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「sin・sense」 〜罪人共による異能力の闘争〜  作者: むかぜまる
10章 彼らが真実を知ってから全てを終わらせる終焉譚
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150話 戦場を彩る華

【戦況】


 優貴ゆうき和也かずやしょうとバードルード、サーシャと眼音まおは、それぞれノアの所へ向かう。


 美羽みうを見張るのぞみ、さらにそれを見張る生命体を置いて、すみれ、ルドラ、シャイニ、アリスはノアの所へ向かう。(サミュエルは行方不明)


 天舞音あまね芽衣めいは、敵同士であるノワルとブランと共にノアの所へ向かう。


 日本に残った聖華せいかあや白虎びゃっこは、RDBの先鋭であるアダム、アタラ、フローリーと対峙している。

 あやは、アタラが元いた場所に発砲する。しかし、全く手応えがない。



「どこ見て撃ってんだ? おばさん!」

「ちっ──!」


 アタラが放つ銃弾を間一髪で避ける。



「っ……【愚者の宴(マッド・フェス)】!」


 彩は周囲に分身を生み出す。それと同時に、隊列を組むように彼女の後ろに分身を並べた。

 いつでも本体を後ろに移動できるように。


 アタラは透明のまま、持っていた武器に弾を装填する。



「そういやおばさん、名前なんだっけ?」

「……なぜ言わねばならない?」

「そんな警戒すんなよ、一ついいこと教えてやるだけだ」


 アタラはそう言うと、彩の怪訝な表情を見たのか、笑いをこらえながら話す。



「いやなに、あたしはRDBに来る前、強盗をやってたんだ。そうじゃなきゃ生きられないからな」

「強……盗?」

「そんな時、あんたとそっくりな子が居た家族を襲ったことがある。そっからだいぶ経ったから、ちょうど──あんたと同じくらいになったかな。確かそこの家族の名字は──増田ますだ

「……っ!?」


 彩の表情が一変する。それは怒りとも絶望ともとれる表情だ。

 アタラの笑いが加速する。



「どうやら当たりみたいだな。あたしもあんたより小さいときだったから、記憶が曖昧だったけどな」

「──なんで、今話した……?」

「あんたに勝ち目はねえ。だから、せめて教えてやったのさ。そしたらあんたは、あたしを恨んだまま死ぬことになる。こんな素敵なことないだろ?」


 『冷静になれ』という心の声は、怒りとともにかき消した。



「お前は……なんで、なんで……っ!」

「理由なら話したろ? あたしも生きるためなんだ」

「そんな理由で──!」

「いいか、この世は自分優先だ。どんなに『他人を優先する』と豪語するシスターも、いざそういう状況に直面すりゃ、『ごめんなさい』と泣き詫びながら人を殺す。きれいごとを剥ぎゃ、結局そういうもんなんだよ」

「じゃあなんで──なんで、私は生かした……?」


 彩の言葉が悲しみに染まっていく。



「そんなもん簡単だ、単純に時間がなかったんだよ。あん時あんたは、ただうろちょろと逃げてた。追いかけて殺す時間が惜しかった」

「っ……!」

「あははっ、まさか、自分も一緒に死にたかったのか? 安心しろ。遅延証明書でも持って天国の家族に会いに行きな──いや、あんたは地獄か」


 アタラは周囲の分身が持っていた武器を全て回収した。



「……もう、用意できる武器はないんだろ? この武器たちはやけに質がいい。最後の切り札だったんじゃねえのか?」


 彩は何も言わなかった。それは万策尽きたと思わせる作戦だ。

 今すぐにでも作戦を決行できる──しかし、彩は怒りで我を忘れていた。



「……お前にとって、家族とはなんだ」

「あたしを泣かせた張本人」

「私にとっては──愛そのものだ。それをお前に奪われた……。許せるはず、ないだろ?」


 彩の声が震える。



「だから──!!」

「彩、落ち着きな……! 怒りで我を見失うんじゃないよ!」

「っ……!」


 それは、遠くでフローリーと対峙していた聖華せいかの声だ。

 いつも、そうだ。私が任務で失敗した時も、怒りで冷静さを欠いてる時も──いつもあいつの一言で全てが収まる。


 そんな奴なんだ。だから私は──敗戦の後、あいつの幸せを保証すると誓ったんだ。

 陰ながら、目立たぬように。



「気持ち悪ぃな、もういい。じゃあな」


 アタラは彩に発砲する。しかし、それは既に分身だった。



「っ! 本体はどこだ……?」


 アタラは辺りを見渡す。しかし、そこに分身は一人も居なかった。



   *



 彩は──はるか遠くのビルの上だ。



(ある程度、あいつの能力の効果範囲は予測できた。あいつの言う通り、私には武器の在庫はもう無い。だから──この銃で終わらせる)


 彩の持つ銃は、聖華と共闘する直前にアダムの脚を貫いたスナイパーライフルだ。

 その時に銃を持っていた分身を、今までずっとビルの上に残しておいた。


 しかし、当然ながら姿の見えないアタラを撃ち抜くことはできない。なので彩は、ある武器をアタラに回収させていた。



(銃に似せた爆弾。威力は低いが──それでも構わない。むしろ好都合だ)


 彩は爆弾のスイッチを押す。ここからでもギリギリ信号は届く。

 爆発の光がスコープにかすかに映る。そこから今アタラの居る位置、そして風や重力の影響を瞬時に計算した。


 手はかじかみ、怒りでまだ震えている。そんな時、聖華の顔が浮かぶ。

 全く震えない手で狙いを一点に定め、固定する。



「さらばだ、かたき


 彩はトリガーを引く。



   *



 聖華は焦った声色のアタラの方を見ていた。その時、突如として爆発が起きた。



「がっ……!?」


 アタラの声が聞こえる。何が起きたか分からないといった声だ。

 その直後、バシュという音が聞こえる。



「なん、で……?」


 能力が解除され、彼女の姿があらわになる。

 彼女は倒れ、心臓の位置から血を流していた。

 ご愛読ありがとうございます。次回もよろしくお願い致します。

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