166話? 飛ばされる
「まず僕が先制する! 《発動》!」
ノアは周囲の瓦礫を操作し始めた。
「【塊槍劣者】」
その瓦礫は槍のような形状へと変わり、一斉に名も無き風へ放たれた。
名も無き風が笑うような動作を見せると、槍は空中で分離した。
「……やっぱり、この世界の能力を使うか。僕たちの転移は狩魔の能力だね」
「今、何が起きたんだ? ノア」
「届称も見たと思うけど、あれば間違いなく僕の能力『外患罪』だ。それも、僕より操作する力が強い」
ノアは自分の手のひらに岩槍を刺し、血抜きをする。
「まずいな、しかもノワルとブランの能力もある。早く決めないと全滅だ」
「まさか──同時発動もできるの?」
当然です、私は作者なので。この世界にある能力ならいつでも何でも、何個でも使えます。例えば──
名も無き風は眉間を抑える。その瞬間──
「まさか──」
悪夢の再来です。そちらはたかが18人、こちらは……2000人です
プロ・ノービスの長、青龍の『墳墓発掘罪』だ。命潰えた罪人が軍になって襲ってくる。
「……最悪だな」
「──忠告する。みんな、耳塞いでて」
「はぁ……じゃあ、翔が前に出てよ」
菫は右足を踏み鳴らして《発動》と宣言する。その瞬間、翔とその他を分かつように、音を通さない城壁が顕現した。
翔はそれを理解し、目を手で隠す。
「《発動》! 全員能力を発動せず、30分間その場を動くな!」
翔の発言により、軍勢はその場に静止した。その代わり、自らも動けなくなっている。
菫は障壁を外す。
「ありがとう、リアム」
「っ……その代わり、僕は能力も発動できないしこの場から動けない。あとは頼むよ」
「名も無き風は──ボクたちと同じ方法で防いだ様だね」
あなたたちにできるということは、私にもできるということなので。当然そうさせて頂きました。
名も無き風はやれやれといった様子で浮かんでいる。
「《発動》! 【☆可憐賽☆】!」
シャイニは賽を振り、『五』を出す。
「コレは真似できないよっ!」
なるほど、確かに幸運は能力の範囲外です。しかし──
シャイニは名も無き風が言い終わる前に、最短距離で周りを巻き込まずに機関銃を放つ。
誰もが目を瞑るほどの光とともに衝撃が訪れる。
直撃……のはずだった。
「あれは──『不動産侵奪罪』!?」
届称さん、あなたの能力は実に便利ですね。絶対に通過できない壁を作ることだってできる。まあ、これが最初で最後のプログラムですが……。
名も無き風は──想像よりはるかに……。
さて、そろそろ終わらせましょうか。あなたたちを今から──蹂躙します。『暴行罪』、『傷害罪』を『同時発動』します。
終わりはすぐそこに──。
ここに作者はいません。
ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。