表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
最終章 彼らが『始まりから終わりまで』を続けたいそうです
165/174

165話? 風に抗う者共

「…………は?」


 ボロボロの街、それでも見慣れた景色。心は懐かしくも落ち着かない。

 ──優貴ゆうき達は、東京の中心地に居た。


 あのノアですら、目を見開いて無言で固まっていた。



「あんたたち……? どうしてここにいるんだい?」


 反射的に声の方を向く。そこには火照った聖華せいかがいた。

 彼女が不審がるのも無理はない。なぜならRDBのボスと共にここに帰ってきてるからだ。


 状況を説明するには、互いに時間が足りなすぎる。

 まず、状況を説明できるほどの冷静さはない。



   こんにちは。それとも、初めまして


 どこかから、声が聞こえる。雲よりも軽く、きんよりも重い声。

 そう、まるで『常識』から逸脱したような──その枠に縛られないような……。


 ああ、これが──()()()()()



   上からごめんなさい。礼儀知らずなもので……

「……あれが、名も無き風だよ」


 ノアが震える指でし示した方向には、実態がない──掴めないモノがあった。

 風をまとったような、空間そのものがねじ曲がっているような──。



   ふふっ、登場人物(キャスト)の皆様、お疲れ様でした。おかげさまで、私好みの小説が完成致しましたよ。

「っ……はぁっ! こんなところにいたのかよ! なんで俺たち東京に居る──」


 和也かずやの声だ。声が途切れた所をみるに、彼もアレに目を奪われているようだ。

 深呼吸が一つ聞こえる。



「……優貴、アレが最後の敵かい?」

「……はい」

   敵……? 私はあなたたちの親とも呼べる存在なのですが──まぁ、親も敵のようなものですか

「へぇ、親なら教えて欲しいんだけど──この物語は完結かい?」

   ええ。この物語は『罪人の闘争』ですので。罪人取締班とRDBが闘う理由を無くせば、もうこの世界で闘争は起きないでしょう?


 表情の見えないそれは淡々と述べている。



「完結──させに来たんだろう? この世界に」

   さあ、どうでしょう。どちらともとれますね

「僕たちが、抵抗しないとでも?」

   いえ、どちらかと言えば──()()()()()来ました。親とは子を大事にするものなので


 それは『というよりも』と続けた。



   この世界を終わらすにしても、あなたたちは消えないのです

「消えない? 世界と一緒に消えるわけじゃないんスか?」

   ええ、この世界の者は、物語を終えても生き続けるのです。しかし、それはとても苦しいものですよ? 形を変えられることもあれば、望まぬ行動を無理やり取らされることもある。それが『創作』の世界ですから


 空間の歪みが動く。それに合わせてソレも動いた。



   私はそれを許可しています。──ですが、こんな人気のない小説にそんな価値など無いのです。故に私は……この物語を封印します。価値のないものは、『本当の世界』に必要ないのですから……

「全然分からないんだけど……」


 サーシャは怯えながら引きつった笑みを浮かべる。



「……人でも、モノでもねぇな。アレは」

「だが……敵は明確だぞ、白虎びゃっこ

「──あれが元凶、か」


 あやと白虎は短くそう会話した。こうもゆっくり刀を構える。

 名も無き風の存在を知らない者にも、状況は判断できたようだ。



「……お兄様、私……怖いです」

「大丈夫っスよ。……すぐに終わるっス」


 震えるアリスの体を、ルドラは優しく包む。



「……殺します、絶対に」

「──うん、頑張ろう」


 天舞音あまねを抱える芽衣めいは殺気をあらわにする。

 それを指摘することもなく、シャイニは後ろ髪を一束に結う。



「っ……ついにだ。負けてたまるか」

「……勝つしかないか」

「──見てて、お兄ちゃん」


 しょう届称かいしょうすみれは、ソレと覚悟を決めた。



「アイツを殺せばいいのか? はっ、簡単だな」

「バードルード……さん? ……ううん、とにかく闘わないと!」


 バードルードとフローリーも、それぞれで立ち上がった。



「本当に闘うの──なんて、もう聞く意味ないかぁ……」

「ま、闘うしかないからねえ」


 サーシャと聖華も構える。



「優貴、和也……準備はいいかい?」

「……ああ!」

「おう!」


 ノアは優しく、ぎこちなく笑う。

 優貴は青いマフラーを脱ぎ捨て、目をつぶる。

 和也は軽く三回ジャンプして、足を触る。



   気絶者含め、ここにいるのは18人ですか……。はぁ、もう少し減らすべきでしたかね?


 名も無き風は──吹き荒れた。

 ※私はここにいません


 ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ