152話 レジスタンスの意志
【戦況】
①
優貴と和也、翔とバードルード、サーシャと眼音は、それぞれノアの所へ向かう。
②
美羽を見張る希、さらにそれを見張る生命体を置いて、菫、ルドラ、シャイニ、アリスはノアの所へ向かう。(サミュエルは行方不明)
③
天舞音と芽衣は、敵同士であるノワルとブランと共にノアの所へ向かう。
④
日本に残った聖華、彩、白虎は、RDBの先鋭であるアダム、アタラ、フローリーと対峙している。
フローリーは落ち着きを取り戻した後、独白を始めた。
「私の能力は『過失傷害罪』です。発動条件はチョーカーを身につけること。そして内容は、自分も予期してない自身の行動の力を十五倍にする能力です」
「十五倍……白虎の『傷害罪』以上だな」
彩は淡々と述べた。確かに、白虎の十倍、和也の五倍と比べると破格の倍率だ。
「私は……あのお二方に操られ、無関係の方々を手にかけてしまいました。例え私に意識が無くとも、私は大悪人に違いありません。なので……お願いします」
その懇願の意味は、彼女の首をさらけ出す動作で理解できた。
その上で、聖華はため息をこぼす。
「はあ……あんた、それが一番の解決策って勘違いしてるようだね」
「えっ──?」
「あんたには生きてもらうよ。生きて、一生殺した人に謝り続けるんだ。死んで楽になんてさせない、これからも背負ってもらうよ」
「それが……一番重い、罰ですか? ──ならば、私はそれを受けます」
フローリーはそう言って立ち上がる。その顔は、病んでいるようにも、決意を固めたようにも見えた。
その時、後ろに人影が見えた。歩き方からしても、かなり武道に精通してる。それにしては敵意はないように思えた。
「あんたは──広!?」
「ああ、俺だ。ここは……なるほど、もう終わったのか」
「あいつは……埼玉の班長か」
彼は刀を携えて、服のあちこちには返り血のようなものがついていた。
「お前は埼玉を守らなくていいのか?」
「班員が優秀でな、被害の大きい東京に援軍として来た」
「あんた、もうRDBのことは話せるのかい? だったら、少し話してくれないかい? 元レジスタンスのリーダーとして、さ」
彼は始め驚いた顔をしたが、すぐに了承した。
「時間がないから手短に。レジスタンスは数年前、RDBの内部で生まれた。構成員のほとんどが、RDBの目的には賛同するものの手段に納得できない者たちだ。俺もその一人だった。俺はリーダーを買って出て、その手段が間違ってることを伝えるために、何度か敵対組織に秘密裏で協力していた。そうすれば自分たちで手段が誤っていると気づく、そう思ったからだ」
「なるほど、それがレジスタンスの起源なんだねえ」
彼は頷く。そして話を続けた。
「ある時、敵対組織の中にさらにRDBのスパイがいたらしく、協力の段階でレジスタンスの存在が露呈してしまった。そこで俺は他の者を護るために、レジスタンスは俺一人だと告げてそこを去った。その後のことは知らないな」
「班長から聞いた話だけど、あんたと頼渡は何か因縁深かったらしいけど、それは?」
「あいつとは何でもない、ただの同期だ。あいつとは考えが合わない時が何度もあったから、その度にぶつかっていたな……まあ、それは置いておこう」
彼はそう言って、視線をずらした。その先には、戦火が太陽のように明るく燃え広がっていた。
「俺たちには、まだやることがある……そうだな?」
「そうだねえ……彩、まだ動けるかい?」
「当然だ」
彩は震えを隠して言う。
「おい、俺の心配は無しかあ?」
「あんたは心配なんざ欲しがるタチじゃないだろ。そもそも、あんたはなんだかんだ言って大丈夫だろ」
「はっ、冗談だ」
冷たい笑いと共に、白虎は塀を乗り越え、その勢いのまま戦火の方へ跳んだ。
聖華、彩、広も彼に続いて戦火へと向かう。
* * * *
「──これが、最後のプログラムだ」
届称は悲しく言うと、今の自分の状況を理解する。
RDBの人員は想像を絶するものだった。届称の思った十倍は居た。
目の前の軍勢を始末しても、同じ量の
「もっと、プログラムを練れば良かったか……失態だ」
届称はそう言って、最後の箱状の空間を投げようとした──その時。
「それ、とっといて欲しいっス!」
どこかから、遠く聞き馴染みのある声がした。
次の瞬間、黒い触手が、青い血管を脈打たせて罪人を一掃した。
数多の断末魔と共に、背後から足音がいくつか聞こえた。
「まさか届称がここにいるなんて……ケガはなさそうっスね」
「君はまさか……ルドラ、か?」
「はい、ルドラっス。彼女のおかげで、帰って来れたっスよ」
ルドラの健康そうな笑顔を見て、届称は思わず涙ぐんだ。
「そして君はまさか……」
「──アリス、声を聞かせて」
「はい……えっ、と──アリス、です。ごめんなさい、あなたがどなたか分からないです……」
「はは、無理も、ないか。私は届称だ。和也の、父だね」
届称がそう言った後、アリスは驚いたように息を飲んだ。目元が隠れているのに、目を見開いたように見える。
「届称さん!? ごめんなさい、気づかなくて」
「いやいや、大丈夫だ」
「敵地で喋る余裕あるの……!」
罪人の攻撃を、菫が間一髪で防ぐ。その攻撃は届称に向いていた。
「す、すまない……それにしても、君のその能力……?」
「後回し。とりあえず今は、ここを処理しないと」
「わ、私も頑張るから……!」
シャイニもその戦いに参加する意志を見せた。
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
そして、ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。