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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
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152話 レジスタンスの意志

【戦況】


 優貴ゆうき和也かずやしょうとバードルード、サーシャと眼音まおは、それぞれノアの所へ向かう。


 美羽みうを見張るのぞみ、さらにそれを見張る生命体を置いて、すみれ、ルドラ、シャイニ、アリスはノアの所へ向かう。(サミュエルは行方不明)


 天舞音あまね芽衣めいは、敵同士であるノワルとブランと共にノアの所へ向かう。


 日本に残った聖華せいかあや白虎びゃっこは、RDBの先鋭であるアダム、アタラ、フローリーと対峙している。

 フローリーは落ち着きを取り戻した後、独白を始めた。



「私の能力は『過失傷害罪かしつしょうがいざい』です。発動条件はチョーカーを身につけること。そして内容は、自分も予期してない自身の行動の力を十五倍にする能力です」

「十五倍……白虎びゃっこの『傷害罪しょうがいざい』以上だな」


 あやは淡々と述べた。確かに、白虎の十倍、和也かずやの五倍と比べると破格の倍率だ。



「私は……あのお二方に操られ、無関係の方々を手にかけてしまいました。例え私に意識が無くとも、私は大悪人に違いありません。なので……お願いします」


 その懇願の意味は、彼女の首をさらけ出す動作で理解できた。

 その上で、聖華せいかはため息をこぼす。



「はあ……あんた、それが一番の解決策って勘違いしてるようだね」

「えっ──?」

「あんたには生きてもらうよ。生きて、一生殺した人に謝り続けるんだ。死んで楽になんてさせない、これからも背負ってもらうよ」

「それが……一番重い、罰ですか? ──ならば、私はそれを受けます」


 フローリーはそう言って立ち上がる。その顔は、病んでいるようにも、決意を固めたようにも見えた。

 その時、後ろに人影が見えた。歩き方からしても、かなり武道に精通してる。それにしては敵意はないように思えた。



「あんたは──こう!?」

「ああ、俺だ。ここは……なるほど、もう終わったのか」

「あいつは……埼玉の班長か」


 彼は刀を携えて、服のあちこちには返り血のようなものがついていた。



「お前は埼玉を守らなくていいのか?」

「班員が優秀でな、被害の大きい東京に援軍として来た」

「あんた、もうRDBのことは話せるのかい? だったら、少し話してくれないかい? ()レジスタンスのリーダーとして、さ」


 彼は始め驚いた顔をしたが、すぐに了承した。




「時間がないから手短に。レジスタンスは数年前、RDBの内部で生まれた。構成員のほとんどが、RDBの目的には賛同するものの手段に納得できない者たちだ。俺もその一人だった。俺はリーダーを買って出て、その手段が間違ってることを伝えるために、何度か敵対組織に秘密裏で協力していた。そうすれば自分たちで手段が誤っていると気づく、そう思ったからだ」

「なるほど、それがレジスタンスの起源なんだねえ」


 彼は頷く。そして話を続けた。



「ある時、敵対組織の中にさらにRDBのスパイがいたらしく、協力の段階でレジスタンスの存在が露呈してしまった。そこで俺は他の者を護るために、レジスタンスは俺一人だと告げてそこを去った。その後のことは知らないな」

「班長から聞いた話だけど、あんたと頼渡らいとは何か因縁深かったらしいけど、それは?」

「あいつとは何でもない、ただの同期だ。あいつとは考えが合わない時が何度もあったから、その度にぶつかっていたな……まあ、それは置いておこう」


 彼はそう言って、視線をずらした。その先には、戦火が太陽のように明るく燃え広がっていた。



「俺たちには、まだやることがある……そうだな?」

「そうだねえ……彩、まだ動けるかい?」

「当然だ」


 彩は震えを隠して言う。



「おい、俺の心配は無しかあ?」

「あんたは心配なんざ欲しがるタチじゃないだろ。そもそも、あんたはなんだかんだ言って大丈夫だろ」

「はっ、冗談だ」


 冷たい笑いと共に、白虎は塀を乗り越え、その勢いのまま戦火の方へ跳んだ。

 聖華、彩、広も彼に続いて戦火へと向かう。




 * * * *




「──これが、最後のプログラムだ」


 届称かいしょうは悲しく言うと、今の自分の状況を理解する。

 RDBの人員は想像を絶するものだった。届称の思った十倍は居た。

 目の前の軍勢を始末しても、同じ量の



「もっと、プログラムを練れば良かったか……失態だ」


 届称はそう言って、最後の箱状の空間を投げようとした──その時。



「それ、とっといて欲しいっス!」


 どこかから、遠く聞き馴染みのある声がした。

 次の瞬間、黒い触手が、青い血管を脈打たせて罪人を一掃した。

 数多の断末魔と共に、背後から足音がいくつか聞こえた。


「まさか届称がここにいるなんて……ケガはなさそうっスね」

「君はまさか……ルドラ、か?」

「はい、ルドラっス。彼女のおかげで、帰って来れたっスよ」


 ルドラの健康そうな笑顔を見て、届称は思わず涙ぐんだ。



「そして君はまさか……」

「──アリス、声を聞かせて」

「はい……えっ、と──アリス、です。ごめんなさい、あなたがどなたか分からないです……」

「はは、無理も、ないか。私は届称ヂィエチェンだ。和也の、父だね」


 届称がそう言った後、アリスは驚いたように息を飲んだ。目元が隠れているのに、目を見開いたように見える。



「届称さん!? ごめんなさい、気づかなくて」

「いやいや、大丈夫だ」

「敵地で喋る余裕あるの……!」


 罪人の攻撃を、すみれが間一髪で防ぐ。その攻撃は届称に向いていた。



「す、すまない……それにしても、君のその能力……?」

「後回し。とりあえず今は、ここを処理しないと」

「わ、私も頑張るから……!」


 シャイニもその戦いに参加する意志を見せた。

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


 そして、ご愛読ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

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