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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
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157話 自傷という名の延命

【戦況】


 優貴ゆうき和也かずやはノアと交戦する。

 眼音まおは身体強化の遺伝子情報(未完成)を優貴と和也に預けて撤退、サーシャはその場に残り、ノアと交戦する。

 また、しょうとバードルードはノアの所へ向かう。


 美羽みうを見張るのぞみ、さらにそれを見張る生命体を置いて、すみれ、ルドラ、シャイニ、アリスはノアの所へ向かう。

その途中、交戦中の届称かいしょうを見つけ、援護することにした。

(サミュエルは行方不明)


 天舞音あまね芽衣めいは、敵同士であるノワルとブランと共にノアの所へ向かう。


 日本に残った聖華せいかあや白虎びゃっこは、RDBの先鋭であるアダム、アタラ、フローリーに勝利した。その後、元レジスタンスのリーダーであるこうと出会い、東京を守るため奮闘する。

   **



 僕は──この物語を停滞させる。

 名も無き風は恐らく、この無法騒動という時代での正義譚を期待してるのだろう。



「この宝石を、使おう」


 僕はその場の全員に提案した。

 ()()は確かに、この宝石を使えば無法騒動をきっと止められると言った──いや、もはや確定なのだろう。

 兎にも角にもこの無法騒動を、物語が始まる前に止めることができたら──その物語が狂うのではないだろうか。


 当然、批判の声も上がった。



「それは早計ではないか? まだそれが何かを分析していない」

「というよりさ、そもそもそれをどう使うの?」

「なら、分析してからでいい。どう使うかを検討してからでいい。とりあえず無法騒動を止めなければ、僕たちに未来はないでしょ?」


 無理に押し切る形で、僕たちはそれの解析を始めた。



   **



 ノアは攻撃の手を緩めることは無かった。



「っ……『僕たちに当たらない』!」

「へぇ」


 上から降った小石が岩槍のウィークポイントに当たり、それは崩れ去った。

 優貴ゆうきはサーシャに問いかける。



「ノアの能力の詳細を知ってたりしないか?」

「……残念ながら。多分あの人は、能力を授かった段階で僕たちと敵対するつもりだったんだろうね。だから詳しく教えなかった、違うかな?」

「当然。僕の子どもが正義に行くなら、僕は徹底的な悪になる。僕が負けない限り、君たちが負けない限り、物語は続くのだから。これを『ヘイワ』と呼ばずしてなんと呼ぶのさ」

「さあね。ただ、君の言うヘイワと一般的な平和が同音異義語のように聞こえてならないよ」


 ノアは皮肉的な笑みをこぼす。



「【塊槍劣者かいそうれっしゃ】」

「────?」


 優貴と和也は易々と回避する。サーシャですら回避できるほど──



「威力とか数とか……優しくなったな」

「──優貴くん、和也かずやくん。これは予想だけど、ノアの能力には回数と範囲の制限があると思う」

「回数と範囲……」


 サーシャはそう言って着地する。



「特に回数の制限はほぼ確定だね。ボクですら回避できるほどだ、とても皆殺しにしようとした人の攻撃じゃない」

「でも、あいつさっきめっちゃ攻撃してたぞ? そんなようには……」

「会ったときと今のあいつの姿を比べてみて。何でもいい、どこか異変はない?」

「異変…………いや……」

「何!? 早く言って!」

「……たまに壁や床に手をついてるのって、能力発動のためだから関係ないよな? あいつの能力は触れたものを操るものだろ?」


 サーシャは目を見開く。



「いや、それだ! ノアは『周囲の固体を操る』能力者、触れることは条件じゃないんだ! だから……回数じゃなくて、能力の欠点がそれなんだ!」

「でも、単純に体力の低下じゃなさそうだぞ?」

「【床花香訴しょうかこうそ】」


 地面に花が咲く。やはり威力は弱まっているようだ。



「……ん? ねぇ、誰かノアを殴った?」

「いや、攻撃一つも届かない! 近づくのですらやっとだぞ?」

「じゃあ、あの血は誰の……?」


 優貴はサーシャに言われて初めて、ノアの周りに落ちている血に気がついた。

 和也は華麗に攻撃を避けながら答える。



「あれはさっき優貴が攻撃しようとして──」

「いや、あの攻撃はノアが移動する前にやった。その時と今であいつの立ち位置は違うはずだ……ということは、あいつは自分の能力で自傷しているのか……!?」

「そうなるよね──というより、自傷しなければいけないんじゃないかな。ある程度の欠点なら無視できるけど、それができないってことは……自傷しないと死ぬ欠点ってこと?」

「さっきからずっと喋ってるけど──なかなか核心に迫ること話してるね」


 ノアは余裕そうに話す。血まみれの手のひらで拍手して、こう言った──。



「僕の欠点は『血管内の血液の増加』だ。こうして定期的に()()()しないと破裂してしまうんだよ」


 ノアは穴だらけになった手のひらを見せる。見てるこっちが痛く感じるほど、凄惨な手のひらだった。



「まあ、教えても支障がないからね。どうせ僕が勝つんだ」

「本当に?」

「当然だよ。悪は勝つのは珍しくない──」

「本当に、支障ないの?」


 サーシャは少し挑発するような顔で語りかける。



「それでも確かに、さっきは威力が弱まったよ。もしかして、そんな自傷だけじゃ間に合わないんじゃないの? それ以上能力を発動するとマズいんじゃないの?」

「……はぁ、だから君は苦手なんだよ」


 態度じゃ誤魔化せないと思ったのか、ノアはため息をついて認めた。



「難しいんだよ、この能力。失血しないように、血管が破裂しないように調整しないといけないからね」


 ノアの手のひらから血は止まらない。

 ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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