表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
158/174

158話 なくなる『大事なもの』

【戦況】


 優貴ゆうき和也かずやはノアと交戦する。

 眼音まおは身体強化の遺伝子情報(未完成)を優貴と和也に預けて撤退、サーシャはその場に残り、ノアと交戦する。

 また、しょうとバードルードはノアの所へ向かう。


 美羽みうを見張るのぞみ、さらにそれを見張る生命体を置いて、すみれ、ルドラ、シャイニ、アリスはノアの所へ向かう。

その途中、交戦中の届称かいしょうを見つけ、援護することにした。

(サミュエルは行方不明)


 天舞音あまね芽衣めいは、敵同士であるノワルとブランと共にノアの所へ向かう。


 日本に残った聖華せいかあや白虎びゃっこは、RDBの先鋭であるアダム、アタラ、フローリーに勝利した。その後、元レジスタンスのリーダーであるこうと出会い、東京を守るため奮闘する。

   **



 解析など無意味に等しかった。世界に存在しない──するはずなかったものだ。世界の常識と摂理では説明できない何かがある。

 しかし──発明はときおり偶然から産まれるものだ。



眼音まおさん、宝石のサンプル持ってきた」

「リアムさん。今手が離せないので、机の上に置いといてくれますか」

「このまま置いていいの?」

「近くにトレイがあるはずなので、空気に触れないように置いといてください」

「分かった……眼音さんも出産予定日近いんだから無理しないでね」



   *



「ずいぶんとかかってしまったわ……。さて、サンプルは──あっ、このトレイは私が以前の研究て使ってたやつ……はぁ、片付けるの忘れてた……」


 独り言の中に、自分のガサツさを嘆く言葉を吐く。



「この前の研究は薬品使ったから、サンプルに影響がなければいいけ……ど──?」


 そこにはサンプルなどなかった。あるのは、宝石のようにキラキラとした液体だ。

 まさに、あの宝石が溶けたような──



   **



「まあ、能力の欠点なんて知ったところで僕には勝てないさ」


 ノアはまた能力を発動する。いつもより振動が強い。



「【浮片屍翻ふへんしほん】、【塊槍劣者かいそうれっしゃ】」

「二つも──ノア、死ぬよ!?」

「血抜きを多くすれば問題ない。それに──死ぬのは元々本望だよ」

「っ……攻撃を──ダメだ、『致命傷を食らわない』」


 サーシャは前と同じ──ERRORが発生する予感から、咄嗟に可能性の種類を変更した。

 条件を緩くさえすれば、ERRORは発生しないだろうという考えだ。



「っ……!!」


 ノアは自分の岩槍で脇腹を思い切り刺した。そこから尋常ではない量の血が吹き出る。

 岩雪崩の欠片が、サーシャの左目を直撃する。彼女は声を出さずに悶絶した。左目に、もう光は戻らない。

 一方、優貴ゆうき和也かずやも完全に躱しきれるはずもなく、それなりの負傷を負った。


 ⊂ง*《この戦いはあまりにも無意味で醜い。画面の前にいるあなたも、そう思うでしょう?》%*



「もうやめてっ!」

「やめてよっ!」


 こんな戦場に似つかわしくない少女らの声が聞こえた。

 どこかで見たことがある──白黒の少女、ノワルとブランだ。



「なにこれ……」

「っ……」


 その二人についていた天舞音あまね芽衣めいは絶句した。そこがあまりにも凄惨だったから。


 ノアはその四人を見る。



「【押窮染血おうきゅうそち】」


 彼が意識を手放した数秒間、彼は何を意識していたのだろうか。

 次に意識を手に持った頃には、彼女らに──



「僕は何を──っ! 逃げ──」




 呆気なかった。いや、初めの感想がこれは、如何なものだろうか。

 せりあがった床と天井の隙間から、見たこともない量の血が流れる。それと同時に起きた華麗な爆発は、目を奪った。


 唯一生き残った芽衣は、自嘲気味の口ぶりで言う。



「はぁ……なんで、大事なものからなくなっちゃうのかな……」


 服を買いに行った。お互い許しあった。わがままを言い合える関係だった。

 そんな思い出が頭の中でよぎる。



「私がそんな運命なら、もうそれでいいよ。疲れちゃったんだ、感情を出すの。こんなことなら、小さい頃から感情を出す練習しとけば良かったなぁ……」


 芽衣は、さっき天舞音に押された胸元を押さえながら、もはや無表情で言う。



「芽衣?」


 彼女は名前を呼ばれた方向を向く。そこにはしょうとバードルードの姿があった。

 翔は今の現状が理解できずに芽衣に聞く。



「質問する。この血は……誰の? 向こうの戦況は?」

「私も今着いたところです。この血はノワル、ブラン、天舞音さんのです」

「……そう、なんだ」


 妙に冷静な彼女の様子に、翔はそれ以上聞くのをやめた。



「とりあえず、僕はあっちに参加する予定。それは伝えておく」

「そうですか。そちらは?」

「ひっ……えっ、と、僕、なんかが、参加、できます、か?」

「自分で判断した方がいいのでは?」


 芽衣はそう言って、優貴たちの元へ向かった。


 ∢วง《のんびりしすぎた。急展開にしないと間に合わない……? でも、どう動かせばいい……?》₩¤₂



   *



「なんで……なんで、ノワルとブランを殺した!?」

「……僕も、意識が──まさか、僕の『判断力の増加』の利点が欠点に変わった……のか?」


 ノアは、ノワルとブランには『常に能力を発動しておくように』と言った。ノアに二人が近寄ったことで、『判断力の低下』が加速したのだ。


 ノアは改めて、戻れないことを実感した。

 ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ