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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
最終章 彼らが『始まりから終わりまで』を続けたいそうです
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169話? 落下と幻と

 シャイニは一歩後ずさる。

 『賭博罪とばくざい』の効果はもう切れている。再発動するにしても、賽を振る時間はもう無い。


 次の瞬間、シャイニは空中に居た。



「……え?」

   あなたのお姉様の『遺棄罪いきざい』です。即座に近づき、発動しました


 観覧車の頂上と同じような景色が見える──上下が反転していること以外は、同じだ。

 彼女の短い金色のツインテールがぶらんと下がる。



   これであなたの賽は地面に着くことはありません。何より──トップアイドルの転落、これほどまでに理にかなった殺害法はないと考えました

「……やめ、てよ。お姉ちゃんの能力で、殺さないで……」

   あなたこそ、お姉様をあなたの能力で殺したではありませんか。ああ、それとも──転落するのが単に怖いだけですか? ならば安心してください、共に落ちましょう


 シャイニの目から溢れ始める涙を無視して、風は彼女と共に落下を始めた。

 風は彼女の顔を抑え、上へと涙をこぼす瞳を覗き込む。



   ふふっ、ふははっ!

「……もしかして、あなたは──」


 シャイニは、ほんの一瞬だけ、隠されている風の表情が見えた気がした。

 その顔は、『しょうがない』と言いたげな、そんな落胆と諦観を綺麗に織り交ぜたような、そんな──



   *



 地上に居た者からすれば、いきなりシャイニが消え、約10秒後に風と共にシャイニの転落死体が現れたように見えた。

 風は衝突する直前で空中停止した。


 全員が肝を冷やす中、風はゆっくりと回転し、頭を上に向ける。



「──無理だね、止めようがない。ただでさえ応用力に長けた能力者のノアとルドラが行動できないのに……」


 サーシャはそう言って切羽詰まった顔をする。

 一方、風はゆっくりと天舞音あまねの方向を見る。

 芽衣めいは何かを察したのか、天舞音の元へ駆け寄る。



「だめっ!」

   はっ、無駄ですよ


 風はそう言うと、天舞音の元から芽衣を引き離す。



「きゃっ……!」

   さてこれで──ん?

「私に触れたから──『重婚罪じゅうこんざい』を発動しました」

   ……まあ、別に構いません。芽衣さんは、そこから『動かないで』ください


 風はそう言って天舞音の頭上で足を振り上げる。

 芽衣は、風の言葉を無視して走る。その瞬間──



「……けほっ」

   『脅迫罪きょうはくざい』の力です。以降、私の言葉に背く度にその傷を負うことになります

「っ……! 芽衣! それは幻覚だ、実際に傷がついてる訳じゃない!」


 聖華せいかは芽衣にそう訴えかける。しかし、その声が彼女に届くことはなかった。

 なぜなら風は、聖華が声を上げる直前、天舞音・芽衣とその他を隔てるように、『往来妨害罪おうらいぼうがいざい』の、音と衝撃を通さない障壁バリアを作っていた。



   『息をしない』でください

「かはっ! ……っう」

「っ……優貴ゆうき! 和也かずや! あの障壁を壊して、芽衣に伝えておくれ!」


 優貴と和也は目を合わせ、頷く。



   『天舞音に近づかないで』ください

「っ……!」

   ……なぜ、そこまでして彼女に近づくのですか? なぜそこまでして彼女を助けたいのですか?

「……だって、生きてたから! もう、死なせるのはいやなんです!」

   皮肉ですね。先程までは罪を名乗っていたのに、今や彼女を守ろうとするとは


 一方、優貴と和也は障壁を壊そうと拳を、脚をぶつけた。

 ──障壁はビクともしなかった。



「なん、で……」

「まさか──まだ届称かいしょうのプログラムを持っていたのかい……? あいつは」

   『心臓を動かさないで』ください

「っ……ごめん、ね。天舞音さん……」


 芽衣は最期に笑顔を見せ、その場に倒れ込んだ。脳死だ。

 ここに作者はいません。


 ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

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