体を見て、少し後ろめたい表情をしながら手招きする。

 二人はゆっくりと彼女に近づく。



「覚えていますか? あなた達に遺伝子情報を与えたのを。それは──原初の能力を目覚めさせる遺伝子です」

「原初の、能力?」

「私はずっと考えていました。私たち学者が、溶かした宝石を飲んだ時、お腹の中にいる子どもに影響が本当に無かったのか」


 到着した二人は、眼音に手を握られる。

 眼音が目をつむると、二人の手は徐々に光り始めていた。



「結論から言うと、ありました。あなたたちにも、原初の能力が宿っているのです。ただ、その時はまだ胎児だったため、遺伝子の中でその能力が眠っていました。なので、今──覚ましますね」


 一際強く輝いた後、優貴と和也の頭に『使用許可証』が表れた。

 その能力名を見ると、懐かしい思い出が込み上げる。


 その能力は──『暴行罪ぼうこうざい』だった。



「今、二つの『暴行罪』を発動してください」

   ふっ、残念ですが二つ合わせても10倍。私の『暴行罪』と『傷害罪しょうがいざい』の15倍には──

「いえ、あなたのはたかが同時発動だからです。しかし、この子達は遺伝子レベルで能力を二つ持っています。5倍に跳ね上がった筋繊維に、さらに5倍の強化──」


 優貴と和也は、風の元へ歩き出す。

 その目つきは、全ての元凶に対しての恨み、怒り……『許せない』という感情が現れていた。



「すなわち、25倍の力です!」


 二人の青年は、戦闘態勢に入った。

 作者はここにいません。


 ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

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