表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
156/174

156話 悪になる対価

【戦況】


 優貴ゆうき和也かずやはノアと交戦する。

 また、しょうとバードルード、サーシャと眼音まおは、それぞれノアの所へ向かう。


 美羽みうを見張るのぞみ、さらにそれを見張る生命体を置いて、すみれ、ルドラ、シャイニ、アリスはノアの所へ向かう。

その途中、交戦中の届称かいしょうを見つけ、援護することにした。

(サミュエルは行方不明)


 天舞音あまね芽衣めいは、敵同士であるノワルとブランと共にノアの所へ向かう。


 日本に残った聖華せいかあや白虎びゃっこは、RDBの先鋭であるアダム、アタラ、フローリーに勝利した。その後、元レジスタンスのリーダーであるこうと出会い、東京を守るため奮闘する。

   **


 当然、混乱したよ。だって、簡単に言えば無法騒動を──今の世界を救う代わりに、未来の世界を支配させろと言ってるようなものだ。

 そんなの、受け入れ難いに決まってる。


 ……ごめん、嘘をついたね。あくまでそれは建前だ。ああいや、薄っぺらく聞こえるだろうけど、世界も大事なんだ。

 ただ──本音は、自分の子ども達を巻き込みたくないんだ。傷つけも苦しみもさせたくない。平和を過ごして欲しい。


 だから僕は、決心した。僕は──


   **



「はは、無力を実感して絶望してよ! 罪人取締班!」

「ぐっ……!」


 和也かずや優貴ゆうきは、ノアの圧倒的な強さに押されていた。

 前後上下左右から、当たれば致命傷足りうる攻撃が続く。

 避けるのもようやくなこの状況で、攻めに転じることなどできるはずもなかった。



「【塊槍劣者かいそうれっしゃ】」


 床の振動を一瞬感じ、二人はすぐに斜め上へ跳ぶ。

 下から伸びる岩槍を、破壊及びかわしていく。



「【斬剣芯剛きけんしんごう】」


 一瞬の油断が命取りだ。跳んだ先に生えた剣に構える。



伏罪の進行コンフロント・ラッシュ】!」

「【五蕾ごらい災雨さいう】!」


 二人はその岩剣の破壊に成功した。着地したのも束の間、今まで破壊してきた瓦礫がれきが浮かび上がる。



「【浮片屍翻ふへんしほん】」


 まるで無邪気な妖精のように、瓦礫はふわふわと舞い上がっていく。

 そして次の瞬間、今度は敵意をむき出しにしたひょうのように、二人めがけて降り注いだ。

 迎撃が無駄だと察し、横へ逃げる。

 さらにそれは巣を刺激された蜂のように、二人を追いかける。



「おい、キリねぇぞ! どうすんだよ優貴!?」

「くっ……!」

「《発動》。()()()()()()()()()()()


 直後、欠片の大群は効力を失ってその場に落ちた。

 声の元を見ると、そこには二人がいた。



「……サーシャ、眼音まお

「よくもまあ……自分の子どもに容赦ないね。もう辞めない? こんなのさ」

「サーシャ、君は僕の目的は知ってるはずだ。その上で、この戦いを辞められる戦いだと?」

「ふふっ、さっきまで戦いを避けようとした人とは思えないね。それに、いくら避けられないと言っても殺し合わなくてもいいと思うけど? ノア、君が降参すればいい」


 サーシャの言葉に、彼は口をつぐむ。



「君はボクよりも頭がいい。だから本当はこの選択肢もとっくに考えてたんでしょ?」

「っ……」

「それを選ばないのはなんで? 誰も死なずに、()()に対抗できるはずなのに」

「──なんで、言っちゃうかなぁ……」


 ノアはそう呟く。残念そうに、どこか悔しそうに。



「……僕は、悪だ。それは間違えようのない事実だ。()()を呼び起こすきっかけが物語の終結なら──この世界が平和になることなら、悪の想像しうる限り最悪の結末を迎えないといけない」

「それが──正義との戦いでの戦死なの……? なんかさ、違くない?」

「──かもね。だけど、もう戻れない。僕は、罪を償うべきだ」


 RDBの活動で救われた命も多い。しかし、それ以上に奪われた命が多い。

 ノアは元々、人を犠牲にできない性格だった。誰かが傷つくなら自分が犠牲になると、そんな自己犠牲が形作ったような人だった。


 だから彼は、罪を償うために自らの命を捧げようとしているのだ。

 ……その目的を、名も無き風を呼び出すという目的で隠して。



「そして……眼音、さっきから喋ってないけど?」

「あ…………ノアさんは──いえ、ごめんなさい。気の利いた言葉をかけようとしたのですが……ごめんなさい」

「悪に同情は必要ない。必要あるのはこの戦いの終着だけだ、そうだろう?」


 サーシャと眼音は床の振動を感じた。



「【床花香訴しょうかこうそ】」

「っ!」

()()()()()()()()!」


 地面から、花が咲くように棘が四方八方へ伸びる。

 サーシャは足が棘の間に挟まり、伸びる反動で少し先に吹き飛んだ。

 眼音は自身の遺伝子情報を書き換え、棘にも耐えられる強靭な肌を構成した。



「……っ!!」

「眼音! キミ、それ使っても大丈夫なの!?」

「……やっぱり、少しだけ厳しいですね。頭を使いますし、何より……っ、体力が……」

「やっぱり、無理しないで……」

「【押窮染血おうきゅうそち】」


 眼音を和也が、サーシャを優貴が抱えて、せり上る床から脱出した。



「おっと……助けられたよ。ありがとう」

「……ああ」

「ごめんなさい……和也」

「無理すんなよ、元々戦える能力じゃねえだろ? それでもここに来たのは……何か理由があるんだろ?」

「……鋭く、なりましたね。その通りです、お二人とも、手をお出しください」


 着地後、差し出された和也と優貴の手に、眼音は手をかざす。

 ポワッと光が浮かび上がる。



「まだ構成前なので発動はされませんが……体を強化する遺伝子情報です。構成できたら、私が後で、遠隔で発動しますね」

「ボクは君たちを援護できる。眼音を退かせて、三人でノアに立ち向かうよ!」


 優貴と和也は頷く。

 ご愛読ありがとうございます。次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ